『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』 大人の恋愛に欠かせない、3つのポイントとは?

(2016.08.31)
“恋愛マスター”クロード・ルルーシュ監督による大人の男と女の恋愛映画の王道。『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma
“恋愛マスター”クロード・ルルーシュ監督による大人の男と女の恋愛映画の王道。『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma
 
フランス映画といえば、延々と続く男女のおしゃべり!

フランス映画と聞いて私がまず思い浮かべるのは、カフェの軒先で男女が顔を突き合わせて、次々と話題を替えながら飽きずに延々おしゃべりしている場面です。とはいえ、フランス人なら誰もがユーモア、エスプリに富んだ会話を繰り広げられるかというと、必ずしもそうとは限らないようで、やはり会話のセンスや相性というのは極めて重要なんだ!と、9月3日(土)からBunkamuraル・シネマで公開される映画『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』を見ながら、改めて思い知らされました。

 
“枯れない恋愛マスター”が仕掛ける3つのポイント。

監督を務めているのは、今年79歳となるフランス映画界の大御所、クロード・ルルーシュ監督です。ルルーシュ監督といえば、『男と女』や『愛と哀しみのボレロ』など、数々の作品でタッグを組んできた映画作曲家のフランシス・レイとともに、映画史に残る名曲や名場面を生み出してきたことでも知られていますが、「私にとって愛とは、あらがうことのできない麻薬のようなものだ」と明言する、“枯れない恋愛マスター”だけあり、まさに大人の男と女の恋愛映画の王道ともいうべきポイントが、この最新作にはいくつも盛り込まれているんです。

 
ポイント1:旅先ならではの解放感と非日常感!

その1つ目が、「異国の地や旅先で男女が出会い、意気投合する」というもの。しかも、舞台はエキゾチック感満載のインドです!

75歳のときに、まわりに勧められて初めてインドを訪れたというルルーシュ監督は、インドの魅力にすっかりはまってしまい、「いつか監督と一緒に映画が作りたい」と申し出た『アーティスト』のジャン・デュジャルダンと、『ミナ』のエルザ・ジルベルスタインを主演に、映画音楽作曲家アントワーヌが、フランス大使夫人のアンナとインドで恋に落ちるラブストーリーを着想。まるで運命に導かれるかのように、ニューデリー、ムンバイ、そしてインド南部のケーララ州へと移動しながら、旅情をそそる情景をカメラに収めていきました。異国の地や旅先では、解放感が増すことに加え、シチュエーションのマジックもあって、普段より恋に落ちやすい傾向にありますよね。しかも、相手が今まで出会ったことがないタイプの異性だとしたら……?

映画音楽作曲家アントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)とフランス大使夫人のアンナ(エルザ・ジルベルスタイン)がインドで出会い、意気投合。恋に落ちてしまう。
映画音楽作曲家アントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)とインド駐在フランス大使夫人のアンナ(エルザ・ジルベルスタイン)がインドで出会い、意気投合。恋に落ちてしまう。
 
ポイント2:惹かれてはならない相手との禁断の愛!

というわけで2つ目に挙げるのが、「惹かれてはならない相手との運命の出会い」です。古今東西、数々の文学作品のテーマとなってきた「禁断の愛」ですが、すでに互いに幸せを手に入れているはずの良識ある大人の男女が、哲学的な会話を通して、まるで少年と少女のように惹かれあっていく様が、手に取るように描かれています。ここが冒頭の「気づき」へと繋がるのですが、共通の話題や経験のあるなしに関わらず、他愛もないことで会話が盛り上がる相手は、人生でそうそうで出会えるものではなく、たとえパートナーがいようがいまいが、「この人こそ運命の相手だったのかも……」と、ふと頭をよぎる瞬間が、きっと人生には何度かあるのだと思わずにいられません。

しかしアントワーヌにはピアノ演奏家の卵 アリス(アリス・ポル)、アンナにはフランス大使 サミュエル(クリストファー・ランバート)というパートナーがすでにいる。
しかしアンナにはインド駐在フランス大使 サミュエル(クリストファー・ランバート)、アントワーヌにはピアノ演奏家の卵 アリス(アリス・ポル)、というパートナーがすでにいる。
 
ポイント3:神秘的な体験を二人で共有!

