『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2011』 映画を愛する人たちが集まる寒くてあったかい映画祭。

(2011.03.10)

去る2011年2月24〜28日(木〜月)北海道夕張市で開催された『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2011』。

今年で第21回となるこの映画祭に、2月26、27日(土日)の2日間参加して来ました。ゆうばりの街の様子とともに、この映画祭の魅力をご紹介します。

『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2011』の上映ラインナップは、話題の新作映画を集めた招待作品、若手監督の登竜門となっているオフシアター・コンペティション部門、バラエティ豊かなコアな作品を選出したフォアキャスト部門の3つ。そのほかにもスペシャルプログラムやイベントが多数開催されています。

「ゆうばりファンタパスポート」(2000円)があれば、期間中の上映作品がすべて見られます。(但しオープニング作品及びクロージング作品、パーティは除く)

メイン会場前通路の大看板。 all photos / reico watanabe

 

 

まず、映画祭のメイン会場となるのは、旧夕張市民会館の『アディーレ会館ゆうばり』です。

「ようこそ映画のある街ゆうばりへ!」という大看板や旗がたなびく通路を進むと、今年の映画祭のポスタービジュアルである大きく口を開けた黄色の熊をかたどったゲートがお出迎え。エントランス前では、ちょうど審査員の片桐はいりさんや多数の映画祭ゲストが勢ぞろいして、フォトセッションが行われていました。

 

 

中に入ると、ロビーでは映画祭の公式USTREAMの収録が行われ、夕張の人気キャラクターの「メロン熊」も取材を受けています。
 

映画祭ユースト撮影風景。いちばん左が「メロン熊」。
ゆうばりキネマ街道。

 

 

作品の上映は、『アディーレ会館ゆうばり』以外に、『ゆうばりホテル シューパロ』 嶺水の間、『ホテルマウントレースイ』パインほか、夕張商工会議所や清水沢小学校などでも行われます。

『アディーレ会館ゆうばり』と『ゆうばりホテル シューパロ』を結ぶ「ゆうばりキネマ街道」沿いには、その名にふさわしく、そこかしこに懐かしの名画の看板が立ち並んでいます。最近では街頭ビジョンにすっかり取って代わられて、なかなかお目にかかることのできない職人技。なんとも味わい深い光景です。


雪に覆われた街のそこかしこに懐かしの名画の看板たちが。

 

 

 

街道の途中には『ふるさと亭』という名の屋台があり、アツアツのホタテをいただくことが出来ます。

『ふるさと亭』のホタテ。アツアツです。

 

 

『ゆうばりホテル シューパロ』会場では、スカパー!映画部presents『井筒和幸のホメシネ』公開収録inゆうばりがシューパロ・ライムライトにて行われ、客席は溢れんばかり。

スカパー!映画部presents『井筒和幸のホメシネ』公開収録inゆうばり。

 

 

日没後は、いよいよゆうばり名物ストーブパーティ! 

凍える寒さの中、モクモクと立ち上がるのは、カニ汁の巨大な鍋の湯気。新鮮な魚介類やジンギスカンから珍しい鹿肉までもが地元の方々によって振舞われ、映画祭ゲストも観客も一緒になって暖を取ります。

ゆうばり名物ストーブパーティ!

巨大鍋でカニ汁や、魚介類、ジンギスカン、そのほか珍しい鹿肉が振舞われます。

 

 

夜には『ゆうばりホテル シューパロ』 嶺水の間にて4名の監督によるオムニバス映画『シティボーイズのFilm noir』が上映され、大竹まことさん、きたろうさん、斉木しげるさんの他、沖田修一監督と福田雄一監督が登壇し、絶妙なトークに会場は沸き立ちました。

夜な夜な映画談義が繰り広げられる近隣の飲食店の壁には、ゆうばりを訪れた歴代のゲストが書き残した数々のサインが所狭しと飾られて、映画祭の歴史が伝わってきます。

左から映画祭の会場である『ゆうばりホテル シューパロ』 エントランス、
商工会議所会場エントランス、会場近隣の飲食店の壁のサイン。

 

 

翌27日に『アディーレ会館ゆうばり』大ホールで大林宣彦監督劇場映画デビュー作『HOUSE/ハウス』が凱旋上映された際には、映画のイメージビジュアルによる入口が特設され、まるでテーマパークのよう。上映後のトークも客席からの質問が次々と寄せられるほどの白熱ぶりを見せていました。

大林宣彦監督劇場映画デビュー作『HOUSE/ハウス』が
凱旋上映されました。

ゆうばりの街で2日間を過ごしてみて驚いたのは、その天気の変わりやすさ。ついさっきまで日が差していたかと思えば、どこからともなく雪が舞い落ち、あっというまに吹雪で前が見えなくなるほど。それは、雪国の美しさと厳しさを身をもって知る貴重な体験でした。

メイン会場大林宣彦監督トーク。

オフシアター・コンペティション部門のグランプリを韓国のオ・ヨンドゥ監督のSF映画『エイリアン・ビキニの侵略』が受賞し今年も幕を閉じたゆうばり国際ファンタスティック映画祭。

会期中は複数の会場で同時に上映が行われ、観たい作品やイベントが重なってしまうという悩ましさもありますが、ほとんどの観客が近隣のホテルや宿に宿泊しながら参加していることから、時間を気にせず朝から夜中までどっぷり映画に浸かることができます。

フォアキャスト部門に出品されていた内田伸輝監督作品『ふゆの獣』を夕張商工会議所会場で観ましたが、昨年の『東京フィルメックス』コンペティション部門の最優秀作品賞を受賞した話題作ということもあり、会場は満席で立ち見が出るほど。奇妙な四角関係に陥った男女のやりとりをテーマにした本作は、プロットのみでほぼ役者の即興によって展開しますが、感情むきだしの緊迫感とユーモアによる弛緩のバランスが実に見事。上映後に直接出演者に感想を伝えたり質問ができたりするのも、アットホームなこの映画祭の醍醐味です。

映画祭期間中になぜかあちこちで耳にして印象に残ったのは「お金のためだけじゃなく、人生は楽しむためにある」という言葉。その楽しみの中で映画が大きな割合を占めている人たちが、毎年参加している映画祭なのです。

2日間が一週間分くらいの密度の濃さに感じられたのも、東京で暮らすわたしにとって非日常となる空間で、映画を愛する人たちと同じ時を共有している一体感を味わえたから。この冬一番の寒さの中、心温まる忘れられない思い出となりました。

 

『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2011』
http://yubarifanta.com/