mic Cinema Diary – 2 - たいへん! このままだと水は足りなくなります! 映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』を見て考えましょう。

(2010.01.23)

1月某日、UPLINKのキュートな宣伝ウーマンTさんから「水戦争に迫ったドキュメンタリー映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』のサム・ボッゾ監督、のインタビューいかがでしょうか? 本作オススメです!」とご連絡を頂く。

魚座&かつては水商売、じゃなくて水泳部だった私は、水には興味津々。
「ぜひ!」と、あまり意味もわからぬまま引き受けてしまった。

早速作品を拝見してみると、「ここまでとは・・・。」と愕然。世界で起こりつつある“水戦争”の実態を知ることに。

映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』は地球規模で水資源(BLUE)をビジネス(GOLD)にしようとするグローバル企業から、身近なペットボトルの水を巡る問題まで、世界で起きている様々な“水戦争”の実態に迫ったドキュメンタリー。

日本ではあまり話題になっていないが、今後の世界の人口増加を考えると水資源は足りなくなるらしい。20世紀が“石油戦争”の時代だとしたら、21世紀は“水戦争”の時代になると言われている。
近い将来、「最近、水の値段があがって困るわよね~。」「ほんと!我が家は観葉植物育てるのあきらめちゃった!」……みたいな切ない会話が交わされるかも知れない。いや、もっと切実で、生死に関わる問題にまで発展するやも知れないのだ。

とはいえ、夜にお風呂に入っても、朝からシャワーを浴びてしまう不届き者の私は一体どうすれば?そんな疑問を抱えながら、いざ、サム・ボッゾ監督とご対面。
さて、どんなインタビューに!?

一緒に記念撮影。この時、SIGG×映画オリジナル水筒(とってもキュート!)を初めてご覧になりご満悦。アップリンクファクトリー他で購入できます! 
サム・ボッゾ監督。

mic テーマが水戦争だったので、正直私に理解できるか不安でした。でも見ているうちに引き込まれていって・・・」
監督 うん、これは、一般の人にもわかってもらえるようにと思って作ったから、そう言ってもらえると嬉しいよ。」
mic 「それにしても、これだけ内容の詰まった作品となれば、膨大なリサーチが必要だったでしょう。気が遠くなりませんでしたか?」(リサーチ苦手な私・・・・・・)

監督 最初、調べ始めた時は、まさかこんなに数多くの問題が取り巻いているとは思っていなかったんだ。最初からこんなに問題があるとわかっていたらできなかったと思うよ(笑)。」

自分の国の政治家たちが、水に対してどんな意識を持っているかを知ろう。

mic 「本作を撮ったことで、監督ご自身の生活は変わりましたか?」

監督 家族の中で、水を扱うこと、例えばシャワーを使ったり洗濯をしたり・・・を意識するようになったかな。ただ僕は、この作品で、一般の人が水を扱う時に「私は無駄遣いをしている!」と思ってほしい、と言いたいのではないんだ。
今、利用されている水の中で一般家庭が使う率は10%程度。そのほかは企業や国。その彼らの使い方に問題がある。その事実を知ってほしい。

その上で、自分の国の政治家たちが、水に対してどんな意識を持っているかを知り、「その考えが正しい」と思える政治家に1票を投じる。それが大切なんじゃないかな。」

mic 「あぁ、なるほど! そう、そうなんですよ!(やや興奮)。もちろん個人が水を大切に扱うことは大事だと思うんですけど、でも時々、それって世界から考えると微々たるものなんだよな・・・って思いが浮かんできて・・・そうか、そんな思いを政治家に託すという手があったんですよね。」(日本の政治家の方々はどんな考えを持っているのだろう・・・と思いつつ。)

当初の疑問が少し解消されると、次はシネマスタイリストとして聞きたいことがふつふつと……。

mic ナレーターは何と「時計じかけのオレンジ」のアレックス役で有名なマイケル・マクダウェルが務めていますね?アレックスのイメージが強いだけにビックリしました!」

監督 今回のプロデューサーが『時計仕掛けのオレンジ』のエグゼクティブプロデューサーでもあるサイ・リトビノフでね、彼がマルコムを紹介してくれたんだ。(本作の誕生秘話は、公式サイトで!)

僕は、本作は、右か左かといった政治的なことではなく、世界的に大切なテーマだと思ったので、政治的立場をとっていない、リベラルな意見を持った人がいいと思っていた。

マルコムは、「スタートレック」や『時計仕掛けのオレンジ』での役柄が有名で、政治的なイメージがないのでいいなと思ってね。

でも、後から聞いた話なんだけど、彼は『タンクガール』という映画で、水を支配しようとする悪役のボスを演じているらしいんだ。面白いだろ(ニンマリ)?」

mic あは、あはははは・・・。確かにハマり役かも……。」

マルコム・マクドゥエルのナレーションはノーギャラ!?

mic 彼のナレーションが非常にフラットな口調だったので、逆に作品に入り込みやすかったです。」

監督 僕自身、脚本を書くにあたって、自分の意見を主張するのではなく、事実を淡々と述べようと思った。それに、ナレーションは様々な人のインタビューをつなぐ橋渡しの役も担わなくてはならない。そう考えると、そこには感情の起伏は必要ないと思ったんだ。

