シノエリの美術巡礼中 – 10 - 『水木しげる米寿記念 ゲゲゲ展』直前インタビュー&ゲゲゲの町、調布散策レポート!

(2010.08.06)

2010年3月8日、漫画家・水木しげるは米寿を迎えた。

画業60周年でもある今年、各地で水木しげるを取り上げた展覧会やイベントが開催され、関連書籍も多数出版されており、現在書店には水木先生の特集を組んだ雑誌がずらりと並んでいる。そしてなにより、NHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』が放送中だ。『ゲゲゲの女房』の舞台であり、水木先生が在住しておられる調布は大いなる盛り上がりを見せている。

今、日本でゲゲゲがとっても熱いのだ!!

©水木プロ

そんなゲゲゲブームの中、2010年8月11日(水)から、松屋銀座にて『水木しげる米寿記念 ゲゲゲ展』が開催されます。
実は私……妖怪が大大大好きなのです。
水木ファン・妖怪ファンとしてこれは見逃せない!

そして今回、『ゲゲゲ展』の企画をされた松屋銀座 文化催事課 学芸員 高橋千佳さんに事前インタビューをさせていただけることになり、7月某日、私は高鳴る胸を押さえながら銀座へと向かったのです。
インタビューの中で、高橋さんは今回のゲゲゲ展の見どころ、水木作品の魅力について熱く語ってくださいました。

高橋さんのお話を伺っていたら、私も思わず熱くなってしまいました(笑)

兎に角この展覧会は一見の価値どころか2回でも3回でも見る価値ありです!

私は勿論、8月11日(初日)にこの『ゲゲゲ展』を最優先に行動する予定であります。

 

ズバリ、『ゲゲゲ展』の見どころは?

1年半近く『ゲゲゲ展』の企画に取り組んできた高橋さんに、さっそく『ゲゲゲ展』の見どころを伺いました。

今回の目玉(←おやじではなく……)は、なんといっても「約100点もの貴重な原画」です。

これはすごい!! 原画はなかなかお目にかかれるものではありません。貴重な原画を、今回は米寿記念・画業60周年ということで特別に披露されるのです。

実際に原画をご覧になった高橋さんは、「えぐるような力強いタッチ、詳細な描き込み具合など、印刷物以上の魅力が感じられて……とにかく素晴らしいんです!」と力説。その素晴らしさ、感動を言葉でなかなか表現しきれず、もどかしそうなご様子でした。

また、『ゲゲゲ展』では「河童の三平」「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」の3作品を中心に展示。妖怪画、水木先生ご自身を紹介するスペースもあるそう。

水木しげるは紙芝居からはじまり、貸本漫画、少年誌と活躍の場を拡げました。

その60年の画業の中では、同じテーマが繰り返し描かれています。そこで、会場内ではこれらの異なる媒体に掲載された同内容の場面を、比較して見ることができる展示になるそうです。例えば、貸本版と雑誌版の同場面を、一度に見比べられるのです。

妖怪画はモノクロ原稿と手彩色の作品が並びます。モノクロ原画と着彩原画それぞれの魅力にも注目!

水木しげるの最も有名なキャラクター・鬼太郎は、早くから登場しており、その画業のほとんどを共に歩んできました。しかし、漫画が掲載される媒体やその時の社会情勢が違えば、鬼太郎の性格も随分と変化してきます。
会場内では、あなたが思いもよらない鬼太郎の姿を見られるかも!?

ゲゲゲの鬼太郎のアニメや、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の再現セットもあります!
老若男女が楽しめる展覧会になりそうです♪

 

祖父江慎プロデュース会場内の工夫も必見。

また、水木作品の魅力の一つに作中に漂う「ゆるさ」「のんびりさ」があるのではないか、と高橋さんは指摘されました。

それには私も同意見!水木しげる漫画の登場人物たちは、結構大変な、ひどい目にあっているのにどこか飄々としていて、深刻になりすぎない性格なのです。

そして、『ゲゲゲ展』ではその「ゆる~い、のんびりした感じ」を訪れた人たちに感じてもらえるよう、会場にも様々な仕掛けや工夫が……。
詳しいことは会場を訪れてのお楽しみ☆

ここだけの話、少しだけ言うと、蛍光色のものを身につけて行けば一層楽しめるかも……しれません(笑)

深大寺にある“鬼太郎茶屋”も会場横に出張出店します!この展覧会だけのオリジナル・メニューも登場。「ちゃんちゃんこソフト」の正体とは……?

『ゲゲゲ展』オリジナルグッズも多数販売!
祖父江慎プロデュースの限定グッズもずらりと並ぶ予定。こちらは数に限りがあるので、祖父江グッズ(ちらりと拝見しましたが、もう、すっごく素敵でした!)をお求めの方は早めに会場へ!
はやくしないと私が買い占めてしまいますよ!(笑)

 

ゲゲゲの町・調布を散策。

NHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の舞台であり、水木先生がお住まいになられている調布へ行ってきました!!
調布駅を降りるとそこはもうゲゲゲの町!

