TOTOSK KITCHEN Vol. 6 タイム サルシッチャのスープと
なすのとろーりソース

(2012.09.10)
撮影/黒澤 義教
みなさん、こんにちは。9月になったというのにまだ暑い日が続きますね。
エアコン漬けになって、朝起きると喉が乾燥していがいがするという方も多いのではないでしょうか?
そんな時は是非、濃く淹れたタイムティーでうがいをしてみてください。
喉の痛みを和らげてくれると思いますよ。ということで、今回のハーブはタイム。
秋が待ち遠しいけれどまだ続く暑い日々に、清々しい香りのタイムで元気を取り戻しましょう!

♠タイム料理に合わせたい「エイジ・ガルシア・トリオの音楽」by 吉本 宏

男の香り!? マルチなハーブ、タイムのあれこれ。

タイム(英名)、タチジャコウソウ(和名)は、シソ科の多年草で350種類以上にものぼります。最もよく使われるのが、ハーブティーとして用いられる「コモンタイム」。高さ20〜40センチほどの幹が針金のように細く小低木で、小さな卵形の葉がついています。枝先に小さな淡いピンクの花を咲かせます。

もう一つはガーデニングでよく使われる「クリーピングタイム」です。高さ10センチほどで、地面に這うように伸びるので、グランドカバーとしてよく使われています。茎先のほうに小さな淡いピンク、白、紅色の花を咲かせます。

肉、魚介の臭み消しに使われるブーケガルニには、ローリエと一緒に必ず入っています。ローリエとタイムは、臭み消しツートップです。生のものより乾燥させたものの方が矯臭、消臭効果があります。

タイムの語源は、ギリシャ語のthyo(よい香り)、thyein(香らせる)、thymos(勇気)からといわれています。タイムは勇気、品位、優雅の象徴だったようです。古代ギリシャ・ローマ時代の男性たちは、入用後にタイムを胸にすりつけていたそうですが、確かに、男性的なキリッとした刺激的な香りで清々しさの中にかすかなほろ苦さのある香りは男性的と言えますし、嗅ぐと勇気がわいてくるような…(?) 男らしさの演出とデオドラント効果を狙ったのかもしれませんね。

そのほか防腐・殺菌効果、脂肪の多い食ベ物の消化促進効果があるので、暑さの残るこの時期のお料理にどんどん使いたいですね。
 

タイムのサルシッチャスープ

材料 4人分
ペコロス(皮むく) 12個
ジャガイモ(皮をむいて食べやすい大きさにカット) 中4個または小8個
ミニトマト 12個
うずらの卵(茹でて皮をむく)8個〜12個(お好きな数)
キャベツ(ざく切り) 1/4
ブイヨン 800ml
《サルシッチャ》
豚バラ肉 250g
豚肩ロース肉 150g 
タイム (葉のみ) 5枝分(仕上げ用に1枝とっておく)
オールスパイス 小さじ1/2
にんにく(芯をとる) 1/2片 
一味唐辛子 少々  
塩 小さじ1
こしょう 少々
オリーブオイル 大さじ1

作り方
1. 大きな鍋にブイヨン、ジャガイモ、ペコロスを入れ、弱火で15分煮る。
2. タイム(葉のみをこそげ落として使用)、オールスパイス、にんにく、塩、こしょう、一味唐辛子、豚肉をフードプロセッサーに入れねっとりするまで攪拌する。
3. 40gくらいに丸めて、フライパンにオリーブオイルを入れ、こんがり色がつくまで焼き、1.のスープに入れる。
4. 残りの材料(ミニトマト、うずら卵、キャベツ)を入れ、蓋をして弱火で10分煮て、塩、こしょうで味を整え、タイムを散らして完成。

なすのとろーりタイムソース

材料 4人分

タイム(葉のみ) 3枝分
ナス(皮をむき縦半分にして1㎝幅にカット) 大4本
パプリカ(皮をむき種を取り4分割) 小1個
オリーブオイル 大さじ2
にんにく(つぶす) 1/2片
塩 小さじ2
こしょう 少々

