TOTOSK KITCHEN Vol. 11 ジンジャージンジャーでつくるチリスープと
黄色いソース

(2013.02.25)
写真/黒澤義教
写真/黒澤義教

♠ジンジャー料理に合わせたい「フレッヂ・マルティンスの音楽」by 吉本 宏

2月はいろいろな薬効を持つショウガ。

ショウガってハーブなの!?と思う方も多いかもしれません。ハーブといえば香りのする葉のイメージですが、実は香りがあってもなくても、大なり小なり薬理作用のある“草木”がハーブなのです。

ショウガは、熱帯アジア原産の多年草で食材、生薬として幅広く利用されています。英名ジンジャーはサンスクリット語の『角の形をしたもの』という語源だそうです。土の中に根茎があり、地上には葉がまっすぐ生えています。収穫したてや、夏に早く掘り出されたショウガは新ショウガと呼ばれます。新ショウガは白っぽく、繊維が柔らかく辛さも控えめです。新ショウガを収穫後2カ月以上寝かせたものが辛味の強い、ひねショウガとなるそうです。また、初夏に出荷される葉付きの小ぶりなショウガを谷中ショウガと言います。江戸期に谷中の特産品だったそうです。江戸時代に来日したドイツ人医師シーボルトは民間薬として母国にショウガを紹介したそうです。風邪をひいたらショウガ湯というのはこのころからあったのでしょうかね?

ショウガには、ビタミンB1、B2、ビタミンC、鉄分、カロチン、カリウム、カルシウムが含まれます。咳、ぜん息、鼻づまり、胃腸病、冷え性、頭痛、関節痛、生理痛、便秘、免疫力低下、むくみ、肩こりの穏和などに効くと言われ、万病に効くハーブといえます。また漢方薬にもショウガが使われています。

生のショウガは、辛味成分ジンゲロールという強い殺菌作用のある成分を含むので、お刺身に添えるのは理にかなっているのですね。生臭さを消すだけではなく、食中毒予防も期待できます。

ジンゲロールは空気に触れると成分が変化してしまうので、食べる直前におろすのがポイントです。このジンゲロールは、皮の近くに多く含まれているので、皮ごと使うのが一番です。

加熱すると、ジンゲロールは唐辛子の成分に近いショウガオールに変化します。これは、胃腸を直接刺激して、血行をよくします。乾燥させると、より辛くなりショウガオールが増えます。冷え性を改善したいときは、加熱したものか乾燥したものを使うのがいいですね!


根ショウガとジンジャーパウダー

ショウガのチリスープ


皮のまま水に浸して冷蔵庫で保存するとおいしさが長持ち

材料4人分
ショウガ 25g(皮をむかずに薄切り)
オリーブオイル 100ml
マスターシード(粒マスタードでもOK) 大さじ1
ナツメグ 小さじ1
ガラムマサラ 大さじ1
唐辛子 2本(種取りみじん切り)
にんにく 1片(つぶす)
玉ねぎ 1個(スライス) 
お好きなさつまいも 400g(1㎝角切り)
にんじん 100g(1㎝角切り)
トマト水煮 1缶
レモン汁 2個(1個半絞る/残り飾り用に輪切り) 
塩・こしょう 適宜   
水 400ml

作り方
1.サツマイモを角切りにして灰汁抜きする。(ボウルにサツマイモがひたひたになるまで水を入れ5〜15分おいて水が濁ったら水を切る。これを2回繰り返す)
2.大きな鍋に、オリーブオイルとマスターシード(または粒マスタード)とナツメグを入れ、種がはじけるまで炒める。
3.弱火にして、唐辛子、ショウガ、にんにく、ガラムマサラ、玉ねぎを加え5分炒める。
4.1のサツマイモ、にんじん、トマト水煮、水、レモン汁(1個半分)を入れ、ふたをして25分煮る。塩・こしょうで味を整えて完成。(盛り付けのとき輪切りレモンを添えて)

黄色いソース


皮付きが気になる方は、スプーンでこそげとってもいい。

材料4人分
ショウガ 25g(皮ごとすりおろす)
黄色のパプリカ 1個(皮を剥き、種を取り角切り)
カルダモン 3粒
青リンゴ 1個(皮をむき、角切り)
オリーブオイル 大さじ2
ピーナッツバター 小さじ2
白ワイン 大さじ2
塩 少々
こしょう 少々
水 100ml

作り方
1. 小鍋にオリーブオイルを入れ、ショウガとカルダモンを入れ中火で炒める。写真
2. ショウガの香りが出てきたら、パプリカ、青リンゴ、水を入れ柔らかくなるまで煮る。
3. 白ワインを入れ2分ほど炒め、ピーナッツバターを入れ溶かす。
4. 3からカルダモンを取り出し、ミキサーで滑らかになるまで攪拌。塩・こしょうで味を整えて完成。

ショウガのアレンジと保存法。

薬味として少量しか使わないショウガくんが冷蔵庫の片隅でしわしわになっていることはありませんか? そうなる前に使い切る方法や保存法を覚えておきましょう。

ショウガをスライスして天日で1日干したら漢方ショウガが簡単に作れます。またショウガと同量の砂糖で煮て、乾燥させた後、砂糖をまぶしたらおやつにもなりますよ。

生のまま使いたい場合は、水を満たした瓶やタッパーなどの密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存します。空気に触れないようにするのがポイント。切り口が乾燥せず、みずみずしいままの状態が1週間は保ちます。


黄色いソース

ショウガのチリスープ

からだを芯から温めてくれるフレッヂ・マルティンスの音楽

ミモザやショウガの色合いに誘われて、ブラジルのニテロイ出身のシンガー・ソングライター、フレッヂ・マルティンスの『Guanabara』の淡い“黄色”のアルバム・ジャケットを選んでみました。ラグビーボールを突き刺したような不思議な形をした、リオデジャネイロの岩山ポン・ヂ・アスーカルをモチーフにした淡い水彩画が印象的です。

ニテロイは、リオからグワナバラ湾を橋で渡ったところにある対岸の街で、セルジオ・メンデスの生まれ故郷や、ブラジルの偉大な建築家オスカー・ニーマイヤーの宇宙船のようなニテロイ現代美術館がある街として知られています。その美術館を訪れたことがあるのですが、広い窓からはグアナバラ湾の入口が見渡せるとても気持ちのいい場所でした。

フレッヂ・マルティンスのこのアルバムの音楽は、50年代後半の陽光の降り注ぐリオの街で生まれたボサノバの香りをたたえています。まろやかで少し切なさを帯びた彼の歌声はボサノバのメロディーやコードの響きととても相性がよく、レブロンのセルソ・フォンセカと同じく、現在に当時のボサノバのエッセンスを美しく伝えてくれます。69年生まれの彼は、自分の生まれる前の音楽に導かれるようにとても自然に歌い、ヴィオラン(クラシック・ギター)を爪弾いています。彼はまたとてもいい曲を書くソングライターで、思わずそのメロディーに耳を傾けてしまいます。そんな彼の歌は、エリス・レジーナの娘のマリア・ヒタや、魅惑的な歌声のネイ・マトグロッソなどにも歌われています。

きらめく海と山々の稜線が美しいリオの風景に想いを馳せながら聴きたいアルバムです。春はもうすぐ。

文/吉本 宏

Guanabara / Fred Martins