土屋孝元のお洒落奇譚。日本には五つの季節がある?
庭にはいろいろな生活が……。

(2011.06.30)

日本には四季ではなく、五季がある。

梅雨の季節、ある人が日本には四季ではなく、五季があると書いていました。春、夏、秋、冬、に加え、梅雨を入れるということですね。日本の梅雨は平均して40日くらいになり、季節とよぶにふさわしいと思います。

雨の句で
「五月雨や集めて早し最上川」
さみだれや あつめて はやし もがみがわ

旧暦ですから、新暦では、5月末から7月初旬ぐらいにあたるのでちょうど梅雨頃でしょうか、

この雨を表す表現は世界的にみても日本には数多くあります。

小糠雨、天気雨、穀雨、時雨、五月雨、皐月雨、驟雨、秋雨、霧雨、春雨、氷雨、通り雨、などなど、一年を通して表現があるのですね。

“こぬか雨ふる御堂筋……”なんて歌の歌詞になったり、天気雨が降ると「狐の嫁入り」があるとかないとか、不思議な伝承もありますが、昔から日本人は雨をも楽しんでいたのかもしれません。

ガマガエルが怖かったです。

雨のシーンで思いだすのは、黒澤明監督の『七人の侍』です。この雨のシーンは日本映画史上でも最高の活劇場面だと思いますがいかがでしょうか。かのハリウッドの名監督達も、この場面を参考に映画を撮影したとも伝えられています。

「雨、雨、降れ降れ、母さんが、蛇の目でお迎え嬉しいな……」こんな歌もありました。今は蛇の目傘は珍しいモノになりましたが、子供達が学校か幼稚園に行ってから、雨になり、帰りの時間にお母さんがお迎えにやって来てくれる、それを楽しみにしている微笑ましい光景ですね。はるか昔、僕もお迎えに来てもらった事を思い出しました。

その頃の思い出ですが雨が降ると、ガマガエルが帰り道に出て来て、すこし怖かったなんてこともありました。なんで怖かったのかと言いますと、ガマガエルをいじめたり、殺したりすると、ガマのぶつぶつがうつるとか、うつらないとか。その当時の子供達の間では伝わっていたのです。最近、都会では、ガマガエルも見なくなりましたね。

庭のかわいい住人たち。

うちの家まわりでは、ときどき雨が降ると窓の外にヤモリを見かけます。ヤモリは「家守」とも書き家を守るとも言います。ヤモリ達はまだ元気に暮らしてくれているようです。ある冬に家の中にヤモリが冬眠から覚めて出てきて、かわいそうなのでエサを与えてみたのですが、エサも食べずに死んでしまいました。かわいそうなことをしてしまいました。

他にも庭にはカナヘビ、トカゲですが、住んでいます。たぶん庭の玄関先の植物に付く、紋白蝶の幼虫やシジミ蝶の幼虫、蚊や蜂など、小虫などを食べているのだろうと想像します。皐月の葉の上で日なたぼっこをしていたり、ガーデンシクラメンの葉の上で時々見かけますが、まったく逃げません。

庭にはカマキリも長年住んでいて、毎年、卵から孵り一夏を過ごし、大きくなって秋から初冬には死んでゆきます。小さいながらも庭では、それぞれの営みがあって観察すると面白いものですね。

松田正平さんのような植物と昆虫の絵を。

雨の話に戻り、この時期には、クチナシの花が綺麗に咲いてくれているのですが、今年は少し遅れているようで、あの花独特の香りはまだ香ってきていません。たぶん今冬の寒さが影響しているのでしょうか。このクチナシにも決まって蛾の幼虫がやって来ます。朝、家のまわりの掃除をしていると、クチナシの下に幼虫の糞を見つけるからです。段々とその糞が大きくなり、ある朝には、大きな白い蛾の成虫になっているのを見かけたことがありました。殺虫剤を撒くのもどうかと思い、いつもそのままにしています。

先日、師匠のギャラリーにて李朝の民画で面白いモノを見せていただきました。まるで、若冲の「池辺群虫図」の様な、カエルや蛾や蝉、昆虫と植物をまとめて描いているのです、どちらが先かはわかり兼ねますがこういう描き方もあったのですね。

その当時の画家達が李朝民画を手に入れていたのかもしれません。昆虫画では、熊田千佳簿さんという大大先輩もいらっしゃるのですが、まだまだ先は長いのです。いずれは、若冲か、松田正平さんか、熊谷守一さんのような植物と昆虫の絵も描いてみようと思っていますが……。