オリンピックでは惜しくも銀メダルに終わったなでしこジャパン。昨年、感動的な優勝を飾ったのはドイツで開催されたワールドカップでしたね。ドイツといえば、FIFAランキングでは常に上位。世界を代 表するサッカー大国として知られています。しかし19世紀末のドイツでは反英感情が根強く 、イギリスで生まれたサッカーは「反社会的」なものとされていたのです。

1874年、帝政ドイツの歴史ある都市ブラウンシュヴァイクの名門学校カタリネウム校に若き英語教師、コンラート・コッホ（ダニエル・ブリュール）が赴任してきます。コンラート・コッホは後に< ドイツ・サッカーの父>と呼ばれる実在の人物。コッホは、イギリス=英語に対する生徒たちの強い偏見と無関心さを見て、授業にサッカーをとりいれることにします。

コッホがイギリスから持ち帰ったサッカー・ボールを蹴ってみせると、最初は驚きまじりだった生徒たちがどんどんサッカーに惹きこまれていきます。貧しいがゆえに級友たちからなにかといじめられているちびっ子、ヨスト（アドリアン・ムーア）が、ストライカーとしての才能を見せたり、スポーツ用品店の太っちょな息子オットー（ティル・バレンティン・ウィンター）は、なみなみならぬ熱意で、独自のサッカーボールの開発をはじめます。

当時のドイツの教育では秩序と規律、服従が重んじらられ、個性と自発性を発揮するサッカーは、「反社会的」なゲームとみなされていたのに加えて、参観に来た牧師の股間にサッカーボールが命中してしまう事件で、サッカーは禁止になってしまいます。

地元の名士の息子で級長のフェリックス（テオ・トレブス）は、サッカーで活躍するヨストをいじめますが、教室のみんなが、学校のあと集まる草サッカーには、行きたくてウズウズ。しかし、この草サッカーは学校には内緒。果たしてこの秘密はいつまで保つことができるのか……。

19世紀末ドイツの緑豊かな田園風景の中で、サッカーに興じる個性豊かな少年たちのみずみずしさ。クラシカルなファッション・アイテム、誰もが知っているスコットランド民謡『Auld Lang Syne』（蛍の光）印象的な楽曲。規律に縛られた暮らしをしていた少年たちが、真の教育を授けようとする教師の熱意に触れ、笑顔を取り戻すまでの成長を描いた、サッカー黎明期にまつわる感動のストーリーを、やわらかな印象の映像で描いた秀作です。