遊び場であり、溜まり場であり、祝いの場であり、家だったレストランが舞台。映画『ソウル・キッチン』

(2011.01.22)

 

2011年1月22日(土)より公開となるファティ・アキン監督最新映画『ソウル・キッチン』。『愛より強く』でベルリン国際映画祭グランプリ、『そして、私たちは愛に帰る』でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したアキン監督は、本作で2009年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞・ヤングシネマ賞をW受賞! なんと、世界三大映画祭のコンペティション部門を36歳という若さで制覇しました。


ファティ・アキン監督といえば、これまでの“愛”“死”に続く“悪”を テーマにした3部作のイメージが強いのですが、今回はそのシリーズを一旦お休みし、あえてこれまでの持ち味と異なるテイストの『ソウル・キッチン』に挑戦。というのも、かねてから、本作で共同脚本も手がけた主人公ジノスに扮するアダム・ボウスドウコスが経営していた、アキン監督お気に入りのギリシャレストラン『タベルナ』で過ごした日々や時間を、映画という形で残しておきたい、との強い思いがあったから。

また「変わりゆくハンブルクの街をカメラに収めた かった」と言うだけあって、運河沿いにある高級レストランに美しい赤レンガ倉庫、クールなバーやクラブなど、これまで知らなかった「水の都」ハンブルクの 魅力あふれるスポットが次々登場します。

シリーズは一旦お休みというものの、これまでの作品に色濃く現れたミックスカルチャー感と音楽への熱い思いは本作においても健在。ギリシャ系の主人公を中心に、トルコ系やアラブ系といった様々なルーツを持つ人々が、『ソウル・キッチン』には集まっているのです。

祖国のいわゆるおふくろの味は異なれども、心からくつろげる空間で、仲間と一緒にいつも食べている定番料理をソウルフードと呼ぶならば、どんなに手の込んだ 料理より、馴れ親しんだフライドポテトこそが自分たちのソウルフードである。そう信じて疑わなかった常連客が、いつもの店で、天才シェフが生み出す、もはやアートの域に達した“魂の食事”を新たな“ソウルフード(定番)”として受け入れてゆく姿は、食にうるさいグルメな人々が用いるどんな比喩より説得力があります。

料理はもとより、ハンブルクの星付き高級レストラン『Le Canard』の指導を受けた、ビロル・ユーネル演じる天才シェフ、シェインが披露する調理シーンの手際のよさも見どころの一つ。快適に整えられたキッチンに並ぶ食材を、前菜からメイン、そして繊細なデザートまで、完璧な身のこなしで、見事に仕上げていきます。シェインがジノスに魂の食事の真髄を伝授する場面でアキン監督が意識したのは、昔のカンフー映画や『ロッキー』というのも納得の躍動感です。


そして『ソウル・キッチン』においてFOODとともに絶対はずせないのがMUSIC。「税務署の女性にお店のスピーカーを差し押さえられそうになった瞬間響き渡る 「音楽がないと魂が飢える!!!」というジノスの悲痛な叫び声そのままに、音楽が重要な役割を果たしています。クール&ザ・ギャングを皮切りに、ヒップ ホップやダブ、エレクトロニカ、ブルース、ハバネラを網羅し、さらにはルイ・アームストロングやクインシー・ジョーンズ、カーティス・メイフィールドと いった大御所や、ドイツが誇る偉大な歌手ハンス・アルバースまで、DJとしても活躍するアキン監督ならではのセンスで選び抜かれた幅広い音楽が全編に渡って楽しめるのです。

アキン監督が、単なるレストランという存在を超え、「遊び場であり、溜まり場であり、祝いの場であり、家だった」と言うほど愛した店「タベルナ」から生まれ た、映画『ソウル・キッチン』。人生を楽しむ上で欠かすことのできない音楽と美味しい料理そして素敵な仲間との思い出が、たっぷり詰まった映画です。

ストーリー
ハンブルクでレストラン“ソウル・キッチン”を経営するジノス。恋人のナディーンが夢を追って上海に行ってしまったり、税務署からしこたま滞納していた税金の支払いを迫られたり、衛生局から新しいキッチン設備の導入を命じられたり、食器洗浄機を動かそうとしたら椎間板ヘルニアになったり……と、このところ上手くいかないことばかり。
ヘルニアで調理ができなくなったジノスが頑固者の天才シェフを新しく雇うと、彼が作る料理が評判を呼んで、店は連日大盛況!

そんなある日、兄のイリアスが刑務所から仮出所してくる。イリアスが店のウェイトレス・ルチアに惚れて、音楽好きな彼女のために盗んできたDJセットでジノスの大好きな音楽をかけながら、店は絶好調に繁盛し出した。すべては上手く回り始めた、ハズだった。しかし、ソウル・キッチンの土地を狙う不動産屋が現われ、店は乗っ取りの危機に陥る……。この店はオレたちの心(ソウル)。なくすわけにはいかない!

ソウル・キッチン

2011年1月22日(土)、シネマライズほか全国順次ロードショー!

出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ、
ビロル・ユーネル、ドルカ・グリルシュ、
モニカ・ブライプトロイ、ウド・キア
監督・脚本:ファティ・アキン

2009 /ドイツ・フランス・イタリア/35mm/1:1.85/99min/ドルビーSRD
配給:ビターズ・エンド
公式ホームページ: http://www.bitters.co.jp/soulkitchen/