土屋孝元のお洒落奇譚。フランソワ・オランはネクタイフェチだった。

(2011.01.18)

昔見たフランス映画で『HO!(オー)』という映画、印象深く覚えています。
かの名優ジャン・ポール・ベルモンドが主役でした。
彼はレーサーなのですが、
レース中の事故で友人のレーサーを事故死させてしまい、
ライセンスを剥奪され、生活のために強盗団の運転手をやっています、彼女には内緒で。
そして簡単に捕まって刑務所に入るのですが、
ひょんな事から脱獄し、
「ルパン+アルカポネ=フランソワ・オラン」
と新聞に書かれ、有頂天になってしまいます。
この間に彼女には逃げられるのですが。
(ジョアンナ・シムカスがまた良い感じで、いい女、フランス女優ここに在りでした)

©Takayoshi Tsuchiya

彼はかなりの洒落者で、
ネクタイに異常な執着を見せていて、
たしか、ネクタイを300本ぐらい所有していたと思います。
記憶は定かではありませんが……。
そして映画の最後に警察に逮捕されるシーンでも、
ネクタイにこだわるのです。
ウィンドウに映る自分の姿を見てネクタイの染みか汚れを見つけ、
すぐに近くの洋品店へ入りネクタイを選び、付け替えている途中、見つかり、
警官に撃たれてしまうのです。
その後はご想像にお任せいたします。

話の筋は大体こんな感じでしたが、
「フランソワ・オラン 」彼の役名です、
これ程ではないにしろネクタイを僕も好きで集めた時期がありました。

『エルメス』のボウタイやネクタイ(有名なスカーフ柄のもの)や『グッチ』、『シャネル』、
『ラルフ ローレン』のブランド物から、
素材が好きでアイリッシュポプリンのレジメンタル(日本橋の『丸善』で扱っていました)とか、
イタリアの『リッキー』の物、ゼニアや、アルマーニ、ナポリの洋品店『キトン』の物、
いろいろとありましたが、今では『リッキー』のネクタイ、レジメンタルがメインです。

いつも、シャツがストライプなので、レジメンタル&ストライプです。
こだわっている訳でもないのですが、自然と手が伸びてしまうという感じですね。

©Takayoshi Tsuchiya

いままで見た映画の中でもネクタイがいいなあと思うシーンはいくつかありました。
例えば、ジャン・ギャバンのトレンチコートに黒い(モノクロなので色が特定できません)ネクタイ。
アラン・ドロンはいつも、ギャング役では ダークスーツに白いシャツ、黒いネクタイでした。
マルチェロ・マストロヤンニも『バールに火がともる頃』で
息子を心配して会いにきた父親役で、
ちょっと冴えないジャケットによれた感じの白いシャツにダークな無地のネクタイ姿でした。

映画の中では、教授役は大抵、黒いニットタイにマドラスチェックか
ギンガムチェックのシャツというファッションが多いですね。
『ジュラシックパーク』のプロフェッサーや、『デイアフタートゥモロー』の教授。

先輩の故有元利夫さんも僕達が大学生の頃、芸大助手時代、
黒のニットタイにマドラスチェックのシャツ、チノパン姿でした、
今でもその姿が目に浮かびます。
そうそうスティーブ・マックイーンも黒のニットタイ姿が多かったように思います。
有名なルパン三世もいつも ダークな無地のネクタイ姿です。

こうして考えてみるとアウトローはブラックスーツにダークかまたは、
ブラックの無地のネクタイが主流ですね。

©Takayoshi Tsuchiya

かたや、ニューヨークのヤッピー、または、WASPはレジメンタル姿でしょうか。
弁護士役のトム・クルーズやウォール街のカーク・ダグラス。
レジメンタルとはイギリスの軍隊での連隊を表す連帯旗の印で、
よく見ると微妙に違いがあります。
正式には左から右へ流れるモノですね、
これ以外にはケンブリッジ、オックスフォード、ハーバード、エール、など、
大学により違うものもあります。
こちらは「クラブタイ」と呼び、逆に右から左へと流れます。

女性がネクタイを選ぶのには、選ぶ本人をイメージして、いつもどの様なスーツが多いのか、
いつもどんなシャツを着ていたかを考えて、
プリント柄なら一般的には細かい柄で暗い所で見るとブラックとか、ダークに見え
少し地味なくらいのものか、逆に綺麗な、鮮やかな色の無地、
または、無地に見えるモノなど、は、いかがでしょうか。
ストライプシャツにレジメンタルタイは平凡にもなりやすく、
組み合わせにより、かなりお洒落にもなります。
ブルース・ウェーバーが撮影した『ラルフ ローレン』の広告で、
このストライプ&レジメンタルの素晴らしくセンス良い組み合わせを見た事がありました。
あくまでも個人的な趣味ですから、あしからず。