土屋孝元のお洒落奇譚。琳派について。

(2011.03.04)

先週、出光美術館『酒井抱一生誕250年 琳派芸術
―光悦・宗達から江戸琳派―』展にて
酒井抱一、鈴木其一を見る。
琳派とは、と聞かれると詳しくは分からないという方が多いのではないでしょうか。

現代日本画や、印象派、アールヌーボー、さらにはアンディーウォーホールまでも影響があるのでは、
と言われている日本の絵師達の画風です。

風神雷神図屏風、紅白梅図屏風、燕子花図屏風、夏秋草図屏風などの図柄を見ると、
ああ、昔、教科書で見たことがある、これかと納得されるのではないでしょうか。

簡単にまとめると、本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)、俵屋宗達(たわらやそうたつ)、に始まり、
尾形光琳(おがたこうりん)、尾形乾山(おがたけんざん)でさらに表現を極め、
酒井抱一(さかいほういつ)、鈴木其一(すずききいつ)、で新たな江戸琳派の表現へという流れです。
前述の絵師達が中心人物で王朝時代の装飾美を豊かに翻訳し、
斬新な造形美を生み出したものです、
京都で生まれ、江戸まで続きました。

 

カンパニュラ(ほたるぶくろ) ©Takayoshi Tsuchiya

 

宗達、光悦については、宗達が背景を描き書を光悦が書く。
当時、宗達は俵屋という屋号の扇面、料紙の絵を描く商売をしていました。
光悦は寛政の三筆とも言われ、
松花堂昭乗(松花堂弁当で有名ですね)、近衛信尹(このえのぶただ)、本阿弥光悦。
この三人に烏丸光広を加えるという識者もいるようですが……。

先日のお茶席にて松花堂昭乗の書の軸を拝見しました、
この時期には掛けるモノのようです。
もとい、宗達による金銀泥による花鳥風月の料紙などに散らし書きによる光悦の書は、
琳派を代表する仕事でしょう。日本の美術史上でも特に優れた美意識を見ることができます。

江戸末期から明治時代には宗達よりも光琳のほうが評価が高く、
そのため多くの宗達作品が海外へ流失していてもったいないものです。
酒井抱一、鈴木其一についてはよく江戸琳派という名前でも呼ばれています。

酒井抱一は、姫路城で有名な姫路藩酒井家の出身で、
30代後半で出家して40歳を過ぎてから 尾形光琳を憧憬し絵を始めた人で、
光琳の100回忌に光琳の追悼展覧会を開き、絵師としてもさらに成長したとも言われている人物です。

この時の図録はヨーロッパへ渡り、
当時流行のジャポニズムに影響をあたえ、
印象派やアールヌーボーへと昇華したようですね。
クリムトの作品にも琳派的な表現は見られて当時の影響力はかなりのものだったのでしょう。

酒井抱一は、燕子花図では光琳の本歌取り、宗達の風神雷神図も模写し、
自分なりの世界を作り出しています。

 

ストック ©Takayoshi Tsuchiya

 

抱一の時代には、金箔地屏風よりも銀箔地屏風が好まれ銀箔による月光のひかりの表現が時代の中心で、
文化的には安土桃山の絢爛豪華な金箔地の世界から、
江戸へと移行して好みも江戸風の銀箔地を好むようになり、
銀箔地の紅白梅屏風や、夏秋草図屏風は、江戸琳派を代表する作品で、
光琳の紅白梅屏風とは、また違う趣きがあります。
その一番弟子であった鈴木其一は師匠とならび それ以上といわれた描写力で描いた、
朝顔図屏風、向日葵図などは大変素晴らしいものです。

向日葵の花はいつ頃から日本に渡来していたのでしょうか。
甚一の師匠でもある酒井抱一も向日葵を描いていますから、江戸初期には日本に渡来していたのでしょう。
今の向日葵と変わらない品種のようで、抱一や甚一の絵を見るとよくわかります。
あのゴッホのヒマワリとも似た種類ですね。
江戸時代は園芸が盛んに行われ、
盆栽や鉢植えを楽しむ文化は貴族から武士階級、町人まで盛んだったようで、
当時は鉢にもこだわり、染付や伊万里焼などのものも浮世絵などに見受けられます。
幕末に渡来した植物学者ロバート・フォーチュンの記録にも当時、園芸の盛んな様子が残されています。
この時代、ヨーロッパ、とりわけオランダ、イギリス、フランスなどとも並び、それ以上の園芸文化でした。

琳派に話を戻し、甚一作品は評価がいままで低く、海外へかなり流失してしまいました。
最近になり、甚一は近代絵画の先駆的な絵師ではと最近再評価され始めたようですが、
植物の描写力は見習うべきものが多く、僕も参考にさせてもらっています。

今開催中の畠山記念館での甚一の向日葵図は見なくてはならないモノと思います。

ひまわり ©Takayoshi Tsuchiya

 

出光美術館 東京
酒井抱一生誕250年 琳派芸術
―光悦・宗達から江戸琳派―

2011年1月8日(土)~3月21日(月祝)
ハローダイヤル 03-5777-8600
東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階)
10:00~17:00
(入館は16:30まで)
毎週金曜日は〜19:00
(入館は18:30まで)
一般 1000円
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html

 

畠山記念館
酒井抱一 琳派の華

2011年1月22日(土)~3月21日(月祝)
Tel.03-3447-5787
東京都港区白金台2-20-12
月休(ただし3月21日は開館)
10:00~16:30(入館は16:00まで)
一般 500円
※中学生以下無料 (ただし保護者の同伴が必要です)
お抹茶 400円(干菓子付き)10:00〜16:00まで展示室にて随時
http://www.ebara.co.jp/csr/hatakeyama/display/2010/winter.html