土屋孝元のお洒落奇譚。『ベニシアさんの四季の庭』を見て。庭は神様に一番近い場所。

(2013.08.31)

春夏秋冬、それぞれの季節にしかない美しさ。
飽きる事がありません。
この9月14日(土)公開になる映画『ベニシアさんの四季の庭』をひと足先に見てきました。

ベニシアさんは京都・大原に暮す英国人女性。NHKのテレビ番組『猫のしっぽカエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし』でも、そのエコライフが紹介されているのでご存知の方も多いかと思います。番組では、大原の築100年以上の古民家で英国庭園さながらのハーブや色とりどりの花を育て、それらを活用したフードや日用品を作ったり、地域の人々との親交を大原の四季折々の風景とともに描いています。こちらの映画は、これまでのベニシアさんの人生、その足跡、家族の歴史まで触れています。


ベニシア・スタンリー・スミスさんは英国貴族の家系の生まれ。19歳で世界を放浪する旅に出て、大原の山裾に佇む古民家にたどり着きます。

一番心に響いた言葉は、「庭は神様に一番近い場所」この一言でした。彼女の言葉は詩のようにも聞こえます。植物を世話していると、いろんな事を学びます。庭を人間が作ろうとしても、嵐が来たら、あっという間に全てが変わってしまう、植物をこう伸ばしたくとも、植物は言う事を聞かず、好きなように伸びてしまいます。

春夏秋冬、それぞれの季節にしかない美しさがあり、飽きる事はありません。

庭にぼーっといるだけでも、何か心が落ちつきます。この意味は僕も庭仕事をするので、よくわかります。庭仕事とは人生にも似ている様な気がするのですが……。良い時もあれば、だめな時もある、こりゃひどいな、ダメかもしれないなと諦めかけても、手をかけてあげると、きちんと再生して、素晴らしい姿をまた見せてくれる。 毎日毎日、日々変化して、また新しい発見を与えてくれる。

日本の高温多湿な気候では、イギリスのような気候と違い、いろいろな植物を混植して育てるのは、なかなか難しいものです。

 


ベニシアさんの植木鉢のバラと井戸。

我が家の庭でも、長年育てた薔薇達も最近の熱波の様な、この暑さで枯れたものもあります。

比較的元気なのは、やはり、デビット・オースチン ・イングリッシュローズですね。オールドローズでは難しいものもありました。「ロサ・ムンディ」など綺麗な花でしたが残念なことをしました。

暑さの中でも元気なのは「クレマチス・モンタナ」です、蔓を伸ばして元気一杯です。この蔓が伸びないと来年の春に花芽を持たないのです、冬には枯れ枝になってしまい、見た目は悪いのですが、花のためには我慢しなければなりません。

春に一斉に花を咲かせるためです。

 


ベニシアさんの籠。
昔ながらの生活スタイル
お婆さんの知恵をうまく生かして。

話を戻し、ベニシアさんはハーブを150種類ほど育てているようです。ヨーロッパでは中世以来、教会や修道院で薬としていろいろな使われ方をしていて、有名なあの、サンタマリアノベッラも薬草やハーブからいろいろな製品を作っています。今でも、その製法は変わっていないとか。僕も幾つかを使っていますが、なにしろ、日本で購入すると割高です。ベニシアさんのように自家製ができれば一番でしょうね。ベニシアさんは何でもハーブから作ってしまうようですね、食器用せっけん水も自家製で。シャンプーやトリートメントはもちろん、家具を磨くワックスまでも。

夏には紫蘇シロップを作り、炭酸で割って飲んでいるようでした。京都の大原あたりでは紫蘇が大量に取れるようなので、ご近所さんからのおすそ分けみたいです。ご近所付き合いで お互いの家を行き来する昔からの生活スタイル。それに比べ、最近の都会では、ご近所付き合いも希薄になり、隣は何をする人ぞ なんて感じです。

ベニシアさんも言っていましたが、昔の日本のお婆さんの知恵をうまく生かさないといけないなと、思いました。日本には春夏秋冬があり、厳しい自然をうまく利用してきた昔ながらの生活スタイルがあります。それを今の時代に合わせて少しずつ改良を加え、暮らしていければ良いのかなと、思います。

今年の夏はとりわけ暑いですが、暑さに負けずに過ごしたいものです。


ベニシアさんはハーブを使ってシャンプー、トリートメント、家具を磨くワックスまでなんでも作ってしまいます。
『ベニシアさんの四季の庭』

2013年9月14日(土)、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロードショー


『ベニシアさんの四季の庭』より。©ベニシア四季の庭製作委員会2013
出演:ベニシア・スタンリー・スミス / 梶山正 他
監督:菅原和彦 
製作:NHKエンタープライズ / テレコムスタッフ / 朝日新聞社
制作プロダクション:テレコムスタッフ
配給:テレコムスタッフ / NHKエンタープライズ
配給協力・宣伝:クレストインターナショナル

2013年 / 日本 / 98分 / デジタル / カラー / 16:9

●関連イベント●
『ベニシアと仲間たち展
~猫のしっぽ カエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし~』

ベニシアさんのライフスタイルを紹介するイベントが開催されます。四季のエッセイやイラスト、写真と映像のほか、食卓のしつらえ、お庭を再現。京都で出会った職人さんたち、ものづくりにかかわる人々などベニシアさんの仲間たちも登場します。

会期:2013年9月11日(水)~9月24日(火)
時間:最終日~17:00閉場、入場は閉場の30分前まで
会場:松屋 銀座(東京都中央区銀座3-6-1)
入場料:一般 1000円、高大生 700円 中学生以下 無料、一般前売券700円、高大生前売券400円
(チケットぴあ、ローソンチケット、セブンイレブンにて9月10日まで販売。
Pコード765-749/Lコード39929/セブンコード023-966)