土屋孝元のお洒落奇譚。花を上手く描くには……。

(2010.08.17)

人に絵を教えていて気づくことがあります。
僕が教えているのは奥様達が多いのですが、「先生、初めてなのでわかりません。」
とおっしゃいますね。小学校、中学校の美術の先生方はいったい、何を教えていたのでしょうか。

簡単な水彩や色についての知識など勉強してきていると思うのですが、、、
花を基本に描いてもらうと、まず構図に苦労し どのように花を画面に入れると美しいか、
どの位置からがその花らしいのか、とか、わかりにくいようです。
自分が好きな位置から、その花を描いて その花らしさが表現できたらいいのですが、絵にはこれが正解という回答はないと思います。

僕は子供の頃から絵が好きで、どこかに出かけてくると 帰ってからその出かけた場所の風景などを必ず絵にしていたようです。
昔、おじいさんの家で おじいさんが日曜大工作業をしている横で、その木端などを使いどこかで見たエンジンのカタチを木材で作っていたこともあったようです。
このように自分の見たものを自分なりに表現してみる。
このような作業が絵を上手くしてくれます。

僕が子供の頃にはオモチャも優れたものもあまりなく、みんな自分で手作りしていました。

絵を描くとは、自分なりに工夫、研究し、いろいろと試行錯誤を重ねて この時はこの色に胡粉(日本画の画材、貝殻の粉を砕き白色の絵の具として使う)を入れると彩度が上がるとか、白は紙の白を残すと効果的とか、水彩絵の具、特に、赤系はウィンザーニュートンが一番綺麗だとか。常に頭を柔らかくしていろいろな方向から考え、常識にはとらわれず、自分ができるかぎりの工夫と努力を重ねる。

過去の作品はできる限り本物を見ること、最初は自分の好きなものだけでかまいません。

日本画、油絵、彫刻、仏教美術、版画、現代絵画、書、陶芸、篆刻、庭、建築、
見続けていくうちに、だんだんわかってきますから。
花を描く時に、うまくみせるポイントをお教えしましょう。

これは自分なりに見つけたものです。
画面にたいして花をどのように配置するか。花の種類によりますが、厚みのある花(筒型)ならば花が横に見える様に花弁の本体を7、花の中心部分を3。7対3にぐらいに、そうすると花の厚みも上手く表現できて その花らしくなります。筒型のチューリップや百合などはこの仲間です。筒型の花は正面から描くのは難しいですね。

©Takayoshi Tsuchiya

花に正面がある花達、これはバラや牡丹、ガーベラ、ラナンキュラス、など花弁の多い多くの花達です。

こんな花達は真正面よりも少し横によけて、花弁の厚みが見える様に描くと 描きやすくなると思います。よく観て迷わずに思いきり描く(線をひく)と線もイキイキとして見えてきます。

線描がいきていると色をつけても良く見えますよ。

僕は、透明水彩を使う場合には、コピックペンの0.3mm か0.1mmを使います。このペンは耐水性で水彩をのせても滲みません、線描がいきて水彩自体も上手くいきます。
画面に対して花を少し大きく描くとおおらかで元気良く見え、
これまた全体として良くなります。

色づかいについて、赤系の花を描く時には反対のブルー系の色を影に使う、
黄色やオレンジなら紫、この反対色はそれぞれの色の彩度を上げて それぞれの色が美しく見えるのです。

色彩学的にはハレーション効果(反対色を並べるとその接地部分が眼にチカチカと見える効果)を利用します。何よりも一番のひけつは自分の好きな花を描くこと。嫌いな花は上手く描けないですよね。

©Takayoshi Tsuchiya