実写版『シンデレラ』は、 大人が勇気をもらえるプラチナムなおとぎ話。
(2015.04.24)『シンデレラ』実写映画化の監督として白羽の矢を立てられたのは、英国の男優としても知られるケネス・ブラナー。公開前に主演のシンデレラ役のリリー・ジェームズと共に来日しご挨拶。監督冥利に尽きる思いでとり組んだことを明かしました。
「単に古いおとぎ話の実写化やアニメーションの修正版を作るのではなく、女性のポジティブな生き方を描きたかった。良いパートナー選びのために役立たせて欲しいです。」
『シンデレラ』こそ、ガールズ・パワーの元祖。
ウォルト・ディズニーが1950年に製作、大成功を収めたアニメーション作品が『シンデレラ』でした。逆境にある少女が美しく変身し、王子の妃となり幸せをつかむというサクセス・ストーリー。時代を超えて女性なら誰もが夢見る普遍のおとぎ話。「信じれば夢は叶うもの」というウォルト自身の想いは『A Dream Is a Wish Your Heart Makes』という曲となって作品中に生かされ、今も名曲としてカバーされるなどこのシンデレラ・ストーリーは今も伝説的存在です。
もともと『シンデレラ』の物語はウォルトのオリジナルではなく、彼がアニメーションを作った300年以上も前から、ジャンバッティスタ・バジーレをはじめ、シャルル・ぺロー、グリム兄弟が童話に著した「灰かぶり姫」というおとぎ話の古典でありました。アニメーションのみならず、多くの才人たちの手によってオペラ、バレエ、ミュージカル化され時代を越えて愛され続けて来ました。
今回の実写化にあたりブラナー監督は孤独や逆境をどう乗り越えるかのロール・モデルとして、あのネルソン・マンデラやキング牧師の生き方さえも参考にしたと言いますが、ポリシーこそ強さは優しさの表れ、勇気は希望が生み出すものということ。待つ女『白雪姫』(37)から行動する女『シンデレラ』へと変身させたウォルトへのオマージュに他ならないでしょう。
『アナと雪の女王』が大ヒット、キラキラしながらも自立する男前ガールズ・パワー全盛を告げる今の時代ですが『シンデレラ』こそがその元祖なわけ。
そんなシンデレラに抜擢されたリリー・ジェームズは映画初出演の新人女優。テレビシリーズ、『ダウントン・アビー~貴族とメイドと使用人~』で活躍した実績でオーディションを受け、主役の座を射止めた文字通りのシンデレラ・ガール。
自分らしさに賭けたリリー・ジェームズを主演に抜擢。
この熱意を受けとめたのがブラナー監督。「大勢の志願者の中で、リリーは、ひときわ輝いていた。シンデレラを託せるのは彼女しかいないと確信しました」と発言。まるでシンデレラ・ストーリーさながらの出会いが生まれ、新『シンデレラ』は作られていったようです。シェイクスピア俳優として名高い“ブラナー王子”も「シンデレラ」になった気分で、この作品に夢を託せたと言います。
まさに夢が実写になったと思える一番のシーンはと言えば、舞踏会。シンデレラがギリギリに城に到着、宴もたけなわの中、王子と対峙。その瞬間、時間は止まり、出席者一同がシンデレラを見据える。高貴な男女の思い思いの最高のドレス・アップ、メイク・アップが画面いっぱいに広がり、それは、それは圧巻。ああ、お城の夜会とは、こういうものだ、この映画は『シンデレラ』だったものね、と観る者をも招待客気分にしてくれる。確かにプラチナムでキラキラ度も高い場面で、一見の価値ありです。
ブラナー監督は本作を決して子供向けにせず、現代に通じる自立した女性の生き方にしたいとこだわった時、登場人物のキャラをいかに掘り下げるかに力を注ぎます。子供でも知っているシンデレラと王子以外の主要人物、継母(ケイト・ブランシェット)や、魔法使いのフェアリー・ゴットマザー(へレナ・ボナム=カーター)たちにも丹念に。
ハッピーエンドとわかっていても涙する
普遍の、シンデレラ・ストーリー。
残忍なほどにシンデレラに辛く当たるまま母ですが、裕福な暮らしから一転、夫に先立たれ未亡人になり、嫁入り前のダメ娘二人を抱え生きていくことへの絶望から逃れるため再婚。が、再婚相手のシンデレラの父である夫がまた死亡。父を失いどう生きていくか追いつめられているシンデレラとの生き残りゲームのデスマッチは必然・必至です。
二人の娘に自分の第三の人生を託そうと舞踏会へ希望を託してなぜ悪い。あがく姿には共感はできないものの、理解できなくもない。また魔法使いも万能ではなく、ドジることもいくらでもあることを赤裸々に見せつけるシーンが傑出。知らず知らずにこの二人にも惹かれてしまうところがなかなかの見せ場です。
などと納得しながら、シンデレラが幾多の難関を乗り越え王子とみごとに再会を果たすシーンを迎えるあたりでは、あらら、不覚にも涙している自分を発見。(少女の心が失われていない自分に、勝手に感動。)
「『シンデレラ』は自分を知るための映画でもあります」というブラナー監督の言葉が身に沁みるラストシーン。
『暮れ逢い』で色男ぶりを見せつけたリチャード・マッデンの王子様は、超はまり役で凛々しいお姿。ですが、これには好みもあるから百聞は一見にしかずでお確かめを。
スタンダードナンバーとなっている名曲『夢はひそかに』、『ビビディ・バビディ・ブー』はとあるところで登場、しっかり愉しめます。最後の最後まで『シンデレラ』の夢は簡単には覚めません。
『シンデレラ』
2015年4月25日(土)全国公開
出演:リリー・ジェームズ、ケイト・ブランシェット、リチャード・マッデン、テラン・スカルスガルド、ソフィー・マクシェラ、リデイ・グレインジャー、デレク・ジャコビ、ヘレナ・ボナム=カーター
監督:ケネス・ブラナー
脚本:クリス・ワイツ
製作: サイモン・キンバーグ、アリソン・シェアマー、デヴィッド・バロン
製作総指揮:ティム・ルイス
撮影:ハリス・ザンバーラウコス,BSC
プロダクション・デザイン:ダンテ・フェレッティ
編集:マーティン・ウォルシュ,A.C.E.
衣裳デザイン:サンディ・パウエル
音楽:パトリック・ドイル
© 2015 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
ディズニー提供 アリソン・シェアマー/ビーグルパグ/キンバーグ・ジャンル製作
ケネス・ブラナー作品 “CINDERELLA”
2015年アメリカ映画/カラー/シネスコサイズ/ドルビーサラウンド7.1&5.1
上映時間:1時間45分
字幕翻訳:古田由紀子
オリジナル・サウンドトラック:ウォルト・ディズニー・レコード
ジュニアノベル:偕成社
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン