ほろ酔い倶楽部 - 13 - 中国パワー研究。中華と合わせるワイン。

(2010.08.24)

今夜のBUワイン研究会は、マガジンハウス近くの昔なつかし高級中華『だるま』にワインを持ち込み「中国パワー研究/中華と合わせるワイン」と題して講師には『レザンミュール』代表の北沢清二氏をお迎えしました。

高級中華と聞いてどんなお店を想像しますか? 高いの? いえいえご安心下さい! 銀座の奥の裏路地、がらがらっととびらをあけてのれんをくぐると年季の入りを感じさせる油のにおい。「おっちゃん、餃子と生ビール!」と言いたくなる気持ちをぐっと抑えて細くて急勾配の階段を上がり2階へ。おっと、靴はちゃんと脱いで下さいね。なにせ、「昔なつかし高級中華」ですから。掘りごたつに落ち着く頃、今夜のメンバーが一人また一人と集まってきます。

まずはビールで乾杯!  写真は砂肝のきゅうり和え、春雨炒め。もちろん餃子もいただきました!

いよいよワインのブラインドテイスティングが始まります。今夜は北沢氏セレクトの8種類のワインをいただきます。どんなワインに出会えるのでしょうか!?果たして中華とのコラボはいかに!?

アルミで覆われた瓶から最初に注がれたワインは……ロゼ! しかも発泡しています。

まずは恒例の国当てから。ちょっと甘口だからイタリアのランブルスコ? でも泡の感じがランブルスコにしては弱い気がする、などなどいろんな意見が飛び交います。

さて答えは、フランスのサヴォア地方の田舎方式と呼ばれる方法で造られたロゼのペティアン。そのほんのりと心地よい甘みが、酸味と甘みの程よいトマト卵炒めによく合います。

2本目はフランスのロワール地方の典型的なロゼワイン。なるほど、一般に中華にはロゼとよく言われるそうですが確かに合います。どうして合うのかな~? 種明かしはもう少し後で。

ここで講師のMr.Seiji Kitazawaをご紹介しましょう。

ワイン業界15年目の北沢氏、ずっとフランスワインを(特にブルゴーニュ、シャンパーニュを中心に)追い求めていらっしゃったそうです。バイヤーとしての豊富な経験を買われて、現在はブルゴーニュのとあるメゾンでアジア輸出担当を任せられるなど大変にご活躍・ご多忙の日々。「レザンミュール」代表でいらっしゃいます。

穏やかで静かな語り口ですが、芯は熱く、大変魅力的!!!

ちなみに今夜のワインは全てフランス産なのだそうです。フランスワインといっても地方によって様々な特徴がありますが、「食感」をテーマに選ばれたそうです。ロゼワインに中華が合うのはなぜか?のヒントになりそうですね。

3本目は白ワイン。ソーヴィニョン・ブラン、キンメリジャン土壌ということで、少しきりりとした印象。今夜の会にふさわしくない唯一のワインとして登場したはずだったのですが……。意外と合うよ~との声が多数出る結果に。特に中華風冷奴に合うとの声が。ごま油の香る素朴な味には、ちょっとエッジの効いたワインも合うようです。

4本目はワインに精通したお姉さまをうならせた一本が登場。まいどMOVIEで「さすがSeiji Kitazawa!」と言わしめたあのワインです。

グランクリュ・ショロスベルグの麓にある歴史的にも有名なクロ・デ・キャプサンの区画から、アルザスのトップ・ドメーヌのひとつで、造り手はこのドメーヌの現在の名声の基礎を作り上げた人物。スパイシーな料理(カレー、タジン)に合うはずだと選ばれた白ワイン。もちろんおいしくいただきました。

後半戦の4本は赤ワイン。
5本目、まずはチャーミングでとてもバランスのよいクラシックなボルドー。
6本目、グルナッシュ&カリニャンの若い造り手さんのワイン。
テーブルには少しこってりとしたお料理が並びます。エビチリの他にはなすと豚肉の味噌炒めなど。

あ~~~、どのワインも、どのお料理もおいしい!! 昔なつかし高級中華だけど、『だるま』さんのお料理はとってもおいしいのです。あなどれません! ほろ酔いで皆大変盛り上がっていますが、最後まで楽しく検証です。さあ、本来の目的に戻りましょう。

7本目は過去にスペクテーター誌で世界のワイントップ100のうち堂々5位になって以来、急に有名になったワインです。ぶどうの品種はグルナッシュ・ノワールを中心にムールヴェードル、シラーですが、なんとここにきてぶどう品種当てクイズで見事ムールヴェードルを当てた方がいらっしゃいました。酔っ払っていても舌は確かなんて! 私も見習わなくっちゃ。

ついに最後のワイン。本日のメイン(!?)ともいえるべき、お高いワインの登場です! 一同やんややんやの大騒ぎ。普段はとても手の出ないワインですが、こんなふうに出会えるなんてとっても幸せです。

今夜のワインが出揃ったところでワインリストをご覧下さいませ。

1:Bugey Cerdon Methode Ancestral / Domaine Alain Renardat-Fache
2:Rose d’Anjou 08/ Michel Armand
3:Sancerre La Tournebride 08 / Domaine Vincent Gaudray
4:Gewurztraminer Cuvee Teo 05 / Domaine Weinbach
5:Ch.Dutruch Grand Poujeaux 08 / Moulis en Medoc
6:Cote du Roussillon 06 / Domiane du Mas Becha
7:Ch.Neuf du Pape La Crau 05 / Domaine du Vieux Telegraphe
8:Mazoyeres Chambertin 1998 /Domaine Camus

 
北沢氏のお話です。

今回は町場の中華屋さんで、楽しく検証したいと思い、中華との相性が良いとされる定番の組み合わせからこれはどうなの?と考えてしまう産地のワインまで、色々と飲んで見てみましょうと言う選択です。テーマは「食感」。土壌や品種が違っても比較的に「丸い」タッチのワインを選んでみました!! なぜかと言うと意外と町場の中華屋さんの料理って食感が「丸い」って感じていましたので……。

カリカリのミネラルのシャブリとか、気品のあるお貴族的なリースリングって個人的には合わせにくいのかな~と。

なるはど、だから中華には「丸い」ロゼワインなんですね。皆さん、おわかりになりましたか? ちなみにロゼワインは太陽の下が似合うワインなんだそうです。今週の週末は冷たくひやしたロゼワインとおいしい中華でピクニック、なんていうのはいかがでしょう。

今回はロゼだけでなく赤ワインも白ワインもいただきましたが、全て中華との合性は抜群。おいしく楽しい会になりました。北沢さん、本当にありがとうございました!

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最後に、近年中国におけるワインの消費量はどんどん上がっているそうです。日本ではなかなか購買が伸びない値段のものも中国でなら売れるそうで、世界中のワイナリーが注目するマーケットであるとのこと。近い将来、おいしいワインが飲みたいなら中国へ行くという時代がきてしまうのでしょうか……。恐るべし中国パワーです。

筆者プロフィール

則竹 正子(のりたけ・まさこ)

ソプラノ。愛知県立芸術大学卒業。モーツァルト『フィガロの結婚』スザンナ、ロッシーニ『ブルスキーノ氏』ソフィーア、ペルゴレージ『奥様女中』セルピーナなどを得意としている。近年はオーケストラとの共演など、活躍の場を広げている。