土屋孝元のお洒落奇譚。真贋その中には本物がある
大人の男達のための服装術。

(2014.02.10)

この映画の主人公はいつも手袋をしています。
大人の男の スーツの着こなし。

ある映画を観に行ってきました。

まだまだ、連日満席のようなので詳しくは書きませんが、大人の男が主人公です、三十数年間ある職業ではカリスマと呼ばれるまでに成功し、人間嫌いで極度の潔癖症、全てが上手くいっている様に見えるのですが、あるところからの依頼で人生の歯車が狂い出す……詳しくは映画をご覧ください。

***

彼のファッションセンスがある意味で大人の男の見本のような服装なのです、必ずダークスーツにレギュラーカラーシャツ、またはクレリックシャツ、ネクタイ姿です、シャツはダブルカフスのフレンチスタイルで毎回シャツに合わせてカフスを変え、ネクタイとのコーディネートも素晴らしい。ここまで合わせると鼻につく様な嫌味な感じにもなるのですが、全くそうはならないカラーコーディネートです、スーツ姿も筋肉を感じる様なダニエル・クレイグ:007的な身体ではなく、初老にさしかかる年齢体型ですがスーツを綺麗に着こなしていました。

女性にも観ていただき、このコーディネートを参考にして男性へプレゼントするネクタイなど選らんでいただけたらと思いました。

lamiglioreofferta_01
スーツを綺麗に着こなす主人公。

男のファッションは その日に会う相手に合わせて。
個人的な考えですが、男のファッションはその日 その時に会う相手に合わせてコーディネートするのが礼儀と思って組み合わせています、相手がお役所や銀行系などのお堅い人だったら、紺系の無地のスーツに同じ濃いブルー系のネクタイ、200番手くらいのブロードの白か、白に近く見えるブルー系のかなり細いピンストライプのレギュラーカラーシャツ、ポケットチーフ無しで、靴はもちろん、黒い紐のプレーントウとか。

ギャラリーやファッション、アート系の人だったら、同じ紺系でもチョークストライプかピンストライプのスーツに同じ紺系でも生地質感の違うネクタイや、その日に使うポケットチーフの中にある一色を使いネクタイとコーディネートを合わせたり、シャツはレギュラーカラーで濃いブルーのストライプシャツとかピンクまたはライトブルーのストライプシャツに同じブルー系の柄のポケットチーフをクラッシュスタイルで。カフスは七宝の色が綺麗なものなど。

最近 僕はイギリス空軍のマークのような目玉マークで中心が赤、次に白地、外側にロイヤルブルーのカフスにしています。靴は黒に近い濃い茶系のカーフのチャッカーブーツなど。手袋はカーフの表側の黒か濃いブルー、正確にはミッドナイトブルーです。黒は明るいところだとチャコールグレーに見えて少し赤味を感じてしまうので 僕はこのミッドナイトブルーの手袋をしています。もうだいぶ前に購入したエルメス製です。エルメス製の利点は裏のカシミアライナー生地が傷んだ時に取り替えてくれるのでありがたいのです。

lamiglioreofferta_02
アランフィガレの七宝のカフスボタン、サンジェルマンデプレにて購入。

***

相手に不快感を与えないような服装に気を使います、シャツはオーダーメイドしているのでスーツから見える後ろ姿、カラーの高さやシャツの見え具合はいつも同じようにしています、見えすぎも見えな過ぎもいけません。シャツには自分に合ったカラーの高さがあるので、それは個人個人のお好みで、僕も前にカラーを高くし過ぎて首と肩が凝って着心地が悪いことがありました、いろいろな高さを試してみて初めて自分に合ったカラーの高さがわかりました。シャツはクリーニングされたもので軽く糊を効かせて、これも好みがありますから自分が好きな糊加減でダブルカフスの袖口がパリッと見えるように、一目見て高そうではなく普通に見えて清潔感を感じるものです。

女性に会う場合には、そのひとの服装に合うように相手を引き立てる様なスーツで、ネクタイ、ポケットチーフは色が少し入ってもかまわないと思いますが、よく相手を知っている場合なら合わせますが、まったくの初対面ならば、相手の職業に合わせて上記のスーツスタイルとかわりません。

絵を引き立たせ あまり主張しない。 額縁も。
先ほどの映画の中でストーリーには触れずに気になった点を。主人公の男がコレクションしているポートレート絵画の額縁ですが、秘密のコレクションルームの壁一面、天井近くから床面近くまで、テッツァーノ、ゴヤ、モジリアーニ、ルノワール、ピカソ、デューラー、フランドルのポートレート、ファン・エイク、ルネサンス期のポートレート、ベネチア派、ダビッド、アングル、ドラクロワ、ロセッティー、などなどの あらゆる時代の作品が掛けてありました、インタビューで監督曰く300点選び、本物は一割くらいあるとか、そのシーンでは額縁が絵を引き立たせ あまり主張せず綺麗に全体がまとまって見えているのです、百貨店などの展示即売会でたまに見かけるのですが、中の絵よりも額縁が目立ち過ぎているものなどがあります。

僕の個人的な好みでは額はあまり主張しないモノが好きなのでとても印象的でした まあ額縁のお好みは千差万別で、何が良いとも一概に言えませんね、壁一面に絵を掛けるような場合での事で一般的ではないかもしれません。

『鑑定人と顔のない依頼人』
TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー公開中