『僕達急行 A列車で行こう』
プレミア試写会 ほのぼの舞台挨拶。

(2012.02.23)

プレミア試写会@品川プリンスシネマ。
ダブル主演の松山ケンイチと瑛太、
貫地谷しほり、ピエール瀧舞台挨拶。

昨年12月に急逝した森田芳光監督の遺作となる映画『僕達急行 A列車で行こう』。来月24日からの公開に先立ち、プレミア試写会が19日、品川プリンスシネマにて行われ、ダブル主演の松山ケンイチさんと瑛太さん、貫地谷しほりさん、ピエール瀧さんが舞台挨拶に登壇しました。

役柄同様、レトロなワンピース姿で登場した貫地谷さんと、大河ドラマの役作りを髣髴とさせる日焼け顔にスーツ姿で登場した松山さん、丸めがねにマント風コートを羽織った瑛太さん、ストライプのシャツにグリーンのネクタイ、ジャケットでトラッドにまとめたピエールさんという思い思いの出で立ちで登場した4人。ほのぼのとした雰囲気の撮影現場を想像させる和やかな会見でした。

*『僕達急行 A列車で行こう』試写会プレゼントはこちら。

劇中であずさ&小町のカップルを演じた貫地谷しほりさんと松山ケンイチさん。photos / Reico Watanabe

「鉄フェチ」小玉役の瑛太さんと、小玉&小町と旧豊後森機関車庫で出会う鉄道好きを演じるピエール瀧さん。
ピンク、ブルーのガーディガンにチノパンで
小玉、小町に成りきる。

『僕達急行 A列車で行こう』は、『の・ようなもの』(’81)でデビューし、『家族ゲーム』(’83)や『(ハル)』(’96)といった唯一無二の作風で時代と人間を鋭く切り取り、近年では『間宮兄弟』(’06)などで独特のコメディセンスを存分に発揮してきた森田芳光監督が、十数年前から温め続けていたというオリジナル企画。

大企業で働くマイペースな青年・小町圭と、下町の鉄工所の跡取りである小玉健太という対照的な二人が、「鉄道好き」つながりから意気投合し、友情を育み、恋に仕事に悪戦苦闘する姿をのびやかなユーモアで綴ったハートフルコメディです。

なんといっても、注目は松山ケンイチ扮する主人公小町(こまち)と瑛太演じる小玉(こだま)の成りきり「鉄チャン」ファッション!

衣装について聞かれた松山さんは「あの衣装を着ると小町になっている」とすかさず答え、衣装合わせで松山さんの姿を見た監督から「もう役に入ってるじゃん!」と言われたそう。続く瑛太さんも「ピンク色のカーディガンは持っていないので……」と言葉を濁しながらも「全体的な世界が純粋な気持ちにさせてくれた」と、すっかり映画の世界に入り込んだ様子。

さらに、ヒロインを演じた貫地谷さんからも「衣装さんと「これはないよね」といっていたオレンジのスーツを、一番最初に監督が「これがいい!」とおっしゃられて(笑)」との声が上がり、「役者は衣装とメイクがあってこそ役になりきれる」という松山さんのコメントにも説得力がありました。

田舎に「ポー」が響き渡った、
九州ロケ現場。

鉄道模型室の中で電車を走らせるシーンについて話題が及ぶと、九州の大企業の鉄道好きな社長役を演じたピエールさんは、左右に大きく振り返されるカメラワークを指して「そんな撮るんですか! それは楽しいですね~といった感じで、なるほどこれが森田演出かぁと度肝を抜かれた」と現場を臨場感たっぷりに身振り手振りで再現。「3人でキャッキャキャッキャやってましたよ、ずっと!」と話すピエールさんに、「あの空間に入ると、電車好きじゃなくても電車好きになりますよね」と、松山さん。さらに鉄道模型室のロケ場所となった福岡の山奥にあるホビーショップの店主との、隣の車庫の実物大のSLを巡る微笑ましい舞台裏のやりとりも披露。

「「いいでしょー」っていわれて、「(汽笛を)鳴らしてあげましょうか?」「じゃぁお願いします!」っていったら、「ポー」って。田舎に「ポー」が響き渡りましたよ。」「いい趣味してんなぁって」と感慨深げなピエールさんに「愛を感じましたよね~」と松山さん。瑛太さんも「童心にかえるというか、ひとつのものを共有する時間はいいなぁと思って味わっていましたね」と語り、貫地谷さんも「趣味を持っているのはすごくうらやましい」と「鉄道ファン」ならずとも趣味の世界にはまれる人に理解を示していました。


