女子力に響くのがフランス映画。
『フランス映画祭2011』で確かめて。

(2011.06.20)

今年の団長は、リュック・ベッソン。
恒例の『フランス映画祭』が6月23日(木)〜26日(日)まで開催されます。毎年3月に六本木で行われていたこの映画祭ですが、もともとは横浜で6月に行われていたのでした。今年は6月開催になり、有楽町の朝日ホールがメインの会場です。この会場は国際映画祭『TOKYO FILMeX/東京フィルメックス』でも、よく知られています。

『フランス映画祭2011』の団長はリュック・ベッソン。彼のアニメ監督作品アーサーシリーズの第3弾となる『アーサー3』(仮題)がオープニング作品です。

さて、限られた日程でどれを観たらいいでしょうかと、たずねられることもしばしば。
私は毎度のこと、ここでしか観ることが出来ない作品を、まずは観ておかないと、と思っています。もちろん、この後で一般公開が予定されている作品を、誰よりもいち早く観るという楽しみも映画祭ならでは。映画祭でしか体験できない監督や出演者たちのトークを、同じ空気感の中で味わうというのは、病みつきになります。
 
というわけで、お勧めは、今のところ未公開予定の3作品。ピュアで透明感を感じさせてくれ、女子の心に浸みわたること確実な3本は、どれもフレンチテイストいっぱい。

自分ランキングの基準は、ピュアなエスプリ度。

自分ランキング、そのベスト3の3位は、『トムボーイ』。

カンヌ映画祭のマーケット部門で観た人の評判も高く、フランスの雑誌『Les in Rockuptibles 』などの映画欄でも見かけ、気になっていた作品なのです。

女の子なのに背は高く、手足が長く、ベリーショートが良く似合っている。女の子にしておくにはもったいないくらいサッカーなんかも上手。そんな、美少女、いや美少年にしか見えない女の子のお話。本人も自分が少年だったらいいなーと思っていて、完全に男の子としてふるまっている。誰もが疑わない毎日を楽しんでいくのです。禁じられた遊びと言おうか、性同一性障害とかいうのでもなく、少年としての自分を楽しむというか…。

そんな時期ってありましたよね。女子の兆候が体にで出すと悩んだりして。そんなお年頃、何に対しても純粋で、そんな自分がいとおしかった、甘酸っぱいような気持ちの毎日。しかし、女子に恋されてしまったら、さあ、どうしましょう……。という甘美な少女時代がナチュラルな日常の中に展開します。女性監督が作っただけに、女の子に生まれて良かったのかな、と一度は考えるのが女の子というものなのだということをとても上手に描いています。

「男の子が欲しかったのに」と思って私を生んだ両親なぞは、3歳くらいまでは、私に男子の格好をさせ、庭で野球など教えたものでしたが、それで私には、男勝りの精神性が備わってしまったということもあり、個人的にも大変興味深い作品です。ベルリン映画祭パノラマ部門のオープニングを飾りました。
 

©Hold-up Films et Productions

『トムボーイ』  監督/セリーヌ・シアマ
出演/ゾエ・エラン、マローン・レヴァナ、マチュー・ドゥミ
2011年/フランス/82分/35mm/カラー

大人の女になりたいけれど、なりたくない気持ちを
ピュアに演じるレア・セドゥ。

第2位は、『美しい棘』。

昨年のカンヌ映画祭批評家週間ノミネート作品で、これもまた、女性監督作品。
『トムボーイ』とも共通する女子の感性がみずみずしい、17歳の少女の心の揺れ動きを美しく描いています。

母を失くし、父は仕事で忙しい中流家庭の子女の青春の悩みといったら、普遍的なテーマで、もちろん異性を意識しての少女から女への通過儀礼に悩む姿。そこに目新しいものはないのですが、主演のレア・セドゥが観る者を飽きさせません。彼女は同じく昨年のカンヌ映画祭のオープニングを飾った『ロビン・フッド』の王女様役で、日本にもファンを増やしたと思いますが、まるで彼女自身の生き方であるようにも見えるこの作品は、彼女の演技の力を強く感じさせます。

フランスを代表する女優になるにふさわしい、アンニュイな雰囲気やセンスの良さにも目が離せません。
 

© Shelby Duncan


『美しき棘』 監督/レベッカ・ズロトヴスキ 
出演/レア・セドゥ、アナイス・ドゥムスティエ
2010年/フランス/80分/カラー

フレンチアニメは、大人の女子のロマンに応えてくれる。

第1位に輝くのは、『パリ猫の生き方』。

原題通りのタイトル、惹かれるものがあります。考えてみたら、最近の猫は外を徘徊できず、家の中で大事に籠の鳥状態ではあります。

やはり、猫、特に雄猫は外をブラつかねば猫ではない。そんなことも感じさせ、あるいはブラつけているおうちの猫ちゃんて、外では何しとるんや―。と、改めて考えたら楽しくなりそうな、アニメ作品。大人が見て夢見ることが出来る素敵な作品です。

震災以降は、温故知新というか、忙し過ぎた自分を振り返ろうという思いを持った人も少なくないはず。この私もそうなんですが、このくらいのスローアニメ、気持ちいいです。ストーリーも往年のシネマのようなシナリオで、心ときめく。

この作品も猫と少女が主役で、女子力に響くスピリットが埋め込まれています。思えば、昼はフツーの人、夜ともなればヒーロー、あるいはダーティー・ヒーローに変身という生き方も、私、あこがれました。かの、『スーパーマン』のテレビシリーズを見ては、男に生まれたかったーと思って育った女の子だったので、この作品も、最後の結末に納得。大拍手。女はそんな男になれなかったら、そんな男が理想の男性になっていくわけで……。

独特のアート世界で注目されるリヨンのアニメスタジオ『Folimage』(フォリマージュ)の最新作で、ベルリン映画祭ジェネレーション部門など数々の映画祭でも高く評価されています。
 

© Folimage

『パリ猫の生き方』 監督/アラン・ガニョル、ジャン=ルー・フェリシオリ
声の出演/ベルナデット・ラフォン、ドミニク・ブラン
2010年/フランス/70分/35mm/カラー

 

というわけで、いつも奥が深いのです、フランス映画。

楽しみ方もその人次第、映画の答えが最後にあるとも限らないし、用意されていないことあるというところが、毎度、フランス映画を観る楽しさでもあるのです。

ぜひ、フランス映画祭、このチャンスに、チャレンジしてみてください。

 
フランス映画祭 2011

会期:2011年6月23日(木)~26日(日)
会場:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇(レイトショーのみ)
http://unifrance.jp/festival/2011/

© uniFranceTokyo