池田美樹, 池田美樹のLOVE♥ CITY WALKたまには足を止めて眺めてみよう、
私の青空コレクション。
(2008.06.17)
このコラムは「街歩き」がテーマだけれど、私は普段、街なかばかり見ているわけではない。実は、空を眺めるのが大好きだ。 たとえばこの文章は自宅で書いているが、デスクは広い窓に面し、一面に空が見える。この部屋を探すときの条件が「都心で便利、しかも空が広く見える静かな場所」。苦労したけれど、希望通りの場所が見つかってひとまず満足している(その数15回以上の私の“引っ越しライフ”についてはまた別の機会に)。 私達はふだん、とっても欲しいけれどあの服を買うおこづかいがないとか、忙しいのに会社にちっとも報われていない気がするとか、髪を切りに行きたいのに美容院に電話をしたら予約が取れないとか、うーん、いい人なんだけどそれだけなんだよねー、とか、そういった様々な、意に満たないことがらに囲まれている。 運命は人それぞれだし、置かれた立場も違う。けれど、空を眺めるというのは誰にでもできる、平等で確かな、幸せな行為じゃないだろうか、とつねづね思うのだ。作家の村上春樹氏だったら、これを「小確幸(=しょうかっこう)」と認めてくれそうな気がする(小確幸とは、彼が作った造語で、小さくても確かな幸せのこと。エッセイ『うずまき猫のみつけかた』が初出だと思うが、その後もたびたびエッセイの中で登場する)。 抜けるような青空ももちろんいいけれど、雨降りの空も好きだ。どんよりと曇った空もまた、それはそれでいい。雪が降ってくる時なんて最高だし、夜の空も見ていて飽きない。私にとって大切なのは、「この空の下に生きているんだなあ!」という、確かな実感なのだ。 昨年亡くなった臨床心理学者の河合隼雄さんは、その著書『こころの処方箋』の中で、「人の人生には、よいことも、悪いことも、バランスよく等分にあるような気がする」と書いている。長年、研究や臨床の現場で人の心に触れてきた人が言うことなのだから、真実味がある。 空を眺めていると、きっとそうなんだろうなあ、と、じわじわと納得してくる。だって、晴れた青空は誰にも与えられているものだけれど、雨は誰がどんなにがんばっても止められない。でも、私達には、雨が降り出したら傘を差したり、どこかの軒先で雨宿りをしたりする知恵がある。軒先で知り合った人と友達になるチャンスだってある。 街なかで、ふと足を止めて空を眺める人がもっと増えたら楽しいなあ、と思う。「今日は本当にいいお天気ですね」という、紋切り型の挨拶だって素敵に感じてくる。 |
我が家の窓からある日見えた飛行船。飛行船どころか、流星だってUFOだって見えることがあるんです!
山中湖にファッション撮影に行ったときの空。秋の鰯雲です。 熊本県天草の下田温泉にある旅館『石山離宮 五足のくつ』に行ったときの夏の海と空。 イタリア・ピエモンテ州の街・ビエラの空。見えている建物は、先週書いた、ファッションブランド「hLam」のデザイナー、ピエランジェロとグン夫妻の自宅。 イタリア・ミラノの空。出張中、宿泊していたホテルの窓より。 |