映画『僕達急行 A列車で行こう』より。©2012『僕達急行』製作委員会
「空気みたいなところで会話ができた」
松山ケンイチ&瑛太のコンビネーション。

初共演の印象を聞かれた松山さんは「瑛太さんのもっているやわらかい雰囲気が小玉と小町に表れている」と語り「小玉と小町だったらどんな喧嘩をするんだろう?とか、もっともっと試したかった」「東京と四国とか東北とか北海道とか、色んな物語ができそうだなと思った」と、そこに監督が不在であることが何よりも残念でならない様子。

一方、「松山君といつかやってみたいってずっと思っていた」という瑛太さんも、「にらみあう感じかと思っていたら、まったくその真逆で」と前置きした上で、「松山くんといると、やさしい気持ちになれるんですよね」「人間として肩の力を抜いて、自分のペースってなんだったっけなぁと教えてもらった」と率直に語り、「言葉で話したわけではないけれど、空気みたいなところで会話ができた。僕は松山くんを尊敬しますし、天才だなとも思うし、秀才だなとも思います」と松山さんを大絶賛。映画同様、二人の根っからの相性の良さが伝わってきました。

最後に、小玉が愛してやまない京急の赤い電車に見たてた「僕達急行」号に乗って、窓から笑顔で手を振りながらの記念(スチール)撮影。撤収作業に手間取るスタッフへの配慮から、段々低くなる降車シーンを即興で演じるサービスぶりで、どこまでも和ませてくれる舞台挨拶なのでした。


左・わたらせ渓谷鐵道で小町と小玉は……。
右・意気投合した小町と小玉はナイストレインビューの部屋へ。

左・小町が付き合うあずさ(貫地谷しほり)は花が大好き。
右・列車のスーパーあずさ。新宿ー松本・南小谷間を結ぶ。

左・小町の転勤先、のぞみ地所九州支社の朝のラジオ体操風景。
右・小町は地主の早登野(伊武雅刀)相手の事業用地購入に悪戦苦闘する。

左・「しかるべき場所」の駒鳴駅を走る唐津線。【キハ125形(一般形)気道車】
右・「社長になると友達がいなくなるもんね。」
いつしか森田ワールドに引き込まれる爽快感、
物事の本質は「ディテール」に宿る仕掛け。

映画の見どころはというと、鉄道好きなふたり、小町と小玉のキャラクター。決してイケてるとは言えないファッションや髪型、そして「~だわ」「~じゃないか」といった文語体に近い台詞回しになんとなく違和感を覚えつつ、いつしか森田ワールドにすっかり引き込まれてしまう爽快感。

メインキャストだけでなく、登場人物の名前が全て特急の愛称であったり、動作に都度アニメのような効果音が付いていたり、ダジャレや鉄道豆知識がところどころに細かく散りばめられていたり……と、随所に小ワザが効いていて、まさに物事の本質は「ディテール」に宿る仕掛け。

一口に「鉄道好き」と言っても、小町のように「音楽を聴きながら車窓を眺めるのが好き」な人もいれば、小玉のように「鉄フェチ」もいる。「トレインビュー」という部屋から線路や車庫が見える物件に住む人や「モーター音のマニア」、果ては「駅弁派」まで、細分化されていることにも驚かされます。

決して「鉄道ファン」だけに限定されていることではなく、「適度な距離感を保ちながら、マイペースを貫き、相手を尊重する」という、これからの日々を少しでも快適に過ごすためのヒントであるともいえるでしょう。

***

筑後社長の「君たちが羨ましいよ。社長になると友達がいなくなるもんね」という台詞に込められた一抹の淋しさは、もしかすると森田監督自身のことでもあったのかもしれません。

“人は「趣味」という共通言語で多くの人とつながってゆける”、“たとえ共感はできなくとも、理解を示すことで互いに安心感や自信が生まれ、優しくなれる” そんな森田監督からの大切なメッセージがたっぷりと詰まった映画『僕達急行 A列車で行こう』。ぜひスクリーンで列車の旅を一緒に楽しんでみてください。

*『僕達急行 A列車で行こう』の試写会に5組10名をご招待します! 応募はこちら。

『僕達急行 A列車で行こう』
2012年3月24日(土)全国ロードショー!
出演:松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、村川絵梨、ピエール瀧、星野知子、伊東ゆかり、笹野高史、伊武雅刀、西岡徳馬、松坂慶子
脚本、監督:森田芳光
音楽:大島ミチル
撮影:沖村志宏
主題歌:RIP SLYME 『RIDE ON』

配給:東映

©2012『僕達急行』製作委員会

『僕達急行 A列車で行こう』公式サイト


鉄道模型のシーン、左右にパンするカメラワークに注目。