1本のシネマでも幸せになれるために – 1 - 今度の東京国際映画祭でのお得な1本は、コンペ作品で観るべし。

(2008.10.16)

東京国際映画祭は、世界的映画祭の言わばトリにあたる存在。
ベルリン映画祭で始まり、カンヌ、ベネチア、モントリオールなどを経て、その年の10月を東京が締めるわけ。今年で21回を迎えるとなると、ますます重要な存在ですね。
年々関心を持つ方が増えていることもあり、チケットもネットで即日完売になったりして結構なことなのですが、人気の的は、映画祭以外でも何かと宣伝され、公開が近い話題作に集中しています。『レッド・クリフ』とかの。つまり「特別招待作品」部門から買われていくということなんですが、これは、封切り公開前に観るプレミアム感覚に、お得感を募らせているってことですよね。

でも、作品によっては一般試写会もやっていたはずだし、大変な思いをしてもチケットをゲットできず落胆している方がいたら、そんなの関係ないですよ。近々、劇場公開されるんだもの。
国際映画祭の肝は、やっぱり15本のコンペティション作品に触れること。映画好きを自負なさるなら、無理してでもそちらをご覧あれ。上映後も、配給されない作品も沢山あり、この時しか観られない作品にお金を使うことにこそプレミアム価値を感じてみてください。

そのいい例が、あの『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督が審査委員長であった2006年の、グランプリに輝いても、いまだ配給されない『OSS 117カイロ、スパイの巣窟』という作品。(かつて私の会社が配給した『サム・サフィ』、その作品でデビューを果したオーレ・アッテカさんが出演していたので、来日した彼女と旧交を温めたりもしてましたが、グランプリを獲るとは、恐るべし、ジュネ監督の母国御贔屓の賜物か! オーレ自身も、私も正直驚いたものです)

映画祭では、グランプリが発表されたすぐ後の時間帯に、受賞作品の特別上映を観ることも可能ですが、最終日は日曜で、上映は発表後の遅い時間でもあり、見逃した方も少なくないはず。DVDでも観れないんですよ。これこのように、幻の優れものとなる映画は、コンペ作品にアリなんです。たかが映画ですが、小さな幸せを噛みしめるのは、こんな時なのだ。(ちなみに、昨年のグランプリは『迷子の警察隊』。劇場公開が決まっていた作品がグランプリでした)

というわけで、そういう意味で、今年私が、映画祭で観たらお得かな? という1本は、やはりフランス映画で、ジャン・フランソワ・リシェ監督の『パブリック・エナミー・ナンバーワン』。パート1とパート2を一挙に上映で、休憩を挟んで246分ものというから配給は難しい。が、バンサン・カッセル、リュディビーヌ・サニエ、セシルド・フランスなど今のフランス映画界のカリスマ・スター総出演となれば、映画祭あっての作品。

ジャン・フランソワ・リシェ監督の『パブリック・エナミー・ナンバーワン』

フランスで強盗・脱獄を繰り返した実在の犯罪者メスリンヌの生き様を描くいた作品。
ただ、今年の審査委員長はリュック・ベッソンでもなければ、ジュネでもないですから、グランプリが獲れるかどうかは、観てのお楽しみーです! いつもは演劇しか演らないシアター・コクーンでの上映もこの映画祭の時のみ。それも時期限定の楽しみのひとつです。
というわけで東京国際映画祭開幕近し、今年は何とレッドカーペットが、エコを意識してグリーンに変わるそう。グリーンに映えるドレスは、意外に難しいんですけどー!

東京国際映画祭は10月18日(土)から10月26日(日)まで。会場は六本木ヒルズ、東急BUNKAMURA ほか、詳しくは http://www.tiff-jp.net/ja/ で。

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東京国際映画祭 2008年公式ビュジュアル。

2006年グランプリの『OSS 117カイロ、スパイの巣窟』

2006年映画祭でのタカノと女優アッテカ。