駅に設置してあるマップを持って、のんびりと調布の町を散策♪
まずはマップを頼りに「調布まちなかパネル」を一つひとつ辿りました。

鬼太郎発見!ツーショット☆
ぬくもりステーション前でぬりかべと。

「調布まちなかパネル」とは、水木作品の中から「調布」が描かれた場面をピックアップし、まちなかに展示したパネルのこと。パネルの絵を見て周りを見渡すと、「アッ!ここじゃないの」と気付く楽しい展示。
パネル展示の途中には調布市観光案内所『ぬくもりステーション』があります。

門前にぬりかべと鬼太郎がいる案内所の中からは「ありがとう~って伝えたくて~♪」とおなじみの主題歌が。

その歌声に導かれ(吸血鬼ジョニーの催眠ギターに引き寄せられるように)ふらふらと(←その日は猛暑日で軽く熱中症になりそうでした。皆様水分補給は忘れずに!)『ぬくもりステーション』の中へ。『ゲゲゲの女房』の紹介や水木先生の人生紹介など展示が充実。お土産もたくさん売っています。

ちなみにここでは無料で鬼太郎の住民票をもらえます。
もちろん私も入手!

その後、調布駅前からバスに乗って深大寺へ。
バスを降りると、ずっとずっと来たくてたまらなかった“鬼太郎茶屋”が目の前に!!!(感動)

鬼太郎や妖怪たちに囲まれながら、目玉おやじがのっかった20世紀梨のソフトクリーム(20世紀梨ソフトクリームに目玉餅のトッピング 350円+50円)を食べていると、なんとも幸せな気分になってくるのでした。
『ゲゲゲの女房』効果もあってか、鬼太郎茶屋は連日盛況。
2階には妖怪ギャラリーもあります。

鬼太郎茶屋でソフトクリームをぱくり。目玉おやじ付き! 
調布市深大寺 鬼太郎茶屋 / 042-482-4059/
10:00~17:00 (16:30  / 月休

子供から大人まで楽しそうに水木ワールドに浸っているのを見て、
「やはり水木先生が妖怪にどうしようもなく惹き付けられたように、妖怪というのは今なお私たちを魅了してやまない存在なのだ……」
と、(目玉おやじを食べながら)しみじみと感じました。

 

人と妖怪、幸せのかたち

妖怪というと、怖いイメージを抱く方がいるかもしれません。
しかし、妖怪は祟って出てきたりするものではないし、妖怪の話というのはホラー映画や怪談のように、人を無闇に怖がらせるものではありません。
妖怪というのは目に見えないけれどふとした瞬間に感じる不思議な存在であり、怖いものではないのです。
だから、水木漫画もそれほど怖くはない。

昔から、妖怪は描かれて来ました。
妖怪絵巻などを見ても、妖怪はけして怖い存在として描かれていません。
むしろ、そこから感じられるのは、画家の妖怪に対する深い愛着や優しいまなざしなのです。
生き生きと描かれた妖怪たちをみると、「ああ、なんてこの画家は妖怪が好きなのだろう」と思います。
逆に言えば、妖怪好きが描く妖怪画はとても魅力的なのです。
そして、水木先生は妖怪が大好きです。
その妖怪・不思議な存在に対する愛情が、作品をより一層輝かせているのです。

水木しげるさん。

さて、水木先生は次のようにおっしゃっています。
「人間に一番いい環境で幸せに暮らせるところには、自然があり、闇もあり、妖怪もいる」と。
ちょっとは不思議なものに想像をめぐらせるくらいの心の余裕があった方が、人は幸せになれるということを、水木先生はおっしゃっているのではないでしょうか。
「のんびりと、深刻になりすぎず、けれどもちゃんと生きる」ことが大切なのです。

米寿を迎えた今も大活躍の水木先生。
今回は水木先生の素晴らしい作品、そして幸せの秘訣に触れるまたとないチャンスです!

松屋銀座『水木しげる米寿記念 ゲゲゲ展』、盛り上がる予感!
ぜひぜひ足を運んで下さいね!!

 

「水木しげる米寿記念 ゲゲゲ展」

会期:2010年8月11日(水)~23日(月)
時間:午前10時~午後8時
   (最終日午後5時閉場。入場は閉場の30分前迄)
会場:松屋銀座 8階大催場
主催:NHKサービスセンター
特別協力:水木プロダクション  協力:東映アニメーション
企画制作:きさらぎ妖怪舎  企画協力:渋谷出版企画
会場構成:祖父江慎
入場料:一般1,000円(前売り700円)、高大生700円(前売り400円)、中学生以下無料
    前売券はチケットぴあ(Pコード764-213)、ローソンチケット(Lコード37812)にて販売、8月10日まで。
問合せ:松屋銀座 Tel.03-3567-1211(大代表)
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