彼は役者として非常にダイナミックなイメージがあるから、観客は彼の声を聞くだけで、
そのナレーションをダイナミックに受け止めてくれると確信していた。

だから、彼には「感情過多にならず普通に読んでほしい。」とお願いしたよ。
特に「戦争など感情的になりそうなシーンでも冷静に読んで。」ってね。

そうそう、ひとつ面白いエピソードがあるんだけど、話してもいいかな?

mic 「ええ、もちろん!」

監督 マルコムがナレーションを引き受けてくれる事になって、打ち合わせができる日が翌日しかない事がわかったんだ。彼の住まいは、ロスから車で3時間北に上ったところ。僕は急いで出発したのはいいけれど、途中でガソリンが足りないことに気づいた。でも、本作を作るために貯金を使い果たしていたから、銀行にはほんの少ししかお金が残っていない。でも、ナレーションを引き受けてくれるからには、ランチくらい奢りたいし、何よりも僕はマルコムの大ファンだったから『時計仕掛けのオレンジ』のエピソードも聞いてみたい。でも、それでランチを奢ってしまうと、僕はガソリンが足りなくて、家に帰れないかも知れない。ランチを取るか、ガソリンを取るか、あぁ、ドキュメンタリー作家って何て大変な究極の選択をしなければならないんだろうって思ったよ(笑)。」

mic で、どっちを取ったの!? (興味津々すぎてもはや友達口調)

監督 ランチを取ったよ。そして色んな話をすることが出来た。しかも、ガソリンも切れずに何とか家まで帰れたんだ。

mic わ、すごい!それは映画の神様がきっと味方してくれたのだわ!

監督 あはは、きっとそうだね。

mic ところでマルコム自身は、実際問題、環境に興味があるの?(まだ友達口調)

監督 うーん、詳しい所まではわからないけれど、彼は脚本を読んで、これは世界にとって非常に重要なことだから、と言って仕事を引き受けてくれたんだ。しかも、ノーギャラでね。

mic わ、すごい!アレックスなのに(笑)! ところで、本国での反応は?

監督 マスコミの反応は非常に良かったんだ。誰もが素晴らしいと評価してくれた。
ただし、ネットで一般の人達が投票するサイトがあるんだけれど、そこでは、星1つか星5つかのどちらかに大きく分かれていたね。」

mic 私は、個人的には★3つが並ぶ作品よりも、1か5の両極に別れている方が、映画としては成功なのかなと思ったりします。」(トル やっと落ち着きを取り戻す私)

監督 うん、僕もそう思う。★3つって事は結局どっちでもいいって事なんだよ。僕はどうでもいい映画は作りたくなかったから。」

最後に、私自身、ひとり芝居公演の際には、脚本・出演・衣装・選曲を担うので、本作で脚本・撮影etcご自身で手がけた監督にどうしても聞いてみたいことが。

mic ひとりで全部作ることって監督にとってはどういうことですか?

監督 ハリウッドのように、プロデューサーという“ビジネスマン”がいて、脚本家や監督、出演者を選ぶというシステムだと、つまらない映画が出来ちゃうよね(笑)。
僕自身、自分が撮った作品を別の人間が編集してつまらないモノになってしまった経験が何度もあった。でも、脚本から全て手がけるということは、すべて自分が自由に出来る。それは僕にとって、とっても大切なことなんだよ。」

あ~っ。おこがましいようだけど、わかります。自分が伝えたいことを、きちんと届けたいと思うと、やっぱり全てが自由であるって大事なんですよね。

確かに、本作ではちょっぴり難しい事柄を説明するにも、可愛い女の子が登場して、アニメーションを使って表現していたりと、監督ならではの愛情が随所に表れている。

冒頭で、監督は一般の方にわかってもらえる為に作ったと言っているけれど、それだけじゃない。
現在7歳になる息子さんの為に作った作品でもあるのだ。

水は、いつの時代、どの場所にあっても必要不可欠なもの。

そういえば以前、インド旅行に訪れた時、きれいな水が出ることの方が珍しかった。
帰国して、シャワーから水がほとばしった時は思わず「ウォーター!」と、ヘレン・ケラーもびっくりな勢いで叫んでしまったのを覚えている。

日本でも、エコブームが定着しつつあるけれど、自分の今ある環境が“当たり前”じゃないって事を知ること、そんな意識の変化から、自身の生活も変わっていくんじゃないかなぁと思った。

そして、その生活はきっと感謝に満ちたものに、果ては自身の幸せ、家族の幸せにつながっていくのではないかしら、と。

「息子の為に本作を作ったんだけど、こうして忙しくなって一緒に遊ぶ時間が少なくなると、息子はこの映画が嫌いって言いだすんだ。」と笑っていたサム・ボッゾ監督。この時ばかりはすっかりパパの顔に。自分達の未来のために、私たちが出来ることは、まず知ることからなんですね、きっと。

 

 

ブルー・ゴールド 狙われた水の真実
http://www.uplink.co.jp/bluegold/
監督:サム・ボッゾ
出演:モード・バーロウ、トニー・クラーク、ヴァンダナ・シヴァ、ミハル・クラフチーク、ウェノナ・ホータ
ナレーション:マルコム・マクダウェル

2010年1月16日より渋谷アップリンク、ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開
2008, アメリカ, アップリンク