モナコを舞台に“別れさせ屋”が
四苦八苦。映画『ハートブレイカー』

(2011.10.29)

ロマン・デュリスが“別れさせ屋”に。

いよいよ2011年10月29日(土)より公開となる映画『ハートブレイカー』。セドリック・クラピッシュ監督作品シリーズでのグザヴィエ役で人気を博し、いまやフランス映画界を代表する演技派俳優ロマン・デュリスと、「シャネル」のミューズとして注目を浴び、フレンチロリータの代名詞ともなったヴァネッサ・パラディが、高級リゾート地のモナコを舞台に繰り広げる、アクション満載のロマンティックコメディ。監督は本作が長編デビュー作となるパスカル・ショメイユ。長年リュック・ベッソンの助監督を務め、アクションとエンターテインメントはお手のもの。フランスのアカデミー賞ともいえるセザール賞で、作品賞&第1回監督賞をはじめ主演男優賞ほか5部門にノミネートされた話題作。

「恋愛中の女性は、幸福か、承知の上での不幸か、
不幸を認めないかの3種類。
僕の標的は3番目の女性」

 と言うロマン・デュリス扮するアレックス。不幸な恋愛中の女性に「真実」を気づかせる“別れさせ屋”。仕事仲間は実姉のメラニー(ジュリー・フェリエ)と、メカに強い夫のマルク(フランソワ・ダミアン)。まるでヤッターマンに登場する悪役一味ドロンボーのドロンジョ、トンズラー、ボヤッキーのような3人組だ。

「目的達成のためには手段を選ばず」をモットーに、まずはパソコンを駆使してターゲットの周辺情報を徹底的にリサーチ。「でも、君となら」というお決まりの台詞と即席の涙を武器に、トマ、セザリオ、トニーと偽名を名のっては、カーリングの選手や窓拭き職人、鉄板焼きのシェフから、ゴスペル歌手まで、ありとあらゆる職業人に成りすまし、変貌自在で神出鬼没のメラニーと絶妙なタッグを組みながらターゲットに近づいてゆく。必要とあれば中国語だってマスターするほど本格的。だが、決して深入りすることはない

“別れさせ屋”トリオは、色男役アレックス(ロマン・デュリス)、姉のメラニー(ジュリー・フェリエ)とそ夫のマルク(フランソワ・ダミアン)。© 2010 YUME-QUAD FILMS / SCRIPT ASSOCIES / UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL / CHAOCORP
10年間培った“別れさせ屋”の巧みな技も
一向に通用しない……。

モロッコで一仕事を終えたアレックスの元に舞い込んだのは、10年間断絶状態だった結婚間近の娘ジュリエット(ヴァネッサ・パラディ)を、自分の手元に取り戻したいと願う花の卸商からの依頼。

アレックス一行は、ジュリエットがイギリス人青年実業家ジョナサン(アンドリュー・リンカーン)との結婚式の準備で滞在しているモナコへと向かうが、猶予はたった10日間。いつもどおりにリサーチを進めるも、このカップルにはなかなか弱点がみつからない。

父親が差し向けた“ボディガード”としてジュリエットへの接近に成功するも、裏社会にも通じる父に反発する彼女には、10年の実績が培った“別れさせ屋”の巧みな技も一向に通用する気配がなく、百戦錬磨のアレックスをしても、まったくのお手上げ状態に。それでも屈強なセルビア人の借金取りに追われ、命の危険を感じたアレックスは、背に腹は変えられぬとばかりに任務を引き受ける……。

ジュリエット(ヴァネッサ・パラディ)の固い結婚の決意をたった10日間でブレイクできるのか?© 2010 YUME-QUAD FILMS / SCRIPT ASSOCIES / UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL / CHAOCORP
なんとも残念なオトコ。
でも人間味あふれる魅力。

ターゲットを落とすために必要なのは、事前調査済みの彼女の好みを、偶然を装い、小出しにしながら、相手に自分との共通項を意識させ、心の扉をこじ開けること。

 朝っぱらからジュリエットのお気に入りのブルーチーズを食べ、ワムの『ワクワク・ウェイクミーアップ』を車のなかで口ずさみ、映画『ダーティー・ダンシング』の振り付けを一生懸命練習したり……と、涙ぐましいほどの努力も虚しく、彼女の幼友達の登場や想定外のハプニングによって、すっかりいつものペースを乱され、なかなか思うようにことが運ばない。

実績ある“別れさせ屋”のプロと聞けば、クールでスタイリッシュな冷血漢を想像するが、本作の主人公アレックスはちっともスマートじゃないし、隙だらけ。さらには「苦しいと逃げるクセ」さえある。

いつも土壇場でジタバタしてはターゲットからも「アホづら」呼ばわりされる、なんとも残念なオトコにも関わらず、ロマン・デュリスの手にかかれば人間味あふれる魅力的な主人公として輝き始める。

     


ヴァネッサ・パラディのファッションにも注目。

『スパニッシュ・アパートメント』や『ロシアンドールズ』などセドリック・クラピッシュ作品におけるグザヴィエ役などで、コメディアンとしての才能が十分垣間見えたロマン。しかし近年はジャック・オディアール監督の『真夜中のピアニスト』や、同じクラピッシュでも『PARIS』、ジル・ブルドス監督作品『メッセージ そして、愛が残る』といったシリアスな作品への出演が続いたこともあり、三枚目のロマンが存分に見られるのは、ファンにとっても嬉しいかぎり。

また、モナコのブランドショップで 買い物三昧のジュリエットを演じるヴァネッサ・パラディが、着せ替え人形さながらに次々身に着ける衣装や小物の数々も見逃せない。中でも刺繍入りのネグリジェの可愛さと、コンサートに着ていく胸元にシルバーのスパンコールが施されたドレス姿の美しさは息をのむほど。

モロッコからモナコまでオールロケを敢行した映画『ハートブレイカー』。モナコの四つ星リゾートホテル、モンテカルロ・ベイホテル&リゾートや09年の歌舞伎公演も記憶に新しいモンテカルロ・オペラ座など、ゴージャスな世界をたっぷり味わえ、ロマンとヴァネッサによる息のピッタリあったダンスシーンも楽しめる。

「ロマンみたいな詐欺師になら、騙されてみるのも悪くない」そう思った”不幸を認めたがらない”そこの貴女。偶然出くわした3人組にはくれぐれもご用心!

ネグリジェ姿の可憐さ、ドレス姿の美しさは息を飲むほど、ヴァネッサ・パラディ。© 2010 YUME-QUAD FILMS / SCRIPT ASSOCIES / UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL / CHAOCORP

 

『ハートブレイカー』 

2011年10月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

出演:ロマン・デュリス、ヴァネッサ・パラディ、ジュリー・フェリエ、フランソワ・ダミアン
監督:パスカル・ショメイユ
衣装デザイン:シャルロッテ・ブタイヨール
音楽:クラウス・バテルト
メイクアップ:セリーヌ・コリネ
振付:クリストフ・ダンショ

2010年 / フランス・モナコ / 1時間45分 / カラー / シネマスコープ / ドルビーデジタル
原題:L’Arnacoeur  英題:HeartBreaker
日本語字幕:寺尾次郎
配給:熱帯美術館/配給協力:フェイス・トゥ・フェイス

http://heartbreaker.jp/

真実に気づかせるためターゲットを誘惑し、その相手との関係を壊すのが目的であるが……。© 2010 YUME-QUAD FILMS / SCRIPT ASSOCIES / UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL / CHAOCORP