mic Cinema Diary – 1 - 映画「未来の食卓」トークショ-で『かあちゃんファーム』の萩原さとみさんのお話をきいてきました。

(2009.10.28)

9月21日、シルバーウィーク2日目の午後、
フランスの食ドキュメンタリー『未来の食卓』のトークイベント@アップリンクファクトリーに出席。

映画『未来の食卓』の字幕監修をされた、食環境ジャーナリストの金丸弘美さんと埼玉で農家を営み、農業体験の場も提供している萩原さとみさんが、本日のゲスト。

周りにグルメや単なるの食いしん坊(私?)なら沢山いるけれど、誰もが「食べる」専門なので、きちんと知識を持った方のお話が聞けるあって、とっても楽しみ。だって「食べる」ことは一生続く、誰にとっても大切な問題だもの。

私が本作を見て、まず思ったのは、「学校給食で使われる食材がすべてオーガニックなんて、日本じゃ無理なんだろうなぁ。」ってことだった。

だって、ここ数年連日のように、日本では食品偽装のニュースが流れ、呆れるほど何度も大人たちがブラウン管の中で頭を下げていた。いくらオーガニックという言葉が日本でも浸透してきたとはいえ、学校という組織の中で、子供の体を思いやって行動に起こそうとする大人が果たしているのだろうか。

なんて思っていたら、私が浅はかでした。
とある学校の栄養士さんが、萩原さんのお野菜を給食に使わせて欲しいと訪ねてこられ、今年から提携を結んでいるのだそう。

子供たちのこと、真剣に考えている方もきちんといるのだ。
そして萩原さんは、そんな大人たちのリーダー的存在。

埼玉で無農薬・無化学肥料で野菜を栽培し、毎月、150名近くの親子を迎える「かあちゃん塾」という農業体験を実施されている。

参加者は年々増加し、最近では「子供のために」と参加したご両親の方が感激して「本当にありがとうございました!」と御礼を言われることが増えたとか。

「子供たちは、稲刈りの時には稲一本も落とすことなく、ご飯を食べても米粒一つさえおろそかにしなくなったんですよ!」と、その心の成長を大変喜んでいらした。

食の安全について日々研究されている金丸弘美さんは全国各地を飛び回り、農薬の使われた作物を食べてきた子供たちがアトピーなどの病気で苦しんでいる姿を沢山見てきたのだそう。
そんなご経験もあって、萩原さんの活動の必要性を強く訴えておられた。

ただ萩原さんご自身は、元々農家の生まれではあったものの、最初からこのような活動をされていたわけではない。かつては農薬を使っていたし、農薬を使わないと決めても、その先の方向性にゆきづまりを感じてしまうこともしばしば。

そこで彼女は1992年に、思い切ってフランスとドイツの教育ファームのシンポジウムに出かける。

「何の面識もなかったんですけどね。伝統あるフランスのグリーン・ツーリズムの推進者であるアンリ・グローローさんに悩みをぶつけたら、
「首都圏30kmに住んでいるあなたが成功することが、地方の活性化にもつながるのです。田舎の情報発信基地になってください」と言われて、それでやろうって決めたんです。」

そして、「アンリさんにはハグとキスまでされちゃったっ。」と乙女のように微笑む。……萩原さん、
素敵です!

その後、農薬を使わない体験ファーム「かあちゃん塾」を始められたというわけ。

「いろんなことをやってるんですよ。サツマイモ植えたり、稲刈りや大根の収穫。季節によって違うんですけれどね。」

肌の血色がよく、見るからに健康で幸せそうな萩原さん、彼女の持つ温和なオーラは、大自然の恵みが源なのだと感じずにはいられない。

満席の会場では、皆さん誰もが興味津々で聞いている。

質疑応答のコーナーでは、「私も六本木で10年以上無農薬で植物を育てているのですが……」といったような奥様もいて、たとえ都市部に暮らしていても意識の持ち方次第で出来ることはあるのだな、と改めて実感したひとときだった。

その翌々日、偶然にも山梨の農家で、収穫したてのトウモロコシやミョウガ、トマト、茄子(すべて無農薬!)のお料理をいただく機会に恵まれた。
トウモロコシは、皮をむくのも手伝わせて頂いた。途中、虫を見つけてビックリしたりもしたけれど、皆で一緒にやっていると、そんなハプニングもまた楽しい。

そこで頂いたお料理は、いつもの何倍も美味しくて体中に栄養が染みていく気がした。

無農薬の農作物は人体にとってどれだけ大切かを先日のトークイベントで勉強しただけに感激もひとしお。無農薬はカラダにいいのは勿論だけど、こんなに美味しくて優しい味がするんだってこと。そのことを実感できてよかった。

萩原さんの『かあちゃんファーム』でもきっと、体験してこその喜びがきっと沢山あるのだろう。

たしか場所は埼玉。東京からだと車で約1時間、、明日にでもお電話してみようかしら。

 

 

 
みどころ

食卓から始まった小さな奇跡が、人々の幸せを紡いでいく。
フランスで異例の大ヒット! オーガニックブームを巻き起こしたドキュメンタリー!!
ゴッホが『ひまわり』を描いたフランス南部、アルルの近くのバルジャック村は、自然が多く残る美しい村。その村では、「小学校の給食をすべてオーガニックにする」という前例のない試みに挑戦しました。最初は戸惑っていた大人たちも、野菜本来の味を覚えた子どもたちにまきこまれ、“食の大切さ”に気づいていきます。授業の一環として学校の菜園で野菜を作りはじめた子どもたちは、季節の中で土や人とふれあい、「自然と自分とのつながり」を学んでいきます。「食べものが自分の身体をつくる」。そんなシンプルなことを、この映画は思い出させてくれます。

「おいしい」オーガニック・ライフのススメおいしいものが大好きなフランス人も、私達と同様「食」の問題を抱えています。世界の農薬使用量は年間250万トン。本当にそんなに必要なのでしょうか? 環境や私たちの体への影響は一体どうなっているのでしょう? 子供に安心で美しい世界を残したいという願いは全世界共通。最近では日本でも「農業」が注目され、「食育」への取り組みも活発になってきています。食のこと、からだのこと、地球のこと。そして、笑顔で食卓を囲むという幸せ。あたりまえの日々を、ていねいに暮らしてみませんか?

未来の食卓
監督:ジャン=ポール・ジョー
プロデューサー:ベアトリス・ジョー
出演:エドゥアール・ショーレ、ぺリコ・ルガッス
製作:J + B SEQUENCES
撮影:ジョエル・ピエロン、アマル・アラブ
音楽:ガブリエル・ヤレド(『ベティ・ブルー』、『イングリッシュ・ペイシェント』)
2008年/フランス/35mm/カラー/ドルビー/112分 
配給・宣伝:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/shokutaku/