『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』オーガニック感のある映像美で 最高峰のセレブリティの人生を描く。
(2014.10.20)ニコール・キッドマン主演『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』。女優から女王へとドラマチックな人生を歩んだグレース公妃ですが、1960年代のとある政治的局面にスポットを当て描かれています。監督は『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』(’07)のオリヴィエ・ダアン監督。作品について、そして監督道へのきっかけのお話をうかがいました。
撮影監督エリック・ゴーティエと創り出す
オーガニックな映像美。
ー『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』は、グレース・ケリーの物語、特に50〜60年代を描いています。女優〜公妃というセレブの頂点ともいうべき人物を描いているのに、ギラついた感じがないというか、やさしい光の画面が印象的で、非常に新しいセンスを感じました。
オリヴィエ・ダアン監督:それはまさにこちらの狙いそのものです。映像のオーガニックな質感は、ぬくもりのある人の肌の感じを目指しました。
ーそれは、どのようにして実現できたのでしょうか? グレースを演じたニコール・キッドマンはいずれのシーンでもハイブランドのファッションアイテムで身を包んでいます。ディオールの衣装、カルティエのジュエリー……。ゴージャスとオーガニックとは、なかなか並列が難しい感があります。
オリヴィエ・ダアン監督:うーむ、それはですねえ……いろいろな要素が組み合わさってできたわけなのです、技術的にいうと光の作り方やカメラの選び方もあるでしょうね、その他カメラと被写体=俳優との距離感もあるし。しかし、いずれも熟考したというよりは直感。作りこんだ演出というより、頭の中にあるイメージを実際に現場で試してみて「これがなんとなくいいな」という直感の積み重ねでできていったという感じです。
ー撮影監督のエリック・ゴーティエさんはウォルター・サレス監督の『モーターサイクル・ダイアリーズ』(’03)や、『オン・ザ・ロード』(’12)の映像で世界的に知られていますが、彼によるところが大きい?
オリヴィエ・ダアン監督:エリックとははじめての仕事でしたが、最初から意気投合して、こちらがやりたいことがやりやすかった。彼のキャリアでも、これまでやったことのないことも、やってもらいやすかったですね。
ー今回はエリック・ゴーティエさんですが、あなたはこれまでに撮影監督アレクサンドル・ラマルクさんとよく仕事されていますね。
オリヴィエ・ダアン監督:そんなことはありません。いろんな人とやっていますよ、たしかにアレクサンドルとは多くの作品を作って来ましたが、前作『ピアフ』は長田(鉄男)だった。私は自分の世界を持った個性的な映画監督が好き。今回のような映像は、エリックも僕もやったことがなかった。お互いにとって全く新しい映像を作る上げることができたんじゃないかな。
ファンタジー映画に憧れた
少年時代。
ーキャリアについておうかがいします、資料によりますと、マルセイユの美術学校で学んだのち、The Cranberries『Salvation』など多くのミュージシャンのプロモーション・ビデオを手がけられています。
オリヴィエ・ダアン監督:そうですね、100本くらいは作っているんじゃないかな。ファッションカメラマンでミュージック・ビデオ・ディレクターのジャン=バティスト・モンディーノの製作会社に入っていたのです。
ーそれだけ多くのプロモーション・ビデオを作るということは音楽好きですよね?
オリヴィエ・ダアン監督:音楽は大好きで、あらゆるジャンルのものを聞いていた。強いて言えば? 70年代のロック、デビッド・ボウイやルー・リード。ルー・リードは歌詞も含めて衝撃的でした。
ーでもミュージシャンではなく映画監督を目指しました。小さい頃から映画監督になるのが夢でしたか?
オリヴィエ・ダアン監督:絵を描くことと映画が大好きな子供でした。もっとも子供はみんな絵を描くのが好きですけどね。バンド・デシネ(フランス語圏のコミック)の『アステリクス Astérix』、『ガストン・ラガフ Gaston Lagaffe 』なんかを真似して描いたり。僕が育ったのは小さな田舎町でしたが7歳〜12歳くらいまでの小さい頃でも週に2回は映画を見に行ってました。アメリカのファンタスティック映画が大好きだったんです。
ーその頃というと、スピルバーグ監督の『E.T.』など?
オリヴィエ・ダアン監督:いや、『E.T.』(’82)の頃はもう15歳でけっこう大きかった(笑)。同じスピルバーグ監督の『ジョーズ』。それからジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』(’77)。特に『スター・ウォーズ』には非常に圧倒されて、子供ながらに「映画監督になれたらいいなあ」と漠然と思ってました。でもまわりに映画業界の大人なんていないからどうしたらいいかわからなかったですね。
ーあなたの写真はいずれもキャスケットをかぶっていて、キャスケットがトレード・マークになっていますよね。それは子供の頃から? 映画監督のイメージからでしょうか?
オリヴィエ・ダアン監督::……ただ好きなだけですよ。(笑)
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』
2014年10月18日(土)より、TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー
2014年度カンヌ国際映画祭オープニング作品
監督:オリヴィエ・ダアン『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス / フランク・ランジェラ / パス・ベガ
原題:Grace of Monaco
字幕翻訳:古田由紀子
配給:ギャガ
2014年 / フランス / カラー / 103分 / シネスコ 5.1Chデジタル
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