アートニュース Fromミュージアムカフェ – 6 - 千歳一隅の機会……作家の思いを具現化した展覧会 川村記念美術館『マーク・ロスコ 瞑想する絵画』好評開催中。

(2009.03.05)

20世紀後半のアメリカで活躍した画家マーク・ロスコ。

様々なスタイルの作品を発表した後、大きな画面にぼんやりと存在する、生命感のある雲のようなかたちが浮かぶ表現に到達したロスコの作品は、世間の注目を集めました。
抽象画家と称されることが多いですが、一方ではそんな抽象的な表現の中にもメッセージ性の強い「精神性」が感じられるとの評価が高く、表現のアクティブさも含め、どのジャンルにも属すことのできない独特の存在としてロスコの絵画は存在していました。

世界的にその人気は高く、死して30年以上経った今でも多くのファンがいます。2007年、アートオークション大手のサザビーズで行われたオークションでは、ロスコの絵画が当時の現代アート作品では史上最高額の7280万ドル(日本円にして約87億円)で落札されたことも記憶に新しい出来事です。

ロスコは生前、展示される空間までも自己表現の一環だという考え方から「自分の絵画空間」という、他の画家の絵とは一緒にされず、自作だけが部屋の壁に掛けられ、自分の思いどおりに照明や展示がなされた部屋を主張するようになります。
今回は、そんなロスコの信念により30枚の連作の運命が変化していった『シーグラム壁画』のうち15枚が展示されるとても貴重な展覧会。

『突き当たりの壁のための壁画』 1959年 ワシントン、ナショナルギャラリー
©1998 by Kate Rothko Prizel and Christopher Rothko

今回、30枚のうちの半数が奇跡的に一堂に会する『シーグラム壁画』とは、ニューヨークのシーグラムビル内にある最高級レストラン「フォー・シーズンズ」の一室のために元は制作されたもの。その絵が飾られるはずだった場所は、セレブリティたちが夜ごと着飾って、豪華な食事とおしゃべりを楽しむところ……。制作をしていたロスコは、作品が飾られるそのスノッブな雰囲気に落胆し、一度は喜んで引き受けた話を断り、そのため完成させた30枚の絵は行き場を失ってしまうことになったのです。

今展では、散逸した『シーグラム壁画』をまとめて展示するということが実現します。15点の絵画が集まった「幻のロスコ・ルーム」は、絵と絵の間隔をできるだけ近づける、壁の高い位置に掛けるなど、制作当時のロスコの構想に基づいて展示されてます。

さらにはロスコの直筆の手紙を本邦初公開。ほかにも展示模型や関連作品、それ以前の大作、以降に制作された幻の連作など13点も紹介。
ロスコの想いが具現化された、その真髄に迫る展覧会です。

さらにはロスコがリードに宛てた16通の手紙を本邦初公開。ほかにも〈シーグラム壁画〉のための展示模型や関連作品、それ以前の大作、以降に制作された幻の連作など13点も紹介。ロスコの想いが具現化された、その真髄に迫る展覧会です。

また、展覧会場である川村記念美術館は、その敷地に溢れる自然や併設の施設もあわせて楽しめる、「アートな時間」を提供してくれる場所。今展会期中は冬が終わり春が訪れ、そして初夏へという自然を味わうには絶好の季節なので、ぜひ展覧会と一緒に同館の自然散策路にも足を運んでみてください。

『マーク・ロスコ 瞑想する絵画』
期日:2009年2月21日(土)~6月7日(日)
会場:千葉・川村記念美術館
料金:1500円(一般)ほか
問い合わせ:川村記念美術館(自動音声案内) Tel. 0120-498-130

『テート・ギャラリーのシーグラム壁画展示のための模型』 1969年 テート・アーカイヴ ©Tate, London 2008
『テート・ギャラリーのシーグラム壁画展示のための模型』 1969年 テート・アーカイヴ ©Tate, London 2008
テート・モダンのロスコ展会場(2008年) ©Tate, London 2008