さらに3つ目に挙げるのが、「神秘的な体験を共有する」というポイントです。そもそも恋に落ちるときには明確な理由や根拠など無いから、言葉にできない感動や、目に見えないパワーのようなものを共有できたときには、二人の距離はグッと縮まりますよね。この映画に欠かせない神秘体験が、聖者アンマに会いに行き、抱擁されるというシーンなんです。アンナは「子どもを授かりたい」との思いから、ガンジス川での沐浴も体験しながら、2日間かけて列車やバスを乗り継いで巡礼の旅を行い、無事に念願だったアンマのもとまでたどり着き、歓喜の涙を流します。半信半疑ながらアンナに同行したアントワーヌも、多くの人たちを分け隔てなく抱擁し、大きな愛で包み込むアンマの姿を目の当たりにし、自らも抱擁を体験することで、新たな境地に立つのです。

アンナは「子どもを授かりたい」との思いから、巡礼の旅へ。ガンジス川での沐浴を体験。静養を兼ねて旅に同行することになったアントワーヌは美しい風景に溶け込むその姿を見届ける。
アンナは「子どもを授かりたい」との思いから、巡礼の旅へ。ガンジス川での沐浴を体験。静養を兼ねて旅に同行することになったアントワーヌは美しい風景に溶け込むその姿を見届ける。
ニューデリーからムンバイ、ケーララ州コラムへ向かうふたり。アンナは念願だった聖者アンマのに抱擁を受け感激。半信半疑だったアントワーヌも抱擁を体験することで新たな境地に。
ニューデリーからムンバイ、ケーララ州へ向かうふたり。アンナは念願だった聖者アンマのに抱擁を受け感激。半信半疑だったアントワーヌも抱擁を体験することで新たな境地に。
 

旅先のアンヌとアントワーヌ、ふたりの会話はいつしか大人が道ならぬ恋に必要な“言い訳”が満載になってしまいます。

アントワーヌ「僕たちまずいな」
アンヌ「何が?」
アントワーヌ「何もかも。あなたは夫を忘れかけている。僕は恋人が来たというのに……あなたは何度合図を送ったか……ガンジスでの濡れた姿は……」

相手のせいにしながらも、結局は褒めることになってしまう面白さ。とまどうふたりの言い草には、恋愛マスターがこの道50年、磨き続けたワザが盛り込まれています。恋愛映画の王道、3つのポイントとともにじっくり味わってみてください。

アントワーヌをたずねてインドへやって来たアリスだが、アントワーヌは不在。サミュエルと大使館でお留守番であるが、こちらのふたりの動向も……。
アントワーヌをたずねてインドへやって来たアリスだが、アントワーヌは不在。サミュエルと大使館でお留守番であるが、こちらのふたりの動向も……。
劇中にはアントワーヌが音楽を手がけるインド映画『ジュリエットとロミオ』のシーンが差し込まれる。
劇中にはアントワーヌが音楽を手がけるインド映画『ジュリエットとロミオ』のシーンが差し込まれる。
 

●●●●映画の世界を追体験! 聖者アンマの抱擁とは?●●●●

映画を見ると、「アンマの抱擁」とはいったいどんな体験なのか? と好奇心が駆り立てられるのですが、なんと日本でも『アンマ来日プログラム』というイベントが毎年アムリタハートの主催で開催されていて、アンマの抱擁を受けることができることが判明。まさに『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』の世界を、日本にいながらにして追体験できる絶好の機会! ということで、去る7月18日にイベント会場である『ベルサール渋谷ガーデン』に足を運び、実際にアンマの抱擁を体験してきました。

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朝早くから会場に集まった多くの老若男女とともに、インド伝統の歓迎方法でアンマをお迎えし、メディテーションを一緒に行った後、壇上のアンマの元で一人ひとり順番に「ダルシャン」と呼ばれる抱擁を受けるのですが、インド伝統音楽が流れる荘厳な雰囲気の中、何人ものお付きの方々に囲まれているアンマを目の前にすると、自然と神聖な気持ちが芽生えます。

思わず陶酔しそうなほどいい匂いのするアンマの胸に力強く引き寄せられ、耳もとで「イトシイムスメ、イトシイムスメ」とささやかれながら、30秒以上の時間をかけて抱擁されていると、なんとも言えない安心感が湧き上がってきました。抱擁のあとは、アンマからリンゴとキスチョコを手渡され、半ば放心状態のまま、しばらくのあいだアンマの近くで過ごし、充実感とともに壇上を降りて終了です。

映画を見て、ぜひアンマの抱擁を受けてみたいと思われた方は、ぜひ来年の「アンマ来日プログラム」に参加されてみてはいかがでしょうか。ロケーションこそ違えども、きっとかけがえのない体験になるにちがいありません。

 
『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』
2016年9月3日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公

出演:ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポル
監督・原案・脚本:クロード・ルルーシュ
脚本協力:ヴァレリー・ペラン
音楽:フランシス・レイ
2015年/フランス/シネスコ/5.1ch デジタル/114分/
原題:UN+UNE
字幕翻訳:松浦美奈  
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本 
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma
配給:ファントム・フィルム