『セレステ∞ジェシー』 正しいだけじゃ、ダメかしら?
LA版『最高の離婚』の行方。

(2013.05.24)

一見仲良さそう、でも別居中。
不思議夫婦セレステ&ジェシー。

いよいよ5月25日(土)より渋谷・シネクイントほかにて順次公開となる映画『セレステ∞ジェシー』。

サンダンス映画祭で上映され、わずか4館の限定公開から586館までの拡大公開で大ヒット! と聞いて、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督『リトル・ミス・サンシャイン』(’06)を思い浮かべ、一見すると仲むつまじい二人が、実は「離婚を前提に別居中」というシチュエーションから、さきごろまで放映されていたドラマ『最高の離婚』をイメージしたのは、きっと私だけではないはず。

『最高の離婚』では、瑛太×尾野真千子、綾野剛×真木よう子による二組の夫婦が「離婚」を巡ってリアルな会話の応酬を繰り広げていました。こちらの『セレステ∞ジェシー』のお話も、お互いをわかりあってる夫婦のユーモアたっぷりな会話が面白い作品です。


4館の限定公開から586館までの拡大公開で大ヒットの『セレステ∞ジェシー』© C & J Forever, LLC.All rights reserved.

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笑いのセンスや、音楽の趣味もぴったりで、いつも一緒にいる結婚5年目の夫婦セレステとジェシー。傍目には理想の夫婦にうつるけれど、トレンド予測家としてメディアで活躍し、本の執筆やコンサルティングを手掛け、充実した日々を送る自信たっぷりのセレステは、いつまでもうだつの上がらないアーティスト志望のジェシーに見切りをつけ、「永遠に親友でいるために」離婚を決意。とはいえ、未練たらたらのジェシーと同じ敷地内に暮らし、これまでと変わらぬ距離感を保とうとしています。ところがある日、ジェシーから衝撃の告白を受けたセレステは、動揺を隠せず、ヨガやランニングで気を紛らわせ、心配した友人らに次々とイケメンセレブを紹介してもらうも、結局お酒に走ってボロボロに。一方のジェシーは、自分を取り巻く環境の変化に戸惑いながらも、新たな生活にむけて確実に進み始めるのです。果たして二人の運命の行き先は……!?


トレンド予測家としてメディアで活躍するほか、本の執筆やコンサルティングを手掛け、充実した日々を送る自信たっぷりのセレステ(ラシダ・ジョーンズ)。

主人公セレステを演じるのは、クインシー・ジョーンズの娘で、女優・モデルとして活躍し、米ピープル誌で「世界で最も美しい女性」に選出されるなど、非常に高い注目を浴びるラシダ・ジョーンズ。本作では友人のスキルツ役を演じたウィル・マコーマックとともに共同脚本と製作総指揮を手掛けています。ジェシー役には、コメディアンとして『サタデー・ナイト・ライブ』にレギュラーとして出演し、圧倒的な人気を誇るアンディ・サムバーグ。

注目すべきは、セレステを支えるゲイの同僚スコットを『ロード・オブ・ザ・リング』のイライジャ・ウッドが務め、若者のポップスターのライリーを、ジュリア・ロバーツの姪っ子エマ・ロバーツが、天性の素養たっぷりに演じるという配役の巧みさ。

セレステやライリーがラフに着こなすLAのストリートファッションも見どころの一つとなっています。


セレステはアーティスト志望のジェシー(左・アンディ・サムバーグ、)に見切りをつけ「永遠に親友でいるために」離婚を決意。ジェシーやセレステを励ましつつちょっかいを出すスキルツ(右・ウィル・マコーマック)

セレステの話を聞きながらゲイならではのコメントをする同僚スコット(イライジャ・ウッド)。

セレステの顧客であるポップスター ライリー(エマ・ロバーツ)は、セレステの上から目線をばっさり。
ラシダの実体験がベース
楽しいふたりの会話。

監督のリー・トランド・クリーガーは、CMやミュージック・ビデオを数多く手掛けているだけあり、リリー・アレンが「無理みたい 思い出を捨てるなんて」と、切なく歌う『リトレスト・シングス』のメロディーに乗せて、セレステとジェシーのハッピーな思い出をつないだ映像をオープニングに持ってくる手腕と、シーンにぴったりと合った音楽のセレクトはさすがです。

長く付き合ったカップルならではの、ユーモアとウィットに富んだ会話の数々は、ウディ・アレンとダイアン・キートンの『アニー・ホール』を彷彿とさせ、男女のすれ違いの深刻さは、ミランダ・ジュライの『ザ・フューチャー』が描く二人とどこか重なる本作。

ラシダの実体験をベースに書かれたという脚本には、シリアスなシーンでさえ、つい冗談を挟んでしまったり、合言葉のような共通のポーズや、お決まりの下ネタを随所に散りばめたりすることで、二人の絆の強さが表現されています。

 

常に「上から目線」の態度のセレステ
大切なものを失いかけて。

常に「上から目線」の態度が鼻につくセレステを、バッド・ガールな雰囲気を漂わせるライリーが、「人より賢いと思っているところが致命的」とばっさり切り捨てたり、ところどころに垣間見えるゲイカルチャーが、典型に収まりがちなラブストーリーのスパイスになっています。

列に横入りする人を許せなかったり、「私の分野じゃないから興味ない」と、別の選択肢を切り捨ててきたセレステが、大切なものを失いかけて、「そうじゃなかったかも…」と自分の尺度を疑い始める『セレステ∞ジェシー』。正義感を振りかざしたり、自己正当化だけで突っ走ってきた過去のある人には、きっと痛いほど刺さる映画です。


ジェシーから衝撃の告白を受けたセレステは、お酒に走ってボロボロ。一体、どうなるの?
『セレステ∞ジェシー』

2013年5月25日(土)よりシネクイントほか全国ロードショー

出演:ラシダ・ジョーンズ、アンディ・サムバーグ、アリ・グレイナー、エリック・クリスチャン・オルセン、ウィル・マコーマック、クリス・メッシーナ、レベッカ・ダヤン、イライジャ・ウッド、エマ・ロバーツ
監督:リー・トランド・クリーガー
脚本:ラシダ・ジョーンズ/ウィル・マコーマック
製作:リー・ネルソン/ジェニファー・トッド/スザンヌ・トッド/リー・ネルソン
製作総指揮:ラシダ・ジョーンズ/ウィル・マコーマック
撮影:ダヴィッド・ランゼンバーグ
プロダクション・デザイン:イアン・フィリップス
サニー・レヴィン&ザック・カウイ(BIGGEST CRUSH)
編集:ヤナ・ゴースカヤ
衣装デザイン:ジュリア・キャストン
原題:CELESTE AND JESSE FOREVER
提供:クロックワークス、パルコ 配給:クロックワークス
2012年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/ 92分/
© C & J Forever, LLC.All rights reserved.