猛暑を吹き飛ばす刺激を求めて!?
大人が観るべきサマームービー10
(2013.07.11)
暑~い夏の到来。海の向こうでは、『パシフィック・リム』の芦田愛菜嬢の泣きの演技がホットな話題です。また一年中ホットなスター、ジョニー・デップの新作も間もなく上陸。けれどこの夏、最も熱〜いスターといえばベネディクト・カンバーバッチでしょう。その彼が強烈なインパクトを放つSF超大作ほか、大人視点でチョイスした映画10本を熱烈推薦!!
いよいよ夏本番! 映画界の夏商戦も、火ぶたが切って落とされます。永遠の少年たちならば、人型巨大兵器vs.KAIJUの死闘を描く『パシフィック・リム』や実写版『ガッチャマン』に、ワクワクせずにいられないでしょう。一方、ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』vs.ジョニー・デップ主演の『ローン・レンジャー』なる、ハリウッドの二大アラフィフ巨星対決も注目の的です。
とはいえ、話題作ばかりを追いかけるのは正直お子ちゃまチック。人生経験もキャリアも積んだ映画ファンたるもの、脳みそが汗といっしょに溶け出さないよう、大人の視点で映画に向き合いたいものです。ここでは、“大人だからこそ”心を動かされたり刺激を受けたりできる、そんな10本をチョイス。「白か黒か」「相棒」「マニア」「伝説」「サクセス」という5つのキーワードに分けてご紹介します。
トップバッターは、両極のキャラクターに魅了される『スター・トレック イントゥ・ダークネス』です。幸か不幸か、私たちは大人になればなるほど、グレーゾーンだらけの世の中を生きていることに気づかされます。だからこそフィクションの世界には、正義のヒーローを求めるのかもしれません。けれど同時に、ダークさをまとった悪(あく)のチャームに抗えないのも、また事実。物語のキーパーソン役にベネディクト・カンバーバッチを投入した今作では、両者の激突から目が離せないはずです。
『スター・トレック~』が夏映画の大本命だとしたら、“裏本命”は1950年代に発表された「イングマール・ベルイマン 3大傑作選」でしょう。世紀を越えても色あせない世界遺産級の傑作に、スクリーンで出合うチャンスです。もちろんピックアップした10本は、いずれ劣らぬ粒ぞろい。大画面でぜひ!!
●BLACK OR WHITE/白か黒か
あなたの胸を焦がすのは悪の華、それともヒーロー? グレーゾーンな主人公は有罪か無罪か??
カンバーバッチの勢いは、もう誰にも止められない!?
『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
複雑な過去を抱えるジョン・ハリソン役に抜擢された、『SHERLOCK(シャーロック)』のベネディクト・カンバーバッチ。今作最大の見どころは、彼のクールな「悪の華」ぶりに間違いありません。ブラッド・ピットやジョニー・デップのような甘い美形スターとは一線を画す、どこかアンバランスでエッジの利いた造形美の本領発揮。彼のアブなすぎる存在感に心をかき乱されるのは、USSエンタープライズ号のクルーだけではないでしょう。知的な低音ボイスや、長い手足から繰り出されるアクションも、大人女子をシビレさせるポイントに。それともあなたをノックアウトするのは、クリス・パイン演じる若きキャプテン、ジェームズ・T・カークの熱き“クルー愛”?!
殺人者は、エンターテイナーな人気“おくりびと”
『バーニー/みんなが愛した殺人者』
『スクール・オブ・ロック』の監督&主演コンビが再タッグ。元ネタは、1996年にテキサス州の田舎町で起きた、奇妙な殺人事件です。町いちばんの人気者バーニーはなぜ、殺人を犯したのか? そのてん末と裁判のゆくえが、悲喜こもごもに綴られていきます。このバーニーというキャラクターが、モデルありきとは思えないほど、ジャック・ブラックにハマリすぎ! 根っからの善人にしか見えないバーニーが、したたかな殺人者にもふと思える、グレーゾーンの演技が絶品です。おまけに葬儀社のアシスタントとして、地元の短大演劇部の音楽監督として、随所にちりばめられたジャックの美声はさすが。彼の持ち味を最大限に活かした、ブラックな笑いを楽しめるのは、大人ならではの特権でしょう。
●PARTNERS/相棒
相棒は、かけがえのない宝もの。たとえ人間じゃなくてもね♪
ロス市警パトロール警官の死と隣り合わせの日々
『エンド・オブ・ウォッチ』
5分にいちど、事件が起きるといわれる世界で最も危険な場所、L.A.サウスセントラル。そのサウスセントラル育ちの監督が、街をパトロールする名もなき警官たちの日常を活写した、ありそうでなかった相棒映画です。抜群のコンビネーションを誇るテイラー&ザヴァラ巡査は、やんちゃながらも仕事に燃える正義漢。ごくフツーに野心を持ち、ごくフツーに女性を愛する、人間くさい彼らが送る死と隣り合わせの日々に、冒頭からドキドキの連続です。手に汗握る緊張感とユーモアのバランスも見事な、まさに大人のためのポリスストーリー。
孤独な泥棒&ふたつの顔を持つ黒猫コンビが大活躍
『パリ猫ディノの夜』
