最新作『アウトロー』で、
トム・クルーズの魅力をおさらい。

(2013.01.15)

アイドルから王道のスターへ
トム・クルーズの魅力とは?

2月1日公開、トム・クルーズ主演・製作の『アウトロー』。前作『ロック・オブ・エイジズ』でミュージカルに挑戦、ロックの神様を演じたトムが、得意のアクション映画に帰ってきました。

トム・クルーズというと今やハリウッドの代名詞的存在。1981年の『エンドレス・ラブ』『タップス』でスクリーンデビューを果たし以来、34本の映画に出演、アカデミー賞ノミネート3回、ゴールデン・グローブ賞3賞受賞。『ミッション:インポッシブル』シリーズからは製作も手がけ、プロデューサーとしての手腕も高く評価されています。

最近の若い世代では、トム・クルーズの魅力がよくわからないという人もいるといいますので、トム・クルーズの魅力と、最新作『アウトロー』の見どころについて。

スターであると同時に
観客側の立場を忘れない知的な映画製作者。

トム・クルーズが注目されたのは、アメリカ海軍の青年たちの青春を描いた『トップガン』(’86)。その頃は、アイドル的存在だったわけですが、そこからの脱皮・進化には、追従する俳優はいないと言ってもいいくらいでしょう。

『インタビュー・ウイズ・バンパイア』(’94)では、その美貌が話題を呼びました。90年代後半、ニコール・キッドマンがパートナーだった頃の数々の作品では出演のみならず、製作を手がけるようになりました。その芸術性や時代性を先取りするセンス、必ずヒットさせる企画力とビジネスマン的才能は輝くばかりで、目が離せない存在になっていきます。

俳優という才能に加えて、引きも切らずの、映画づくりへの情熱を傾ける姿はセクシーそのものではないしょうか。映画製作者としての独りよがりではなく、映画を楽しむ観客側の立場を忘れず、常に観客に「観たい!」と思わせるサービス精神も忘れない。

また、力のある監督やキャスト選びにも才能があり、キューブリックからスピルバーグまで、これぞと思う映画人がいれば躊躇なく組み、光っていると思う俳優がいれば、これまた臆さず起用。女優についても、二コール・キッドマンをはじめ、ぺネロぺ・クルスやマリアン・コティヤールなどの米国外の女優へのアプローチ感覚など、目のつけどころが、グッド・ジョブですね。(『ラスト・サムライ』の小雪もそうかもしれません……。)

***

トム・クルーズが単なるアイドルスターで終わらなかったのも、公私に糸目をつけない本気の映画への取り組みにあるのではないでしょうか。

例えば、映画に必要不可欠の女優には、妻や恋人を起用し引き立ててきました。『デイズ・オブ・サンダー』(’90 / トニー・スコット監督)で共演した二コール・キッドマンと結婚すれば、妻のための作品に全力投球、『アザーズ』(’01年 / アレハンドロ・アメナーバル監督・脚本)で、製作総指揮を自らとり、ゴールデングローブ主演女優賞ノミネートを勝ち取る。

スペイン映画『オープン・ユア・アイズ』(’97 / アレハンドロ・アメナーバル監督)でヒロインを演じたペネロペ・クルスとこの作品に着目するや、キッドマンとの離婚も顧みず?次なるミューズ、ぺネロぺのために、リメイク作品『バニラ・スカイ』(”01 / キャメロン・クロウl監督)を製作するというエネルギッシュかつ、エゴイスティックな映画人ぶりは、映画に賭ける男の人生を感じさせてなりません。

妻や恋人のための作品づくりだから、言わばプレゼントとして最高のものにしようと情熱を傾ける姿が、騎士道精神のようにも思え愛おしいです。

往年のハード・ボイルドの味わい
『アウトロー』

『ユージュアル・サスペクツ』(’95)の脚本家クリストファー・マッカリー監督と組んだ新作の『アウトロー』。3Dを効かせた作品が席巻する時代に、アナログ的な映画本来の良さが生かされて、知的な仕上がりです。

