mic Cinema Diary – 4 - 大阪、梅田ピカデリー『ソラニン』舞台挨拶。観客席最前列にうさぎさん! その正体は……。

(2010.05.03)

4月某日、アスミック・エースの名古屋系美人、Hさんから
「初日より絶好調スタートとなりました! 本当にありがとうございました! 引き続き何卒よろしくお願いします!」
と直筆のお手紙と共に『ソラニン』大入り袋が届く。

わぁ良かった、良かった。たとえほんの少ししか関わっていなくても、何だかとっても嬉しい。最近、大入り袋、目にしていなかったもの。

せっかくなので(引き続きお願いされしてしまったし、笑)、3月初旬、公開前の舞台挨拶のMCをさせて頂いたあの日のことを思い出し、私だけが知っている(!?)裏エピソードを書いてみようと思う。

3月某日、場所は大阪、梅田ピカデリー。
登壇予定の宮崎あおいさん、高良健吾さん、桐谷健太さんは、朝6時の新幹線に乗って大阪入り。その後、ホテルについてメイクや着替えを済ませたら、テレビ取材や雑誌インタビュー、ラジオ出演など、まさに分刻みのスケジュール。

え!? マネージャーでもない私がどうして知っているかって?

 
それは、配給さんが事前に“進行表”なるものを送ってくださるのです。
進行表とは、キャストやスタッフの方がどこで何をしているのか、ひと目で把握できるようになっているもの。

そ、それにしても、取材、取材、これまた取材と何とハードなスケジュール! 
私だったら11時半頃には既に目がうつろ、13時半には泡を吹き、15時には カンニンしてぇ~(涙) と泣いてるでしょう。(ソラニンだけに…………ここ笑うとこですよ)

 
舞台挨拶は夕方18時半スタート。責任感の強い皆さんのこと、きっと笑顔で登壇してくださるとは思いつつ、きっとお疲れのはず。そして、宮崎あおいさん以外の、高良さん、桐谷さんは、このような舞台挨拶の場を頻繁に経験されてはいない……

となると、なるべくシンプルな質問をさせて頂こう。と思うわけです。

案外ね、撮影現場よりも舞台挨拶の方が緊張される役者さん、多いんです。
なので、あんまり小難しい質問をして、キャストの方に考え込ませてしまっては場が重くなってしまうだけ。
インタビューならともかく、お客様の前では和気藹々と楽しんで話して頂きたい。だからこそ、シンプルな質問をご用意して、自由にお話してもらえる場を作りたい。

とはいえ、舞台挨拶は“生もの”。一般のお客様がいらっしゃる前で何が起こるかわからない。そんなハラハラを抱えながらも、とにかく、すべての人が楽しいひとときを過ごし、『ソラニン』がさらに盛り上がること、それが本作に携わる人々、共通の願いなワケです。

その為にも、会場では会場前に、事前のマイクチェック、立ち位置の確認、スポットライトや音響チェックを入念に済ませ……。

後はキャストの皆さんが入って来られるのを待つだけ。

 
……・どうやら、少し前の仕事が押している様子(押す=遅れている)。

すると、スタッフAさんが気まずそうな様子で
「micさん……スイマセン。キャストの皆さん、会場入りが押して、3分くらいしか打ち合わせの時間がないのですが、大丈夫でしょうか? 」と私の顔を覗き込む。

全然、大丈夫ですよ~!  (にっこり)
通常は、10分~15分くらいお話する余裕があったりするけれど、こういうパターンもしばしば。ふっつけ本番好きの私としては、むしろその方がエキサイティング(なんて書いていいのでしょうか……)♪

そして数分後、大勢の方の声がしたかと思うと、キャストの皆様&メイク、スタイリスト、マネージャーさんらが会場入られ、控え室があっという間に賑やかに。皆さんテキパキご準備されて、開演3分前にはキャスト全員。スタンバイOK。(早っ。)

 
宮崎あおいさんは細身のジーパンに水色のシャツ、桐谷さんも前開きのシャツでワイルドに、高良さんは生成りの上下にハンチング帽をかぶって、と、それぞれ『ソラニン』の役柄を彷彿とさせる衣装がとってもお似合い。さあ、いよいよ始まりますよ~! 

会場内は立ち見が出るほどの満員で、誰もがキャストの皆さんの登場を今かいまかと待っている状態。

舞台監督Tさんが、キャストの皆さんに私を紹介してくださる。
そしてTさん: micさん、何か皆さんにご説明ありますか? 

