『太陽のめざめ』 ロッド・パラド インタビュー演じた役や名前が、いつまでも観る人の心に残る俳優を目指す。
(2016.08.05)2016年8月6日より公開の映画『太陽のめざめ』。『太陽がいっぱい』(60)を彷彿とさせるタイトルのごとく、主人公の少年マロニー役を演じたロッド・パラドくんの美男子ぶり、かのアラン・ドロンの再来と言われるほど。恵まれない環境に育ち、やるせない思いを持つ主人公、という共通項も。ロッドくんはその熱演でフランスのアカデミー賞といわれるセザール賞、由緒ある映画賞 リュミエール新人賞の両方を獲得した話題の新星です!! 『フランス映画祭 2016』で来日した際にお話をうかがいました。
天使と悪魔、両方の顔を持つマロニー役。
ー『太陽のめざめ』の主人公 マロニーは複雑、なかなか難しいキャラクターの少年です。大人になりきれない母のもとで育てられ、母親を売春婦呼ばわりして暴れたかと思うと、勾留先で「ママンに会いたい」といってメソメソしまったり。自分を取り巻く環境や社会に対する怒りや思春期の若者特有の苛立ちを爆発させるのですが、一方でものすごく繊細、家族思いのやさしいところがあります。演じ分けは簡単ではなかったのではないでしょうか?
ロッド・パラド:それが俳優という職業なので(笑)。膨大な仕事量でした。エマニュエル・ベルコ監督が丁寧に演技指導してくれたということも大きいですが、同時に専門のコーチにつきました。彼には演技全般のベース作りを手伝ってもらったという感じです。単にセリフを覚えるだけでなくまず脚本全体を理解しないといけなかったので各シーンの状況、マロニーと母、マロニーと心を寄せる少女のの関係など全体を把握するのを助けてくれました。コーチが作ってくれたベースを元に、監督が求めるマロニー像を演技指導で肉付けしキャラクターを築きあげていきました。
ーマロニー役に抜擢されるきっかけは、リセの職業養成課程に通っていたところ『太陽のめざめ』のキャスティング・スタッフにスカウトされたことだそうですが、それで主役を射止めてしまうというのは相当な強運の持ち主でもありますね。
ロッド・パラド:実際には「マロニーという少年役を探しているのだが合いそうな子いる?」とキャスティング・スタッフが学校に打診して、学校側が選んだ数人の中に僕がいた、というわけなですけどね。
いわゆる普通の高校生が
突如、映画の世界の新星へ。
ーそれまで演技の経験は?
ロッド・パラド:まったくないです(笑)。映画は大好きで良く観ていたけど、観るだけで、まさか演じる側になるとは。オーディションは、ひとつのシノプシスが与えられそれに対してアドリブで肉付けしていく、といったもので初めてでしたが演ってて面白い、と感じていました。「これは楽しいし、断る理由はないよな」と。
ー映画の中のマロニーは、ひとを射抜くような鋭い眼差しをしています。実際のロッドさんは、瞳が美しいライオンやチーター、猛獣の子供といった印象です。元気いっぱい、ですね。
ロッド・パラド:小さい頃からエネルギー全開、活動的、やんちゃな子供でした。たとえば夏休み、長いバカンス旅行に出かけたとします、そして家に帰って来た。「やれやれ疲れた、ちょっとひと休み」と家族が居間でくつろいでいても僕はおかまいなし、もう出かけたいタイプです。
ーアクティブで野性的な感じは……好んでスポーツに興じていた、などありますか? サッカーをするとしたらフォワードタイプに見えます。
ロッド・パラド:サッカーは観るのが専門。僕はスポーツマン・タイプじゃないですが、水泳は得意で水の中にいるのが大好きです。
「彼のあの役」がよかったね、と言われるような俳優に。
ーマロニー役はあなたにとっては始めての演技だったのにもかかわらず、熱演が評価されセザール、リュミエールという由緒ある映画賞の新人賞をダブル受賞しました。これは快挙ですね。
ロロッド・パラド:自分でも信じられないです。セザール賞の受賞式の模様がYOU TUBEにアップされているのですが、僕は観たことないです。思い出すだけでも胸がいっぱい、涙が出てしまって観れない。俳優として映画祭に呼ばれて、今こうして日本にいることもまだ信じられないです(笑)。
ーこれほどの栄誉を受けたからには、これからは俳優業で身を立て行かない手はありませんね。現在のロッドさんが考える俳優の仕事の魅力とはどのようなことでしょう?
ロッド・パラド:撮影現場ってどのようなところなんだろう? セットの中ってどうなってるのか? カメラの前で演技するってどんなことなんだろう? という好奇心で始めたことですが、実際やってみると感動的な仕事でした。何に感動するかって? たぶん自分以外の人になっている時間が長い、というところ。あとは企業秘密(笑)。
ーそれはスパイを送り込まないと行けませんね(笑)。最後にもうひとつ知りたいことがあります、将来はどのような俳優さんになりたいと考えてらっしゃいますか? 具体的に○○さんのような俳優になりたいなど目標としている方などありましたら教えてください。
ロッド・パラド:観る人の心を揺さぶる演技のできる俳優になりたいと思います。今回のフランス映画祭の団長のイザベル・ユペールもすごいし、共演したカトリーヌ、ブノワ……みんなそれぞれ尊敬していますが、特にだれそれのようになりたい、というのはない。名前で「ああ、彼は良い俳優だね」と言われるより「あの俳優の○○役がよかった」と、その役名がいつまでも観る人の心の中に残るような……演じた役が語られるような、そんな俳優になりたいと考えています。
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アラン・ドロンの再来、という声にも首肯できますがジャン=ピエール・レオ、リヴァー・フェニックス、……若くして評価された名優の面々の名前を彷彿させるロッド・パラドくん。近年彗星のごとく映画界に登場し、今や世界規模で注目されるグザヴィエ・ドラン監督(1989年生まれ)より更に若い世代の才能の登場です。
俳優名よりも演じた役柄で語られたいというその願いは、音楽家が作った曲や歌った曲を愛してほしい、と願うことと似ています。作品よりもアーティストの存在自体がイメージやブランド化することを嫌う本物志向。
違いのわかる野生の少年である、
と、観察しました。
『太陽のめざめ』2016年8月6日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ロッド・パラド、ブノワ・マジメル、サラ・フォレスティエ、
監督:エマニュエル・ベルコ
脚本:マルシア・ロマーノ
撮影:ギョーム・シフマン
編集:ジュリアン:ルルー
美術:エリック・バルボザ
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
原題:La Tête haute
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