女性のための、元気になれる俳句80 選・如月美樹 朧夜の眠り醒めねばみごとな死 小檜山繁子

(2010.03.24)
 

乾いた季節が過ぎ去り、朦朧とかすんだ「朧」に覆われる春の夜。そこに春の月が出ている夜が「朧夜」である。ぼうっと光る春の月はなんだかなまめかしい。
子供のころ、このまま二度と目覚めないのではないかという恐怖で、よく眠れなかった時期がある。とはいえ、睡魔に勝てるわけはなく、いつしか朝のまぶしい光の中に目覚めるのが常だったのだが。いつしか忘れていたその感覚を、大人になった今に応用したらどうだろう。眠りが醒めなければ死。しかしそれは、恐れることのない、生のひとつの状態としての死だ。永遠の眠りを得た肉体の上に、やさしい毛布のような朧夜が広がっている。掲句初出『流沙』(1975)。