カリフォルニアのピノ・ノワール – 3 – フードフレンドリーなワインとは?
ピノ・ノワールはオールマイティ

(2015.04.06)

カベルネに較べるとタンニンなどは柔らかで食事に合わせやすいピノ・ノワール。肉類はもちろん魚介類ともよい相性だし、カレーなどエスニック料理とも違和感はない。そんなピノ・ノワールとおいしいお皿の組み合わせを街場のレストランからピック・アップ。さらにレストラン顔負けの料理が愉しめるワイナリーも併せてご紹介。
サン・フランシスコのビストロのワイン・リストはピノ・ノワールのオン・パレード
パテやシャルキュトリが人気のサン・フランシスコのビストロ、カフェ・クロードのワイン・リストはぶどう品種別に纏められていて、赤に泡、白併せてトータル63銘柄という構成。そのなかにはハンゼルのセベラ・シャルドネ、コパンのアンダーソン・ヴァレー・ピノ・ノワールなど、コンパクトながら通好みのアイテムも散見するが、ピノ・ノワールは9アイテムと7分の1を占め、カベルネ・ソーヴィニヨンの3種、シャルドネ6種類と較べてもダントツの扱い。これはピノ・ノワールが料理に合わせやすいということの表れ。

ピノ・ノワールの故郷ブルゴーニュでピノはオールラウンダー。コッコ・オ・ヴァンやブフ・ブルギニヨンに使うワインはピノ・ノワールだし、ジャンボン・ペルシエなどの豚肉を用いたシャルキュトリは最も日常的なピノ・ノワールのアテ。カリフォルニアでも事情は同じで、アルコールのパーセンテージも13%から14%台と高すぎず、カベルネのようにワインだけが主張するようなキライもなく、フード・フレンドリーなワインとしてピノ人気は高い。

ともかく使い勝手がよく、守備範囲が広いピノ・ノワール。ワイン初心者にも受け入れられやすい赤で、口当たりの優しさとラズベリーなどベリー系の甘酸っぱい香りも魅力的。だからレストランで合わせるワインに迷ったらピノ・ノワールのバイ ザ グラスを選べば間違いなし。産地やヴィンテージの異なりで、同じぶどう品種でありながら違う表情を見せてくれるピノ・ノワール、その味わいの世界を料理と一緒に愉しもう。

ぶどう品種毎に分けられたワイン・リスト。ピノ・ノワールが圧倒的
ぶどう品種毎に分けられたワイン・リスト。ピノ・ノワールが圧倒的
田舎風パテにピノ・ノワールは鉄板
田舎風パテにピノ・ノワールは鉄板
フレンチだけじゃない、ピノ・ノワールはイタリアンにエスニックだってカヴァー
セントラル・コースト最南端、サンタ・イネスの町で賑わっているイタリアンがトラットリア・グラッポロ。バローロやブルネッロもオン・リストされているが多いのはピノ・ノワール。ソノマ産もあるもののお隣サンタ・リタ・ヒルズやサンタ・マリア・ヴァレーのいわば地元産ピノだけで20種以上が揃っている。

ピッツアやパスタはもちろん、詰め物をしたイカ料理カラマリ・アッラ・ポジターノのようなお皿にもピノ・ノワールは打ってつけ。ナイフを入れれば、なかからはトロリとしたモッツアレラに生ハム、ニンニク・パセリなどがおいしくお目見え、ピノ・ノワールに合わないわけがない。どれも単品でピノとバッチリの食材だから、完成した料理となってからの相乗効果も大。

ピノ・ノワールはエスニックにもいける。ソノマのベンジガーが紹介してくれたインド料理店(正確にはインド・ネパール料理)のイエティ・レストランで、ピノ・ノワールとカレーの幸福な体験をした。インド料理店でありながら、土地柄を反映してかワイン・リストにはピノ・ノワールが4種オン・リストされているが、それらは見事に全てソノマ産。

出てきたチキン・マサラは辛さというよりしっかりとうまみが感じられるお皿、なので味わい十分なピノとはよい相性で、フルーティさとすっきりした酸味、柔らかな甘さがカレー・ソースのスパイシーでありながら複雑なうまみと違和感がない。加えてこの店ではカレーも然ることながら、とても野菜野菜したインディカ米のおいしさも大きな発見だった。

魚介系の多いイタリアンだってピノ・ノワールがあれば問題なし
魚介系の多いイタリアンだってピノ・ノワールがあれば問題なし
ソノマにあるカレー店のチキン・マサラにピノ・ノワールを合わせて
ソノマにあるカレー店のチキン・マサラにピノ・ノワールを合わせて
ハーン・ファミリー・ワインズ Hahn Family Wines Santa Lucia Highlands
サンタ・ルシア・ハイランズの主的存在のワイナリーは、レストラン顔負けの料理を供する

1980年、スイス生まれのニッキー・ハーンにより設立されたワイナリーは、ピゾーニ・ヴィンヤードなど名だたる畑で有名なサンタ・ルシア・ハイランズに260ヘクタールを所有し、この産地のAVA昇格(1991年)の立役者でもある。

セントラル・コーストの中央に連なるモントレーAVA、そのまた真ん中に尺取虫のようにしてあるサンタ・ルシア・ハイランズ。午前中は霧に覆われ、午後からは太平洋の冷たい海風が吹き渡る地で、その冷涼さゆえピノ・ノワールとシャルドネの産地として評価を確立してきた。ハーンが所有する畑は60メートルから360メートルの標高に広がっているが、ピノ・ノワールは半分以上の140ヘクタールに植えられている。

ワイナリーでは3つのラインのピノ・ノワールを生んでいて、最も手軽なシリーズがハーン。ピノ・ノワールはモントレー、なかでもアロヨ・セコAVAのぶどうを中心につくられていて、ピノ・ノワール以外にも赤、白で6種類がある。サンタ・ルシア・ハイランズの複数の自社畑産ピノ・ノワールのブレンドからできあがるのがハーンSLH。ルシエンヌはハーンがサンタ・ルシア・ハイランズに所有する区画から3つの単一畑を選び、瓶詰めしているシリーズで、北からローン・オーク、スミス、ドクターズの3種。

ハーンでは専属のシェフを抱えていて、各種イヴェントの際などに腕を振るうが、今回はピノ・ノワールとのフード・ペアリングということで、いくつかお皿を仕上げてもらった。野生の猪やショート・リブ・ステーキにピノがベスト・マッチングをみせるのは当然だが、メカジキをポワレし、サフラン・リゾットとアサリ、ムール貝のうまみたっぷりソースが添えられた一皿にも具合よく寄り添ったのには、おいしい満足感を覚えた。

ワイナリーのテラスからは遠くガビラン山地が臨める
ワイナリーのテラスからは遠くガビラン山地が臨める
右の3本はハーン御自慢のルシエンヌ・シリーズの単一畑のもの
右の3本はハーン御自慢のルシエンヌ・シリーズの単一畑のもの
メカジキのサフラン・ライス添えにもピノ・ノワールはぴったり
メカジキのサフラン・ライス添えにもピノ・ノワールはぴったり
もちろんステーキとは抜群の相性
もちろんステーキとは抜群の相性