女性のための、元気になれる俳句90 選・如月美樹 帰り来て身の月光をふりこぼす 岡本差知子

(2010.09.28)
 

くっきりと美しい月の下での逢瀬は、愛しい人とのものだったのだろうか。甘い記憶をいっぱいにはらんだ月の光は、きらきらと彼女の体を彩っていたことだろう。別れて自宅に帰り、それがはらはらとこぼれ落ちるに任せてみる。あたりじゅうに散らばった月光は、今夜一晩、幸福な気持ちを保ちつづけてくれる魔法。女性ならではの感覚だという気がする。
「月」といえばそれだけで秋の季語。他のどの季節でもない、この時期の季語であることを、月の光の美しさそのものが物語ってくれる。たまには夜空を見上げてみるのもいい。(初出不明、作者は1908生〜2003没)