女性のための、元気になれる俳句66 選・如月美樹 冬来たる眼をみひらきて思ふこと 三橋鷹女

(2009.11.09)
 

冬がやってきた。しんと澄んだ空気、きらきらした物音の輪郭。小さなものもたまらなく愛おしく感じる季節だ。

目を見開くのは、周りの何かをよく見るためだけではない。己の心のうちをも深く見つめるためだ。人は、自分のことをよく知らない。深く、深く。ありのままの自分を見つめるために、これ以上ふさわしい季節はない。

それは、ときには痛みをともなう行為である。いつもならかき消されてしまいそうになる勇気をふるい起こすことができるのは、冷たい外気に触れて、自分の温度に気づくから。絶え間なく熱を生み出す肉体をもつ生命。それが自分自身なのだと気がついたら、始まりだ。掲句初出『魚の鰭』(1941)。