作り方
1. ナスをボウルに入れ塩をまぶす。ざるにあげて上から重しをして、15分くらい置いておく。
2. ナスを水がキレイになるまで洗い、水気をしぼる。
3. 平鍋にオリーブオイル、にんにく、タイムを入れ、弱火にかけ香りが出たら、ナスとパプリカを入れて混ぜふたをして5分。時々混ぜながらナスとパプリカが柔らかくなったら火を止め、あら熱を取る。
4. フードプロセッサーにかけ、お好みの細かさのペーストに仕上げ、塩、こしょうで味を整えて完成。

熱や乾燥に強いタイム、クリスマスリースにも。

ソースのポイントは、オイルにハーブ、にんにくの香りを移すこと。オリーブオイルが冷たいうちに入れるのがこつです。

ほかのハーブでも応用できます。ローズマリー、セージ、オレガノ、マジョラムなどは最適。柔らかいパセリ、バジルもOK! ただしチャービル、チャイブ、ディルなどは高温のオイルで香りが失われがちなので、調理の仕上げに生で使った方が効果的です。

タイムは、肉、魚、野菜など、どんな料理にも使える万能ハーブです。おすすめな使い方としては、ロースト系の料理や、スープ系の料理といった、長時間をかけて火を通す料理です。

素材にかけたり、詰め込んだりして焼いたり、ブーケガルニとして他のハーブと一緒にしてスープの香り付けに使ったりするなどが、オススメの使い方です。

お料理のほかにも、刈り取った枝をリースしたり、ポプリとしても楽しめます。
今年のクリスマスリースは、タイムで決まり!!
 

● 9月22日(土・祝)音楽とTOTOSK KITCHENのイベントがあります。詳しくはこちら

風が吹くような音色を奏でるエイジ・ガルシア・トリオの音楽

タイムはさりげない香りを持ちながらも、その用途はたくさんあって、中世では勇気をもたらすものとして、女性が戦士に贈ったそうです。内に秘めた想いを胸に旅立つ戦士の気持ちはどんなものだったのでしょう。

ブラジル出身で、フロリダを拠点に活動を続けるピアニスト、エイジ・ガルシアは、心の内に秘めたリリカルな想いを美しい旋律で描くアーティストです。

ブラジル出身で海外で活躍するピアニストといえば、ニューヨークを拠点にしているエリオ・アルベスなどのエレガントなメロディーを奏でるピアニストがいますが、どちらも共通しているのは、サウンド的には北米やヨーロッパの洗練されたジャズの香りがただよいながらも、メロディーの起伏やリズムにブラジル音楽のエッセンスがかくされているところです。

エイジ・ガルシアのアルバムに収められた「Little Bells For Jane」や「Presence」は、たおやかな旋律に風が寄り添って草原を流れていくような美しい風景が描かれています。彼の演奏する姿はとても端正で、ピアノに向かってメロディーを慈しむようにやわらかなタッチでピアノにふれるとこの優しい音が生まれてくるのです。

タイムのさりげない風味をナスにまとわせたソースは、まさに彼の生み出すメロディーのように優しい味わいが広がります。窓を開けると、ランチ・タイムのテーブルに爽やかな風が吹き込んでくるようです。

文/吉本 宏

Alabastro / Age Garcia Trio

【イベントのお知らせ】

bar espresso × TOTOSK KITCHEN
9月22日(土・祝)18:00〜23:00


3種のハーブのディップは「タイムでつくるなすのとろーりソース」「デュカスパイスの香りのフムス」「バジルでつくるピストゥソース」。おいしい天然酵母パンと一緒に提供します。

この連載で音楽コラムを執筆している吉本宏さんがDJをするイベント『bar espresso』に、TOTOSK KITCHEN中野エリさんが作る「3種のハーブディップ」が登場します。エリさんがお店で自らサービスしてくれるので、レシピのコツを聞きたい人は、ぜひこの機会にエリさんを訪ねてください。

場所:『Bar Music』(渋谷区道玄坂 1-6-7-5F)*BRUTUS No.720 で紹介されました。
ハーブディッププレート&ミュージックチャージ1,000円/ドリンク700円〜