F・アルディとランボーと。
フランソワ・オゾン最新作『17歳』

(2014.02.24)

フランソワ・オゾン監督『17歳』。主人公の若く美しいリセエンヌ イザベルを演じるのは、マリーヌ・ヴァクト。© MANDARIN CINEMA – MARS FILMS –FRANCE 2. CINEMA – FOZ
シャーロット・ランプリングにも通ずる
クール・ビューティ、マリーヌ・ヴァクト。

前作『危険なプロット』の日本公開から間もないフランソワ・オゾン監督。最新作『17歳』が公開中です。オゾン監督の新ミューズ登場!と話題を一身に集めている主演のがマリーヌ・ヴァクト。しなやかな肢体とフレッシュな存在感、美貌はやはり特筆すべきで、作品の後半に登場する オゾン映画の重要な女優 シャーロット・ランプリングにも通ずるクール・ビューティ。2011年 イヴ・サンローランの香水”パリジェンヌ”のモデルとして抜擢されたキャリアを持つ新星です。

マリーヌ演じるところのイザベルは名門リセに通う恵まれた環境に暮らす『17歳』。しかし、どこか心は満たされず、インターネットを駆使して時間を見つけては不特定多数の男性を相手に体を売る日々を送るように。ルージュをひき母親の洋服を身につけ、出かけていく……映画の冒頭イザベルがスクリーンに登場するのは家族で訪れている夏のビーチ。秋には、男たちと密会するようになり、事件が起こる。そして迎える冬。四季折々の『17歳』のときを、演じます。


家族で来ているバカンス先のビーチに若く美しいリセエンヌ イザベル(マリーヌ・ヴァクト)。その姿は双眼鏡で覗かれている、夏。


弟ヴィクトル(ファンタン・ラヴァ)は姉イザベルの肉体にも言動にも興味深々。この夏、イザベルは早々と初体験を済ませる。

秋、イザベルはインターネットを駆使して男たちと密会を重ね、関係を持った相手からお金を受け取る様になっていた。

冬、そして春。数奇な縁でイザベルと6095号室で会う女性アンヌ(シャーロット・ランプリング)。「17歳。美しい年齢ね。」
フランソワーズ・アルディ、ランボーが
並列する面白さ。

女性の繊細な心の揺れを描くことにかけては当代随一のオゾン監督が、この年齢に特有の肉体と自意識のアンビバレンツ、家族の中に対するいらだち、焦燥感つのる『17歳』の心理を描くのに効かせたスパイスは、フランソワーズ・アルディのポップスと、アルチュール・ランボーの詩。フランソワーズ・アルディの『少年の恋(L’Amour D’Un Garçon)』の「あなたが出会った少女はもういない、キスされるたびに私は変わっていく」……愛している、哀しい、寂しい、というポップスの古典的命題が、現代ならではの複雑な状況に陥ったイザベルの気持ちを代弁するのに不思議にマッチしています。そして「17歳は真面目じゃない」というランボーの詩『物語(Roman)』が、イザベルが学校で受ける授業のワンシーンに登場。授業に参加する生徒たちがそれぞれの解釈を発表し、観客にそれぞれの『17歳』論を想起させる大きな鍵にもなっているのです。

マリーヌ・ヴァクトの圧倒的な美しさと、切ない音楽、情感の奥深くを探る言葉のヒントに満ちた贅沢な94分です。

『17歳』
新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほかにて全国ロードショー公開中

出演:マリーヌ・ヴァクト、ジェラルディン・ペラス、グレデリック・ピエロ、ファンタン・ラヴァ、ヨハン・レイセン、シャーロット・ランプリング
脚本・監督:フランソワ・オゾン
製作:エリック&ニコラス・アルトメイヤー
撮影:パスカル・マルティ
美術:カティア・ウィスコップ
衣装:パルカリーヌ・シャヴァンヌ
音楽:フィリップ・ロンビ
原題:JOUNE & JOLIE
提供:キノフィルムズ、KADOKAWA
配給:キノフィルムズ
宣伝協力:Lem
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
第66回 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
第61回 サン・セバスチャン国際映画祭 ほかの視点賞受賞
R-18
2013 / フランス / カラー / フランス語 / 94分 / アメリカンヴィスタ /5.1Ch /
© MANDARIN CINEMA – MARS FILMS –FRANCE 2. CINEMA – FOZ