Bon Vivant! - 3 - アルデッシュの天使。

(2010.06.11)

今回は、フランスの真ん中より少し南に位置する
Ardèche(アルデッシュ)地方の
ワイナリーMas de la Bégude(マ・ドゥ・ラ・ベギュドゥ)の
Gilles AZZONI(ジル・アゾーニ)さんを訪れています。

家の入り口にある天使の看板。

ジルがこの地でワインを作り始めたのは1983年。
彼が手がけるLe Raisin et l’Ange(ル・レザン・エ・ランジュ)
というワインは、「ブドウと天使」というなんとも可愛らしいネーミング。
彼自身もそんな可愛いらしいワインと同様に詩的で
自然味あふれる素敵な造り手です。

昨年から訪れたいと思っていた造り手の一人であり、
今回偶然にもDomaine Fontedicto(ドメーヌ・フォンテディクト)
のワインサロンで出会うこととなりました。
(ワインサロンの内容はこちらをどうぞ)

パリ出身のジルがアルデッシュでワインを造ろうと心に決めたのは、
この地の自然の美しさに惹かれたからとのこと。
 

家の近くにある川辺。
近くの街Aubenas(オブナス)からの景色。

それまでは、Mâcon(マコン)の醸造学校に通い、
その後はBourgogne(ブルゴーニュ)のワイン畑や
パリのワインショップなどでも働いていたそうです。
ワインに関する仕事全般を一通り把握するための
行動力は実にエネルギッシュです。
もちろん畑探しもたった一人で始め、
偶然にも現在の畑を見つけることとなりました。
そんな彼の口癖は

「Tout est possible(全ては可能だ)」

ワイン造りを始めた当初は、
醸造学校で学んだ通りにワインを作っていたそうですが
畑には殺虫剤などは使用せず、
醸造にも僅かな亜硫酸しか使用しなかったそうです。
そのため、周囲はジルが「有機農法」を行っていると
思っていたとのこと。
彼自身、「有機農法」を行っている自覚はなかった為、
では「有機農法」を行おう、と決意したそうです。

そして、1998年。
研修生時代に偶然、隣に居合わせた
ワイナリーLe MAZEL(ル・マゼル)の
Gérald OUSTRIC(ジェラルド・ウスリック)から
15年ぶりに連絡が入ります。

「造ったワインを試飲して欲しい」

彼が初めて造ったワインを口にし、
「このワインはなんだ?」
と、驚き、
ワインが体全体に沁み渡るのを感じたそうです。

ジェラルドが造ったそのワインは
醸造に化学物質を使用することのない自然なワイン。

その味わいから、
ジルは自然派ワインを造ることを決意し、
2000年より自然派ワインを造り続けています。

「ワインは造り手の鏡だ」

先日、ワインを飲みながら、
ふと口にしたジルの言葉。

その造り手の考えや、感じているものが全て畑に反映され、
ブドウが実り、ワインになる。

自然派ワイン造りは
シンプルで繊細だからこそ、
造り手の想いがワインに表され、
それを感じながら味わうことができる
生きた飲み物なのだと。

その言葉通り、
ジルのワインは、
それぞれ違った味わいを表しながらも
その根底は自然をまるごと受け止める大らかさで
出来ているようです。

さてここで、
ジルの仲間であり、
アルデッシュの素晴らしい造り手を紹介したいと思います。

まずは、
ル・マゼルのジェラルド・ウスリック。
彼は、どんな問題でもすぐに良い解決策を見つけてくれる
ジルの頼もしい仲間の一人。
無邪気さとひらめきを持った少年のようです。

そして、2007年からこの地で自然派ワインを造り始めたチェコ出身の
Andréa CALEK(アンドレア・カレク)。
ジェラルドからの勧めもあり、彼はこの地を選びます。
独特の感性を持つ彼のワインは
様々な顔を見せながらも
純粋さが彼の人柄を表わしています。

アンドレアの醸造所にて。左からジェラルド、ジル、アンドレア。

それぞれ全く違ったスタイルのワインを造りながらも、
3人の絶妙な関係がなんとも羨ましい限りです。

そして、
彼らを映し出す「鏡」は、
私達に多くのことを教えてくれます。
人生を楽しむこと、受け入れること、広げていくこと。

次回は、
それぞれの畑や醸造について
お話ししたいと思います。