ほろ酔い倶楽部 - 3 - イタリアの地場品種に注目!
(2009.10.08)ワイン好きが集まって本音でテイスティングを行う「ほろ酔い倶楽部」。倶楽部の母体はBRUTUS 編集部の倉庫で生まれたワイン研究会。ワインライターの柳忠之さん、葉山考太郎さん、楠田卓也さんを筆頭に、ソムリエ、インポーター、造り手たち、総勢約100名が、 16年にわたりテイスティング活動を続けてきました。このコーナーでは、会のメンバーによるテイスティングの様子をレポートしていきます。プロによる格付けのためのテイスティングではなく、一般のお酒好きに、お酒の特徴や雰囲気をわかりやすく伝えたいと思っています。また、お酒はワインに限らず、なんでもテイスティングしていくつもりです。ご期待ください。
第3回 今回のお題 「今、注目度の高いイタリアの地場品種とは?」
今回のテイスティング・メンバー
松永 聡 (まつなが・さとし) 渋谷区東にある、バール・エ・エノテカ・インプリチト、オステリア・スプレンディドのオーナー。北から南イタリアまで色々なワイナリーやレストランを巡り、2003年にインプリチトをオープン。 |
|
鈴木 晃司(すずき・こうじ) 元ホテルマン、9年前よりイタリアワイン・食材専門商社モンテ物産株式会社勤務。販売しているのはイタリアワインのみであるが、その他の国のワインも楽しんでいる。 |
|
齋藤 成倫(さいとう・しげのり) 弁護士。自称:アリアニコ好きを公言した初の日本人。目標:スーツ着用時に職業を告げて意外な顔をされないこと(私服着用時は断念)。長所:先約がない限り飲みの誘いを断らないこと。短所:同上。好きなワイン:ブルゴーニュ。 |
今回のナビゲーター
山崎玄(やまさき・げん) |
某日系企業勤務の傍ら、ワインオタの仲間入りして、はや15年以上。休暇では必ずヨーロッパの生産地を巡り、訪問したワイナリーは数知れず。今世紀に入ってからはイタリア一辺倒。生産者の友達も大分増えてきた。
日々色々な方と一緒にワインを飲む機会がありますが、「イタリアワインは良く分からない。何を選べばいいのかわからない」とおっしゃる方の何と多いことか! 生産地がある程度限定され、またワイン法によるヒエラルキーの確立されたフランスワインと異なり、イタリアワインは産地も品種も多く、また決め事にこだわらないイタリア人の性向もあって、非常にわかりにくいものとなっているのは確かです。
そんな中、今回は現在のイタリアワインの世界を語る上で最大のキーワードの一つ「地場品種」に焦点を当ててみました。最近訪問した作り手や現在脚光を浴びている生産地を中心に、品種の個性が明確に発揮されているものを揃えてみましたので、イタリアワインのディープな世界への足掛かりとしていただければ幸いです。
(1)何故今回は南のワインを中心に選んだのですか?
フランスだと北のワインはこういう味、南はこういう感じ、という公式がありますが、イタリアの場合は、南北問わず標高が非常に高い生産地があるため、南のワインでも「暑い」味がするとは全く限らず、特に優れたワインにはその傾向が顕著です。その感覚を、北のワインと一緒に飲むことでつかんでいただきたかった、というのが一番大きいですね。
あとは、最近毎年南の生産者を訪れているので、最新の情報をご紹介したかったこともあります。今回は特にシチリアのエトナ地区のワインが多かったですが、これは現在イタリアで最も注目されている産地で、4月に行ってきたばかりです。
(2)イタリアワインを知るうえで、抑えるポイントを教えてください。
やはり標高は一つ大きなポイントでしょう。例えばエトナ地区の畑は海抜400〜1,000mに位置しているので、北の標高の低い場所よりも必ずしも暑いわけではないし、また昼夜の寒暖差も大きいので、意外に「涼しい」ワインになります。
あとは、やっぱり品種でしょう。これは数が非常に多い(300、500、1000などいろいろな説あり)ので、順番に少しずつ覚えていくしかないですね。系統的に抑えていくなら、まずは一番有名なピエモンテとトスカーナ。次に白の銘醸地の(フリウリ、アルト・アディジェ、マルケ)。そして島(シチリア、サルデーニャ)。ここまで来ると何となく全体像が見えてくるので、あとは時間と興味に応じて、という感じかと。
(3)イタリアの昔と今のワインはどう違っているんですか?
