世界各国から豪華ゲストが連日来日。
『第26回東京国際映画祭』開催中。

(2013.10.21)

『第26回 東京国際映画祭』コンペティション部門作品『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』主演のマチュー・アマルリック。ティーチ・インで登壇。

オープニングからトム・ハンクス、ソフィア・コッポラ監督らの来日ゲスト、安倍首相がグリーン・カーペットを歩き豪華さもひとしおの『第26回 東京国際映画祭』。急遽来日したフランス映画の実力派 マチュー・アマルリックのティーチ・インの模様、そして観ておきたいおすすめの作品をお届けします。

トム・ハンクス、ソフィア・コッポラ
豪華来日ゲストが続々。

TOHOシネマズ六本木ヒルズをメイン会場に開催中の『東京国際映画祭』。17日(金)のオープニング、グリーン・カーペットから連日、各国の豪華ゲストが来日を果たし国際映画祭ならではの華々しいステージを展開しています。ソマリア沖海賊事件を題材にした特別招待作品『キャプテン・フィリップス』主演のトム・ハンクス、ポール・グリーングラス監督、同じく特別招待作品でハリウッドセレブ宅を狙った連続窃盗事件をベースにした『ブリングリング』のソフィア・コッポラ監督。いずれも上映後のティーチ・インに登場し、会場を沸かせました。急遽来日が実現したのはコンペティション作品『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』主演のマチュー・アマルリック。20日(日)夜の上映の後、熱烈歓迎ムードの観客を相手にQ&Aに答えました。

『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』は、アルノー&ジャンマリー・ラリュー監督による新しい感覚のフィルム・ノワール。女性にモテモテの大学教授のまわりで不可解な失踪、流血騒ぎが、山と湖の静逸な雪景色の中で繰り広げられます。マチュー・アマルリックは文学部教授を熱演。鋭いまなざしと、知的な語り口、クールな振る舞いの中にもどことなく可笑しみ、ユーモアを感じさせ作品により深みを与えています。


『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』上映後のティーチ・インから。主演のマチュー・アマルリック。


大学で文学を教えるマルク(マチュー・アマルリック)は女生徒たちとのアヴァンチュールを楽しんでいたが。女生徒の中には大胆に誘惑してくるアニー(サラ・フォレスティエ)も。アルノー・ラリユー/ジャン=マリー・ラリユー監督『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』原題:L’AMOUR EST UN CRIME PARFAIT © ARENA PRODUCTIONS, GAUMONT, VEGA 、2013年/ フランス=スイス / 110分

俳優だけでなく監督としても活動、『さすらいの女神たち』(’10)でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞したことは記憶に新しいですが、今回の来日は最新監督作品の撮影スケジュールを縫っての来日。「狂気の沙汰だけど、来日の機会を拒めなかった。」とはにかみながら語りはじめ、ラリユー兄弟監督作品に臨む時の心構えについて続けました。「家族ぐるみの付き合いでとても近しい友人であるラリユー兄弟には非常なる才能を感じていて、私の人生では起こるはずもないことをせざるをえない状況の人物、変わった衝動を持つ主人公をいつも演じさせてくれるのです。」

劇中、マチュー演じるマルクのユーモアがとても自然な感じなのでユーモアをキープするための習慣はあるかとの会場からの質問には少し迷った様子を見せながら「ラリユー兄弟はエドニスト的なものの見方をするので、スキャンダラスで深刻なことも自然に表現、独特なユーモアが生まれてきます。」と監督のなせる業である点をアピール。さらに妹マリアンヌ役 カレン・ヴィアール、女生徒アニー役のサラ・フォレスティエら女優陣が楽しみながら演じていたこともユーモアをもたらす一因になっていたと、実に謙虚なもの言い。

山が舞台となることが多いラリユー兄弟作品については「彼らはピレネーの近く、ルルドやポーで育った。その地でおじいさんとともに山の動物、熊の映像を撮影したりして映画を学んでいったんです。いつもふたりは”Visage et Paysage”(顔と景色)が大事と言っています。映画の中でマルクが授業で生徒たちに、(君たちの)お母さんを、心理描写ではなく景色にたとえて描写せよと問題を出すシーンがあります。これはフィリップ・ディジャンの原作小説にはなくて、彼らが付け加えたもの。日本の文化にも近いものがありますね。」と日本にさらりと触れる発言も。