 

mic え~っと、自由にしゃべってください! (いいのか、そんなで……)。

そんなこんなで それではmicさん最初にどうぞ! とTさんにキューを出されて、まずは私だけステージへ。

皆さん、本日は『ソラニン』舞台挨拶つき試写会にお越しくださいまして、ありがとうございます。本作はホニャラララ……。 と紹介しはじめるも目の前に、どうしても気になるシルエットが……。

チラっと目をやると、何故かTシャツ姿の男性お2人が頭の上に、『ソラニン』マスコット、うさぎのぬいぐるみを頭の上に巻きつけておられる……。(ぬいぐるみ写真参照)男性2人が頭の上のウサギを乗せて真剣に私の話を聞いてくださっている……このシチュエーションに笑いをこらえつつも、やっぱり私も関西人、見てみぬふりはできず、その方達に向かって まぁ、本日はウサギまで連れてきてくださって本当にありがとうございます!  とサラリと会釈(周囲は笑いに包まれ……)。

ウサギ男子の頭部に乗っていたのはこちら、『ソラニン』マスコット!


そして、ここからが本番。そう、ウサギ男子に気を取られている場合ではないっ。

早速、ゲストを迎え入れると……会場内は割れんばかりの拍手、熱い熱気に包まれ、宮崎さんが大阪に来れて本当に嬉しいです。 とご挨拶するとさらに大きな拍手が。

そんな彼女に早速、本作についてのご質問。

mic  宮﨑さんご自身は、沢山の方から憧れている存在。夢を見つけられず悩む主人公芽衣子とは重なるはずはないのに、映画の中では芽衣子そのものでした。芽衣子のことをどのように感じていましたか? 

宮﨑さん 私も最初は芽衣子の気持ちがわかりませんでした。正直撮影中も、(芽衣子は)どうしてこんなに悩むんだろうって思ってたんです。でも、撮影から1年経って、今になって見てみると、芽衣子の気持ちがわかる。悩むってことは、それに対して真剣だってことだし、……私も今は、色々悩んでます。 

mic 現在、ソラニン中ってことですね(笑)。 

宮﨑さん はい、ソラニン中です(にっこり)。 

その細くて小さな体で、様々な主演作を乗り越えてきた彼女はきっと色んなソラニンを経験していて、またそれが今後の演技にも響いてくるのだろうな……そんな事を感じつつ、質問の相手は、桐谷さんへ。

 
mic 桐谷さんっ、地元大阪でこのように皆さんにお会いできて、どんなお気持ちですか? 

 
桐谷さん はい、とっても嬉しいです! ほんとに! 大阪の皆さん、ありがとうございます! それからひとつ、言いたいことがあるんですが……。 

mic はい、なんでしょう? 

 
桐谷さん あの、この最前列にいる、頭の上にウサギ乗せてる男の人達なんですが…… 

mic (心の声)

ダメ、ダメ、ダメ~ッ! そこは触れちゃダメなのよ。なぜってね、絶対盛り上がっちゃうでしょ。でも登壇時間はおよそ10分なの。そこで盛り上がると、肝心の映画についてのお話が短くなっちゃうのね。だから、私、先に触っといたから、既にそこそこ笑い頂きましたので、ね、お願い、スルーして~! 

桐谷さん あの……、この人……、うちの兄なんです。 

 
(心の声) は? へ?……・どっひぇ~~~!  (micの体、微妙にのけぞる)

場内、大爆笑。

mic お、お2人ともですか? 

桐谷さん いえ、片方は兄の友達で、いつも俺が映画に出る度に、何か映画に絡めて変な格好してくるんですっ。 

まさに“その男の人達”と桐谷さんが指を刺しています。

2人のウサギ兄さん BECKも行くで~! (*BECKとは、桐谷さんの公開予定の出演作)

桐谷さん 来んでええわっ! 