南では顕著ですが、今の代になって初めて高品質なワインを作り始めた生産者が多いですね。イタリアでは、元々は地元だけで消費されていた地酒的なものが圧倒的に多かったと思うのですが、生産者が代替わりしてより大きな市場を目指すようになり、伝統的なやり方に加えて、新しい醸造技術を勉強していいワインを作る技術を身に付けたことが大きいのだと思います。
同時に、技術の進歩によって、以前は安酒しかできないと思われていた品種のポテンシャルが見出され、そういった品種から作られたワインの品質が世の中で認知されるようになった、ということも、これだけイタリアワインの世界が多様化した理由でしょう。
‘90年代中盤までとは異なり、「バリック=いいワイン、売れるワイン」ではなく、品種や土地の個性を生かしたワインが高く評価される時代になっているので、こういった流れはまだまだ続いていくのかもしれませんね。
(4)初心者と中・上級者におすすめするワインを教えてください。
初心者の方には、イタリアワインらしさを多く持っているものということで、品種で言うとサンジョベーゼやネッビオーロ、バルベーラあたりから入ってみることを薦めます。これらは日本でふつうに手に入るものも多いので。
中・上級者の方には、少々マニアックな世界を覗いていただきたいので、地場品種の宝庫で、まだまだ日本では知名度が低いフリウリやカンパーニャを是非攻めていただきたいですね。
(5)こんなにイタリアワインに詳しい山崎さんって、いったい何者なんですか?
イタリア歴は長いですよ。小学校のスーパーカー・ブームが最初で(お気に入りはポルシェやロータスではなく、当然フェラーリ!)、中学生になるとローマ帝国の歴男となり、高校生になると当時はやっていたイタ・カジに憧れ(ただ本物は高くて買えないので、「それっぽいもの」で我慢)、大学に入ると安いイタリアン巡りを始め、そしてそれだけでは飽き足らず、北はアオスタのスキー場から南はアグリジェントのギリシャ神殿まで、名所を毎年訪れるようになりました。
そういう中で自然にイタリアワインに興味を持ち、一時はフランスワインに浮気しましたが、8年前のピエモンテ訪問で自分の血を自覚、それ以来イタリア一直線。現在は年1、2回イタリアへ。名所や買い物はそっちのけで、ひたすらワイン生産者とレストランのみを訪れるという濃〜い旅をしています。
服も基本はイタリア物、オペラもやっぱりイタリア物が好き。重いドイツ語の響きにはどうしても馴染めません(ただ、一番好きな作曲家はモーツァルトですが……)。
さあ、このように身も心もイタリアに捧げた山崎さんが、今回テイスティングに持ってきてくれたワインは以下に!
文責 池田美樹(いけだ・みき)
テイスティングデータ(価格は目安です)
今回のレポーター 池田美樹(いけだ・みき)マガジンハウスの編集者。現在、 新女性誌『Age(アージュ)』を発行。都会ではたらく元気あふれる女性達に、パワフルなライフスタイルを提案している。ワインとのおつきあいは、『Hanako』在籍時代にワイン特集の担当を始めてから。ヴィンテージシャンパンと、よい年代のブルゴーニュしか口に合わないと公言してはばからない厚顔無恥ぶりが、ワインを愛する人たちの神経を逆撫でしている。WEBダカーポにてコラム「LOVE CITY WALK」を連載しているほか、「新雑誌製作中! ブログ about an Age」も日々更新中。 |