スキャンダラスで無責任な主人公像とは異なり、終始はにかんで訥々と話すマチュー本人の様子は観客一堂の心を鷲掴みに。大喝采とともに会場をあとにしました。

●これから上映
特別上映
『恋するリベラーチェ』、『アデル、ブルーは熱い色』

注目は特別招待作品『恋するリベラーチェ』、『アデル、ブルーは熱い色』。この2作は今年のカンヌ国際映画祭でコンペを競った作品で、いずれも同性間の愛を描き、セクシュアリティ、ジェンダー フリーの潮流を改めて示したことでも話題です。『恋するリベラーチェ』はスティーブン・ソダーバーグ監督が本作を持ってしばらく活動休止に入ることを宣言しているので、ぜひ観ておきたい作品。『アデル、ブルーは熱い色』は、カンヌでパルムドール受賞。アブデラティフ・ケシシュ監督のみならず主演の女優レア・セドゥ、アデル・エグザルコブロスがふたり揃っての受賞となりました。25日の上映後にはケシシュ監督のティーチインも予定されています。

『恋するリベラーチェ』
上映:10/22(火) 14:05〜

出演:マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ダン・エイクロイド、スコット・バクラ、ロブ・ロウ、
監督:スティーヴン・ソダーバーグ 
原題:Behind the Candelabra
2013年/アメリカ/118分
© 2013 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved

『アデル、ブルーは熱い色』
上映:10/25(金) 18:30〜

出演:レア・セドゥ、アデル・エグザルコブロス
監督:アブデラティフ・ケシシュ
原題:LA VIE D’ADELE CHAPITRES 1 ET 2
2013年 フランス179分
© 2013- WILD BUNCH – QUAT’S SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF (Télévision belge) – VERTIGO FILMS

コンペティション部門
『馬々と人間たち』、『歌う女たち』、『ウィ・アー・ザ・ベスト!』

『東京国際映画祭2013』の中核、グランプリ『サクラグランプリ』作品を選出するコンペティション部門では『馬々と人間たち』、『歌う女たち』、『ウィ・アー・ザ・ベスト!』を。『馬々と人間たち』は、馬と人々の生活を淡々と、ブラックユーモアを交えながら描いた作品で、前代未聞のシーンが次から次へと登場。アイスランドの限られた地域のお話なのになぜかグローバル感もあって実に不思議な映画です。レハ・エルデム監督の『歌う女たち』は圧巻の映像美、スウェーデンのルーカス・ムーディソン監督『ウィ・アー・ザ・ベスト!』は可愛い少女たちのお話。


『馬々と人間たち』
上映:10/22(火) 15:05〜

監督:ベネディクト・エルリングソン
原題:Of Horses and Men [ Hross í oss ]
2013 年/ アイスランド / 81分

『歌う女たち』
上映:10/23(水) 14:40〜、 10/24(木) 21:00〜

監督:レハ・エルデム
原題:Sarki Söyleyen Kadinlar
2013年 / トルコ=ドイツ=フランス / 121分

『ウィ・アー・ザ・ベスト!』
上映:10/23(水) 18:10〜、 10/24(木) 13:35〜

監督:ルーカス・ムーディソン
©Copyright 2013 Memfis Film Rights AB
2013年 /スウェーデン/ 102分

ワールドフォーカス部門
『トム・アット・ザ・ファーム』『ホドロフスキーのDUNE』

世界の映画祭で話題になった作品をまとめて見ることできるワールドフォーカス部門。今年のカンヌ映画祭で『恋するリベラーチェ』のソダーバーグ監督、『アデル、ブルーは熱い色』のケシシュ監督と並んでコンペに『わたしはロランス』を出品、25歳というその若さと才能で今、全世界から注目を浴びているカナダのグザビエ・ドラン監督の最新作『トム・アット・ザ・ファーム』。鬼才 アレハンドロ・ホドロフスキー監督がDUNEの映画化に取り組む姿を追ったドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』。プレミア上映されたカンヌ映画祭では会場が驚愕と爆笑に包まれたといいます。いずれも今後日本公開が見込まれていますが、いち早く作品を体感したい2本です。

『トム・アット・ザ・ファーム』
上映:10/24(木)14:10〜

Photo by Clara Palardy ©2013 – 8290849 Canada INC. (une filiale de MIFILIFIMS Inc.) MK2 FILMS / ARTE France Cinéma
原題:Tom à la ferme
2013年 / カナダ=フランス / 95分

『ホドロフスキーのDUNE』
上映:10/22(火) 20:40〜、 10/23(水) 13:50〜

監督:フランク・パヴィッチ
原題:Jodorowsky’s Dune
2013年 / アメリカ / 90分

第26回 東京国際映画祭

会期:開催中〜2013年10月25日(金)まで
会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区六本木6-10-2 六本木ヒルズけやき坂コンプレックス内)
問い合わせ:03-5777-8600(全日 8:00~22:00)