大人の街といえば、まっさきに浮かぶのがパリ。なかでも人びとが寝静まった夜のパリの表情は、とびきり魅惑的です。その街に似合う動物といえば、エレガントな黒猫以外には考えられません。そう断言したくなるほど、パープルがかった夜の風景と、自由奔放なディノの冒険に胸がトキメキっぱなしです。ディノとパートナーを組む泥棒ニコの孤独な佇まい、ディノの飼い主である失語症の少女ゾエなど、陰を帯びた設定もフィルム・ノワール感を倍増。ハリウッド製アニメーションとはひと味もふた味も違う、大人仕様のファンタジーです。
●ENTHUSIAST/マニア
好きなものは好き。マニアックな情熱こそが、夢をカタチにするのです。
「アニメーション映画は子どものために創るべき」との持論を覆し、宮崎駿監督が初めて大人を意識して創った青春ストーリー。実在の人物を主人公のモデルにしたことも、監督にとっては初めての挑戦でした。そのふたつの“初めて”が、すばらしい作品に結実。美しい風のような飛行機を造る――少年時代からの夢をカタチにすべく、激動の時代に力を尽くした堀越二郎の姿が、生きづらい世の中に身を置く私たちの心に響きます。既成曲とは思えないほど、作品世界にピッタリ寄り添った主題歌『ひこうき雲』も、大人の涙腺をますます刺激。
幸せな同居カップルを襲うトラブルメイカー家族
『ニューヨーク、恋人たちの2日間』
『トリコロール/白の愛』(’94)、『ビフォア・サンセット』(’04)など、女優として輝かしいキャリアを誇るジュリー・デルピー。その彼女が、監督・脚本・音楽・主演を兼任したロマンティックコメディです。『パリ、恋人たちの2日間』(’07)同様、男女の本音を軽妙かつシャープにえぐり出す脚本、テンポのよい演出がさえまくり。ジュリーの実父が怪演するワイルドな父親、露出狂ぎみの妹など、“ポリティカリー・インコレクト(politically incorrect)”なキャラクターたちに、笑いを誘われっぱなしです。そんな彼らを迎える、オバマ大統領マニアの恋人役クリス・ロックも、最高にキュート。メガネ男子な彼に、母性本能をくすぐられちゃいます。
●LEGEND/伝説
伝説と化した巨匠たちの映像世界を、心ゆくまで堪能したい。
世界の映画人を震撼させた傑作をスクリーンで!
「イングマール・ベルイマン 3大傑作選」
黒澤明、フェデリコ・フェリーニと並び、「20世紀最大の巨匠」と称されるベルイマン監督。スタンリー・キューブリック、スティーブン・スピルバーグら、そうそうたるビッグネームたちに影響を与えている、北欧映画界の至宝です。その生誕95周年となる今年、かのウディ・アレンが「最も好きで、最も影響を受けた映画」と語る『第七の封印』(’56)、初見の方にオススメの『野いちご』(’57)、アカデミー賞に輝く『処女の泉』(’59)の3本が、デジタルリマスターでスクリーンにお目見えします。感性を刺激されると同時に、迷える大人たちに人生の意味を見直させてくれる貴重な機会を、くれぐれもお見逃しなきよう。
“生きる伝説”が贈る、残酷で美しい愛の移ろい
『トゥ・ザ・ワンダー』
40年を越えるキャリアのうち監督作は6本と寡作ながら、その完成度の高さにハリウッドスターがこぞって出演を熱望する、テレンス・マリック。自然光での撮影にこだわり、公の場に姿を現さない“生きる伝説”の最新作は、愛が終焉していくさまを映しだす、せつないラブストーリーです。セリフらしいセリフのない、まるで無声映画のような手触りの今作は、万人向けとはいいがたい作品でしょう。けれど圧倒的な映像美と、すべてをさらけだすかのような俳優たちの表情に、想像力をかき立てられない大人はいないはず。説明のつかない感情のなかでも最たる愛の移ろいに、心を揺さぶられっぱなしです。
●SUCCESS/サクセス
サクセスの定義は人それぞれ。いざとなれば、裸一貫で勝負です。
鬼コーチと天然系ヒロインの恋とサクセスストーリーに、元気をもらえる痛快作。背景となるのは、ロックンロールが誕生し、世界がドラマティックに変化した1950年代です。劇中には当時の名作へのオマージュがふんだんに盛り込まれ、『シェルブールの雨傘』(’64)やヌーヴェルヴァーグ作品を彷彿させるシーンには、やはり胸が弾みます。ちなみに、丸みを帯びたカラフルな衣装をチャーミングに着こなすヒロインは、オードリー・ヘプバーンのファンという設定。そんなヒロインの成長劇にくわえ、挫折をひきずる鬼コーチの再生物語としても、見応え十分です。
鍛え上げられた肉体は、オトコの最強の武器!?
『マジック・マイク』
製作・主演を務めたチャニング・テイタムは、ダンス映画『ステップ・アップ』(’06)でブレイクを果たした“踊れる”スター。彼が10代のころストリッパーをしていた過去に着想を得た今作は、きらびやかなレビューショーの世界に生きる男たちの群像ドラマです。チャニングをはじめ、『ホワイトカラー』のマット・ボマーらによる、SEXYかつアクロバティックなダンスを堪能するだけでも、目の保養はバッチリ。そのうえ30歳のマイク、19歳のアダム、40歳のダラスそれぞれのエピソードが、人生の転機について考えさせてくれることでしょう。地に足の着いた、辛口ヒロインも好感度大。単なるクーガー女子向け映画と勘違いして、スルーするにはモッタイない、大人のエンターテインメントです。