『日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。』プロジェクト 『晩春』修復をサポートする
クラウドファンディング。

(2014.02.13)

世界的に再認識が高まる小津安二郎監督。名作『晩春』のデジタル修復をクラウドファンディング『READYFOR?(レディフォー) 』でサポートするプロジェクトがいよいよ大詰めを迎えています。その企画のきっかけ、世界的な小津ブームの要因、プロジェクトの仕組みについて松竹株式会社 メディア事業部 森口和則さんに教えていただきました。

映画『晩春』デジタル修復プロジェクト
『日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。』のきっかけ。
これまでに『松竹』はNHKや東京国立近代美術館フィルムセンターと共同で、小津安二郎監督作品のデジタル修復をしてきました。まず2011年に『東京物語』(’53)。小津監督生誕110年没後50年記念の2013年にはカラー作品『秋刀魚の味』(’62)、『彼岸花』(’58)、『秋日和』(’60)、『お早よう』(’59)をデジタル修復しました。

2013年、これらの作品が世界三大映画祭で相次いで上映されました。『東京物語』はベルリン国際映画祭で、『秋刀魚の味』はカンヌ国際映画祭、『彼岸花』はヴェネチア国際映画祭で上映されたのです。『秋日和』も先日、ベルリン国際映画祭に出品。『お早よう』の修復作品についてはこの2014年上映の映画祭を選考中です。
 
世界三大映画祭での上映をきっかけに『20世紀FOX』、『ソニー・ピクチャーズ』などを始めとするアメリカのスタジオと多く仕事をしているNY拠点の世界的な修復ラボ 『シネリック(CINERIC)』 の方々と知り合いました。『シネリック(CINERIC)』 はこれまでに『王様とわたし』(’56)、『博士の異常な愛情』(’63)の修復も手がけています。彼らとの話し合いの中で『晩春』(’49)の修復作業に取り組もうということになりました。


小津安二郎監督『晩春』(’49)より。 ©1949松竹株式会社

現在、テスト修復をニューヨークで行っていますが、手順としては、小津作品に実際に携わった方々に監修をお願いして、以下の予定で進めています。
• 4Kスキャン(1フレーム毎、特殊なスキャナーで行う)
• 4K修復(専門技術とソフトによるデジタル修復)
• 4K上映素材制作(DCP/デジタルシネマパッケージ)

35mmフィルムはデジタルでいえば「4K」に相当すると言われています。これまでの方式では、4Kの解像度でスキャニングをし、2Kでデジタル修復するクオリティでしたが、今回『晩春』で行おうとしている取り組みでは、4Kでスキャニングしたものを4Kのクオリティで修復するというものです。スキャンと修復は、映画は1秒24フレームなので、1時間48分だと、約155,000フレームの画像に、日米のスタッフで取り組むことになります。修復作業は、本年中には完成させたいと思っています。昨今、色々な映画がデジタル修復されていますが『松竹』ではこの映画『晩春』デジタル修復プロジェクト『日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。』に特に力を入れています。

小津安二郎監督作品の再認識が
世界的になされているワケ。


世界的に小津監督作品の再認識が高まっている理由のひとつは、世界でクラシック映画への注目が高まってきていることだと思います。デジタル修復技術の向上により、かつては非常に時間と経費がかかるか、そもそも不可能だった、クラシック映画の修復ができるようになりました。それにより、世界の主要映画祭で、特集上映される機会も増えてきています。

更には2012年、英国映画協会発行の『サイト・アンド・サウンド( Sight & Sound )』誌が発表した世界の映画監督358人が投票で決める最も優れた映画で『東京物語』が1位に、批評家846人の投票では3位に選ばれたことも一因であると思います。

小津監督作品が長く世界中で愛されているのは、“家族”という普遍的なものを描いているからだと思います。また観客が鑑賞するその時の年齢で受け取り方が大きく変わり、鑑賞する程に新しい発見があることも大きな要因だと思います。


今回デジタル・リマスターされる『晩春』は小津監督の代表作の一つです。『シネリック(CINERIC)』社との協議の中でも、要望が高く、また、2013年1月に日本で調査をした結果でも、白黒の作品では『東京物語』に次いで人気のあった作品です。小津作品のデジタル修復は、『東京物語』に始まり、元小津組のスタッフの方に監修頂ける機会が実現できました。それによりカラーの4作品『秋刀魚の味』『彼岸花』『秋日和』『お早よう』完成させることができ、次は『晩春』をという話になりました。


小津安二郎監督『晩春』(’49)より。 ©1949松竹株式会社

プロジェクトのサポートは
クラウドファウンディングで

このデジタル修復の資金の一部の調達をサポートいただくプロジェクト『日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。』を、クラウドファンディング『READYFOR?(レディフォー) 』にて実施中です。国内外の方々に『晩春』の素晴らしさを伝え、保存するプロジェクトにご参加をお願いするもので一口3,000円、10,000円、30,000円、50,000円、100,000円でサポートいただきます。

デジタル修復された『晩春』は2014年以降、世界各地の映画祭や映画館で上映されます。また、サポーターの方々は支援額に応じて特典を受けることができます。

例えば、10,000円のサポートで修復版『晩春』のブルーレイ・ディスク 本編の後にお名前を表示。30,000円で『晩春』デジタル修復版完成披露試写会にご招待、500,000円で完成披露試写会後のパーティーへの参加。100,000円以上の方には『晩春』の35ポジプリントを使用した、シリアルナンバー入りのモニュメント(鋭意制作中ですが予告編用プリント缶と組み合わせたもの!?)を贈呈。500,000円で海外プレミアへのご招待など趣向を凝らした特典趣向を凝らしたリターンが設定されています。

多くの方にご支援をいただいいたおかげで、実施期間を残しつつ、目標金額を達成することができました。今回のクラウドファンディングのプロジェクトに、周防正行監督も「小津作品を『作る現場』にはいられなかったけど、『残す現場』に参加できてとても嬉しいです」というコメントを寄せていただいています。応募は20日まで受付中なのでみなさまにもぜひ、小津作品を『残す現場』に参加していただければと思います。


クラウドファンディング・プロジェクト
『日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。』

期間:2013年11月22日(金)~ 2014年2月20日(木)
実行者:松竹株式会社
目的:小津安二郎監督の映画『晩春』(1949年)をデジタル修復する費用の一部(500万)の調達及び、新たなファン層の拡大。
内容:支援は一口3,000円、10,000円、30,000円、50,000円、100,000円、500,000円で参加できます。支援額に応じて支援者は特典を受け取ることができます。