そっくりぶりはまさに名人芸
オスカー受賞、メリル・ストリープ。
(2012.03.15)
まず正確であること、
真実に近い役作りを心がける。
先日の来日記者会見では、その役作りにおける苦労談を披露しました。
「アメリカ人である私は、英国の人から見ればアウトサイダー。その私が、英国人から愛され、また憎まれ、批判もされたサッチャー前首相女性を演じ、それを自分にフィットさせるなければいけなかったこと。また、サッチャーさんが政界を退いて年老いてからの姿、みんなが知らない日常生活での彼女を演じなければいけなかったこと。このふたつの融合は難しいことでした。」
実在で存命中の人物を演じたことについては
「これまでにも実在の人物を演じたことはありますが、サッチャーさんのように現在もご存命の方を演じることに責任を感じました。まず正確であること、真実に近い役作りを心がけました。
サッチャーさんは公の人物で、政治家でした。彼女の生き方に、観ている人が自分と重ね合わすことができるような演じ方をしたかった。この映画は、彼女は成功した、というようないわゆる伝記映画ではありません、彼女の日常を見つめている。それがこの映画を興味深いものにしていると思います。
また、彼女が下した決断は、われわれが生きていく上で非常に学べること。このアプローチはユニーク。」と語りました。
元首相に変身した姿は、
自分の父とサッチャーさんのミックス!?
オスカー受賞スピーチで触れた、メイキャップ賞受賞のヘアメイクアップ・アーティスト ロイ・へランド氏についての質問では
「マーガレットの外観は、特殊メイクのマーク・クーリエとヘアメイク担当のロイの合作。樹脂で作ったパーツをメイクで上手に隠して顔の造形をするのですが、継ぎ目がわからないほどぴったりのルックスになりました。サッチャーさんの40年を演じるので、40年の歳月の外観を作らねばならなかったのです。
37年前、リンカーン・センターでお芝居の公演をしたのですが、ロイとはその時からのお付き合い。キャラクターを作ることに重きを置いてメイクするユニークなアーティスト。」と言い、最初、自分のメイク姿を見た時は、どこかで見たことのがある、知った人がいるな、という感じだった。老女だが、私の父とサッチャーさんのミックスがいるような感じ、と変身姿を自ら楽しんでいた様子も。
サッチャー元首相の女性としての魅力については
「首相になっても女性らしさを失わなかったこと。政界という男社会でやっていくには、女性らしさを捨てたいという誘惑もあったろうと思うますが、首相になってもヒラヒラのデコレーションのついたブラウスを着たし、ハンドバックを捨てることはなかった。しかし、笑顔や涙といった女性の弱々しいところは決して人前では見せないことを自分に課していた。そこで鉄の女、と呼ばれたのでしょう。」
監督は「彼女の魅力は、権力を得ても、自分の出自を忘れなかった。大多数の普通の人の気持ちがわかるところ。」と述べました。
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2012年3月16日(金)、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
監督:フィリダ・ロイド
脚本:アビ・モーガン
キャスト:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント、アレキサンドラ・ローチ、ハリー・ロイド、オリヴィア・コールマン、イアン・グレン、アンソニー・ヘッド、リチャード・E・グラント
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:ギャガ
原題:The Iron Lady/2011年/イギリス映画/105分/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:戸田奈津子
©2011 Pathé Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute