デザイン・トランスヨーロッパ – 4 - ユーモアのセンス溢れるセラミック、ハンガリー人陶芸デザイナー、ルブロイ・ゾルタン。

(2009.03.12)

今年、31歳の陶芸デザイナー、ルブロイ・ゾルタン(ハンガリーは日本同様、名字が先)の作品をブダペストのラダイ・ギャラリーで発見した。コーヒーセットがどこか歪んでいたり、花瓶にユニークなドローイングが描かれたり、いわゆる日常に使うセラミック・プロダクトが彼の手にかかると特別なものに変化する。大学卒業後もハンガリーの老舗ヘレンドで磁器の技術を学ぶなど、製作への情熱を惜しまない才能も技術も備えた期待の新人です。

浦江由美子(以下、浦) 陶芸に興味を持ったのはどういう過程からですか?

ルブロイ・ゾルタン(以下、ル) 今でも続けていますが、子供の時から絵を描くのが好きだったんです。いわゆる“普通の”プロダクト・デザイナーになりたかったけれど正直、車や機械といった仕事に携わるのは自分が本当に好きなことではなかった。そんな中でもっと楽しくて、人により近いユニークな表現方法を探していました。陶芸には魂があるし、マスプロダクトと職人の中間といった気がします。特に制限はなく、絵を描いたりも出来るし、便利で機能的な器が作れます。アートのためのアート的な作品は好きではありませんので機能を持った何かを制作することのほうが自分にとってしっくりきます。そして最終的に自然にも近い、環境にもやさしい、何世紀にも渡る伝統のあるエリア、陶芸を選んだのです。

 ラダイ・ギャラリーのオーナーからルブロイ・ゾルタンは若いけれど海外でも賞も取っているということを聞きました。それはいつ、どこでだったのでしょうか?

 ハンガリー国内ではボトル・デザインとセラミック・デザインの分野でデザイン賞をいただいています。2007年にドイツのフランクフルトでのテンデンス・ライフスタイル・フエアというデザイン見本市で賞を頂きました。それから国外での活動も広がって、デザイン陶芸家として、国際的にデザイン界で紹介されるようになりました。

 バトミントンの羽根のソルト&ペッパー・テーブルウエアなどあなたの作品にはユーモアがありますが、これはあなた独自のユーモアのセンス? それともハンガリー特有なものですか?

 このユーモアは私のオリジナルですが自分を取り囲む環境からは影響があると思います。東欧人は人生やその他の事柄に違った見解があります。日常生活に使われるものを制作するのはつまらないことかもしれませんが、そこに私はユーモアと新しいルックスを加えてみました。

 ハンガリーのデザイン・シーンをどう思われますか? 若い人達はデザインに関心を持っていますか?

 ハンガリーのデザイン・シーンは小さいですが才能のあるデザイナーがたくさんいると思います。この国では資本主義が1990年以来、民主主義になってからも日が浅く、デザイナーになるのは簡単なことではありません。大きな変革はそう前のことでもなく、以前はデザイン自体もとても面白いスタイルがあったと思います。当時、デザイナーは会社で雇われたデザイナーでしたが、プロダクトに関しては上からたいしたコントロールはありませんでした。多くの場合、意味のない政治的な指示はありましたけれど。変革後はそれぞれ、全く違う職業につきました。政府からの援助はありませんでしたから。私はまだ若いので変化はそれほど困難ではありませんでしたが、この国のデザイン産業のシステムはそうであるべき早さでは変わっていきませんでした。
若い世代はオープンで新しいものが好き、良いデザインにも興味を持っていますが、悲しいことに彼らは安いデザイン商品(中国製)を求めています。全てが中国で生産されているという事実はあまり良いことと思いませんね。こうした消費は悪循環です。私は理想主義なのかもしれませんが、量産貿易が良いとは思えません。

 作品の中で一番気に入っているものはどれですか?

 普通、その時に制作しているものに集中していますね。今はちょっとかわったバター・ボックスを製作しています。作品そのものをいじって、新しい存在感を持たせるのです。また、お客様に気に入っていただいた人気のある商品には特に愛着がありますね。サーディーン缶とバトミントンの羽根はヒット商品です。自分のやりたいことと将来の展開がどうなるかを見極めるのは難しいことですが、陶芸をやるにはこうしたリスクも抱えることになります。アイデアが浮かんで、それがものになっていくのには時間もかかりますので、人気というのはある意味、その先への影響に危険なことでもあります。ただ、私の作品を見て人が笑ってくれたり、目を捉えていることを知るとリスクを抱えての制作にも価値があると思えるのです。

ルブロイ・ゾルタンの商品は日本国内ではまだ販売されていません。
関心のおありの方は直接、メールでのオーダーをお願いします。

info@lubloy.hu

www.lubloy.hu
 
ヨーロッパでは以下のギャラリーで取り扱われています。

Raday Gallery, Budapest, Hungary
Rady Street 8 H-1092 Budapest Hungary
Tel.+36 1 218 0936

Da Loam, Graz, Austria
Mariahilfer Str.11
8010 Graz
Tel.+43 316 817 338
Fax.+43 316 32 69 40

『salt&pepper-lubloy』

『cactoo vase-lubloy』

『silver line-lubloy』

『garden vase-lubloy』

『calder set-lubloy』

ハンガリー人陶芸デザイナー、ルブロイ・ゾルタン。