リー・チャイルドによる大ベストセラーが原作、元陸軍のエリート秘密捜査官、クレジットカードや免許書、携帯電話など身分を明かすものを一切持たないアウトロー・ヒーロージャック・リーチャー(トム・クルーズ)が、無差別銃乱射事件の真相を容疑者の弁護士 ヘレン(ロザムンド・パイク)とともに明かしていくというストーリー。

登場する俳優陣、車にいたるまでのディテールにこだわっているところは、往年のハード・ボイルド、フィルム・ノワールにも通じるところがあります。ヒッチコック作品をも彷彿とさせる、本格的ミステリー映画というものの醍醐味を思い出させてくれる貴重な作品になっています。

このあたりを狙い、新たな製作と出演に情熱を傾けるトム・クルーズの存在もまた、映画界では、稀有であるのです。

『ミッション:インポッシブル』シリーズでは、3分と言わずにインポッシブルな危機に見舞われるCIA工作員イーサンの超人的能力にうっとりさせられ、新作ごとにトムに惚れ直してしまいます。

反対に、言わば静謐な頭脳戦に挑む知的な超人ぶりを発揮するリーチャ―になりきった、新しいトムの魅力を見せつけるのが、『アウトロー』です。


新たなるアウトロー・ヒーロー、ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)。

ジャックとともに無差別銃乱射事件の真相を追う弁護士 ヘレン(ロザムンド・パイク)。
『アウトロー』来日記者会見より
「トムの映画にかける愛は感染する。」

最後に1月9日、ザ・リッツ・カールトン東京 2Fグランド・ボールルームで行われた『アウトロー』来日記者会見の模様から少々お伝えしましょう。

会見には、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー監督、ロザムンド・パイクが登場。クリストファー・マッカリー監督が「僕は、トムとは違って苦難の多いキャリア。映画が1本作れるということは、その影には作れない5本があったというような20年でした。だからトムとはじめて話をする時も、僕とは違う人種と会うんだと思って臨みました。しかし話してみると、映画作り、ストーリーテリングに関しての考え方がまったく同じだった。」と、トムと意気投合したこと、キャリア20 年にしてトムと出会えた幸せをクールな口調で語りました。


左からクリストファー・マッカリー監督、ロザムンド・パイク、トム・クルーズ。©2013 by Peter Brune

対してトムは「クリス(マッカリー監督)のスクリプトは素晴らしく、ともに映画好きで、会うといつも新しいストーリーを考えています。次回の『ミッション・インポッシブル』の監督もクリスと作ります。」と、MIシリーズの次回作について明かしました。また、今回の作品にはプロデューサーとしてのトムの意見がどれくらい反映されているか、との質問に「クリスのセンスを信じているのでキャスティングには口をはさまなかった」と、絶大な信頼関係をアピール。

またプロデューサーとしてのトムの印象について尋ねられたロザムンド・パイクは「30年のキャリア、専門知識があるにもかかわらず、常に学ぼうとする姿勢が素晴らしい。彼の映画にかける大きな愛はまわりに感染します。」とホットな現場の様子を伝えました。


車について喋りはじめたら止まらないトム・クルーズ。©2013 by Peter Brune

『アウトロー』
2013年2月1日(金)より丸の内ピカデリー他全国ロードショー

キャスト:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、リチャード・ジェンキンス、デヴィッド・オイェロウォ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ジェイ・コートニー、ジョセフ・シコラ、マイケル・レイモンド=ジェームズ、アレクシア・ファスト、ロバート・デュヴァル
監督・脚色:クリストファー・マッカリー
原作:リー・チャイルド
製作:トム・クルーズ、ドン・グレンジャー、ポーラ・ワグナー、ゲイリー・レヴィンソン
撮影:キャレブ・デシャネル
プロダクション・デザイン:ジェームズ・ビセル
衣装デザイン:スーザン・マシスン
編集:ケヴィン・スティット
音楽:ジョー・クレーマー

公式Facebook:http://www.facebook.com/outlaw.movie
公式Twitter:https://twitter.com/outlawmovie
©2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
2012 年/パラマウント映画/上映時間:2時間10分/7巻/シネマスコープ/5.1ch/11,731FT/3,575M