場内、更に大爆笑。

もうこの際なので、まさかの展開に身を任せ、トークは終盤近くのライブの話題に。

ドラマー役の桐谷さん、ベースはサンボマスターの近藤さん、宮崎さんがギターとボーカルを猛特訓して臨み、ストーリーとしても最も盛り上がる重要なシーンについて、高良さんに質問を投げかける。

mic ただ、この曲は高良さん演じる種田が作っていながら、ライブシーンに種田はいないんですよね。 (この時、種田はこの世にはいないので。)

高良さん はい……。でも撮影現場は見てました。複雑な気持ちでした。もう……、僕がいなくても、きちんとロッチになっていました……。 (*ロッチとは元々、種田がボーカル&ギターだったバンド)

まさに、そこには高良くんではなく種田がいて、残された彼らを温かく見守っているようなコメント。高良さんがどれだけ真摯にこの役と向き合ってきたかが伝わってくる。

お客様への最後のご挨拶の際には、 
「きっと、皆さんそれぞれのソラニンがあると思う。それを味わって欲しいと思います。」
と深々と頭を下げた。

観客の皆さんも温かい拍手を送ってくださり、舞台挨拶は無事終了。

楽屋口に戻ると、桐谷さんはスタッフの方と楽しげに会談中。高良さんは椅子に座り、一人じっと目を閉じている。宮﨑さんは控え室にてお着替え中。

私は舞台監督Tさんと、 まさかウサギ男子がお兄様だったとは…… とお話しながら、キャストの皆さんをお見送り待ちをしていると高良さんが今度は、楽屋前の廊下の隅っこに移動して座り込んでいる。

大丈夫かな……、お疲れで気分がお悪くなっていないかしら……。

ふと見ると、桐谷さんとスタッフの方が目配せしながら、そんな高良さんを見守っている。

それでは、出発します!  というスタッフの方に周りの皆さんが反応。
まずは桐谷さんが ありがとうございました!  と私に握手を求めてくださった。

桐谷さんは、ブログでもご一緒した人とは握手するようにしている と書かれていて、まさにきちんと手を差し出してくださった。桐谷さんのブログ(とっても素敵な文章です!)

メイクさんにスタイリストさん、東京からいらした配給さん、と次々に退出していかれる。
高良さんもまた
「ありがとうございました!」
と楽屋を後にされた……・と思ったら、引き返し私の目の前へ。

「……あの、……ごめんなさい。うまく喋れなくて……。」 

伏し目がちの高良さんに、私はすぐにお返事した。
「全然大丈夫です。あの空気感だけで充分です。本当にありがとうございました。」 (にっこり)

確かに高良さんからは、流暢にスラスラと言葉が出てきた訳ではなかった。

けれど、私はそんな事は全く気にならなかったし、(お客様もそう思っていたはず)
そもそも、キャストの方に言葉を期待したりなんてしない。

そう書くと御幣があるかも知れないけれど、
ありのままで、その場で心地よく立っていてくださったら、それでいいと思っている。

言葉はインタビュー記事にお任せして、舞台挨拶は、お客様と登壇者の方がお互いの空気感を味わい楽しんでくださったら、それでいい。

高良さんは、深くおじぎをして去っていかれた。

その数分後、宮﨑さんが楽屋から出てきて「ありがとうございました~!」とマネージャーさんと一緒にご退出。

この日最も多くの取材をこなしたであろう宮崎さん、それでもお疲れを見せない凛とした表情は、種田が去った後の芽衣子とも重なる。

ふと思い返せば、廊下の片隅でうずくまっていた高良さんも、それを何をするでもなくただ見守っていた桐谷さんも、種田でありジミーだった。

この三人の関係は、現実でも『ソラニン』なんだと思った。
映画『ソラニン』の中で、彼らは自身の役と向き合い、本当にその人間を生きたから、3人が集まれば、あの時間が自然に蘇ってくるのかも知れない。

そんな彼らと、他にも魅力溢れたキャストの方々、そして監督、スタッフの皆さんの想いが重なって、映像にするには難しいと思えた浅野いにおさんの原作が、見事に映画となった。そして大ヒット。

良かった、良かったねえ。と、頂いた大入り袋を見ながら、私はやっぱりそう呟いてしまうのでした。

次は『BECK』の舞台挨拶でご一緒させて頂きたいなぁ……。

 

『ソラニン』

出演:宮﨑あおい 高良健吾  桐谷健太 近藤洋一(サンボマスター) 伊藤歩
    ARATA 永山絢斗 岩田さゆり 美保 純 / 財津和夫
原作:浅野いにお「ソラニン」(小学館ヤングサンデーコミックス刊)
監督:三木孝浩
脚本:高橋泉
音楽:ent
メイン・テーマ「ソラニン」、エンディング・テーマ:「ムスタング(mix for 芽衣子):ASIAN KUNG-FU GENERATION(キューンレコード)
製作:『ソラニン』製作委員会
制作プロダクション:IMJエンタテインメント
配給:アスミック・エース

http://solanin-movie.jp/

2010年4月3日(土)新宿ピカデリー、渋谷シネクイント他全国ロードショー!