モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズ監督もしも右手をシェイクで 願いが叶うなら……『ミラクル・ニール!』
(2016.03.29)とりたてて特徴があるわけでもなく、なんとなく普通。暮らしを彩る自分好みの本やレストランを見つけては一喜。好きな人に想いがかなわぬと言っては一憂。日々の生活は小さなものの積み重ねで成り立っていて、たいがいメリハリがなかったり思い通りにいかなかったり。でも、とてつもなく不幸なワケじゃないからやって行ける。夢もあったりする。
そんな普通のミドルエイジが主人公の映画が多くないかい? と思うのは、自分の年齢もよいところになって若者が主人公の作品を見ることが少なくなったからか……この『ミラクル・ニール!』、主人公の学校教師 ニールしかりで至って普通。ところがある晩、宇宙人のきまぐれで願うことはなんでも叶うミラクルパワーが宿ってしまい、ニールの、そして人類の行く末は如何に? というお話。
ミラクルパワーでニールが叶えたい願いというのは、自分のカラダを筋骨隆々にしたりナニを大きくしたり、嫌味な上司をニール大好き派に変えたり。持てるパワーは大きいのに願いの小さいことは針のごとしで笑ってしまいます。
念願のムキムキ・ボディになっても疲れ気味のニールの顔とは合わなかかったり、死んだ生徒を生き返らせるために「死人よ甦れ!」と言ったら、まったく関係のないゾンビが蘇ってしまったり。パワーを操る言葉のもどかしさよ! 「言葉は神であった」と書いたのは福音書記 使徒ヨハネですがその言葉がヘンテコな事態を巻き起こしていきます。
監督のテリー・ジョーンズはあの『モンティ・パイソン』メンバーのひとり。『モンティ・パイソン』は、言葉の言いようだけでも人々を足腰が立たなくなる笑いの坩堝に巻き込むことのできる英国の無形重要文化財的コメディ集団。かつての『モンティ・パイソン ライフ・オブ・ブライアン』に登場したUFOを彷彿とさせるエイリアンが、ニールのミラクル騒動の一端になっていたり、ブライアンのように 救世主扱いされて途方にくれる人物が登場したりの遊びはファンには嬉しいところです。
ニールを演じるのは『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』『ショーン・オブ・ザ・デッド』のコメディアン、サイモン・ペッグ。つまらなそうな顔とミラクルパワーのチグハグぶりがヘンテコ事態に拍車をかけます。
ニールは全能の力を発揮するためになんちゃらーというような呪文を唱えるわけでもなく、魔法少女のようにミラクル・バトンを振り回すわけでもなく、願いを込めて右手を振り下ろす、というシンプルなもので有り難みのないこと甚だしく、しかしそのシンプルさがハッピー・エンドの一因でもあり。めくるめくアホアホ映像がスパークする後半、そのエンディングはストレートに「ワンダフル!」というものになっています。
見終わったあと「もし自分がニールのミラクル・パワーを使えたら」と考えるのは、宝くじを買う時「もしあたったら……」と想像するような わくわく感。
小さくても願うことはハッピーのはじまり、「願いを叶えるひきよせの法則」しかり
と、観察しました。
『ミラクル・ニール!』
2016年4月2日(土)渋谷シネクイントにて先行公開、
4月9日(土)新宿バルト9ほか全国公開!
出演:サイモン・ペッグ、ケイト・ベッキンセール、サンジーヴ・バスカー、ロブ・グリル、エディ・イザード、ミーラ・サイアル、エマ・ピアソン
声の出演:ロビン・ウィリアムズ、モンティ・パイソン(テリー・ギリアム/ジョン・クリーズ/エリック・アイドル/マイケル・ペイリン/テリー・ジョーンズ)
監督:テリー・ジョーンズ
脚本:テリー・ジョーンズ、ギャビン・スコット
撮影:ピーター・ハナン
編集:ジュリアン・ロッド
音楽:ジョージ・フェントン
美術・衣装:ジェームズ・アシェソン
製作総指揮:マイク・メダヴォイ
製作:ビル・ジョーンズ、ベン・ティムレット
2015 / イギリス / 英語 / 85分 / シネスコ / カラー
提供:パルコ、ハピネット、シンカ
配給:シンカ
宣伝:CAMDEN
原題:ABSOLUTELY ANYTHING
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