女性のための、元気になれる俳句16 選・如月美樹 〜月の夜へけものを放ち深く眠る 大西泰世〜

(2008.09.08)

bungaku_080908_ph01 

「月」は秋の季語。ではほかの季節はというと、「春の月」「夏の月」など、季節の名前をつけて使う。秋という季節にとって、「月」は特別な存在なのだ。

 月の夜に放った獣は、たとえば飼っている猫という実際の存在だととらえてもいいだろうが、きっとそうではない。作者はおそらく、眠りに入ることによって、自分の中にある野生を解き放ったのだ。

 ヒトという仮の衣を脱ぎ捨てて、月光の下、自由に野を駈け回る野生という精神の獣。その間、肉体は、確かに深く眠っているに違いない。掲句初出『世紀末の小町』(1989)。