『復活への記憶 東北ふるさとの
アルバム』被災前の姿が写真集に。
(2011.10.07)
岩手、宮城、福島、3県の
被災前の姿が写真集に。
東日本大震災で被災した、岩手、宮城、福島、3県被災前の「記憶の風景」をまとめた写真集『復活への記憶 東北ふるさとのアルバム』の展覧会を見に、新丸ビル7F 丸の内ハウス「ライブラリー」へ行って参りました。
写真集より、13点が抜粋し展示されていました。
今まで、数多くの写真を撮って来ましたが、展示されている写真にも関わらず…手が震えてなかなかピントが合いません。(手ぶれ機能も付いているのですが……)無念さと切なさが、じわじわと込みあげて来ます。展示されていた中から、数点ではありますがご紹介致します。
東北最大の大河、新北上河口新北上川のヨシ原が……。
トップの写真は本来なら12月から収穫を迎えるという、東北最大の大河、新北上川河口には豊かなヨシ原です。10㎞(150ヘクタール=東京ドーム約10個分)に及ぶ黄金色に輝くヨシの大海は風に揺られて、涼やかな音を鳴り響かせる。その美しさは「日本の音風景百選」に選定されました。まるで、ミレーやブリューゲル、ゴッホの絵の一部のような光景が、一瞬にして流されてしまいました。(→津波発生後のヨシ原)
津波に飲み込まれた豊かな緑と美しいリアス式海岸。
この写真集の冒頭に、内舘牧子さん(秋田県出身。お父様は岩手県出身。)のコメントが記載されています。その中の一部を抜粋します。
「建築家の安藤忠雄さんが、復興にはその土地の人々の「記憶の風景」が大切なのだと発言された。
胸が熱くなった。
私は東北の地霊(その土地に棲む霊)は、「水」と「緑」と「祭」だと考えている。
これらを損なうような都市作りをしてはならない。
これらは人々にとって「記憶の風景」なのだ。」
南三陸町は豊かな緑と美しいリアス式海岸を持つ恵まれた土地。
この緑豊か町並みを津波が飲み込んでしまった。
北リアス線は、岩手県の宮古駅~久慈駅を結び、野田玉川駅~陸中野田駅間には、のどかな田園風景が広がっていた。冬には、名物の「こたつ列車」が走り、林の奥には、十府ヶ浦海岸へと続き、名勝として愛されていた。また、多くの歌枕にも登場した美しい浜も、津波の被害から逃れられなかった。
現在、北リアス線は宮古駅~小本駅間、陸中野田駅~久慈駅間で運行していています。
“町”は蘇り、
“心”には活きるチカラが湧き出てきます。
私も神戸在住の時、阪神淡路大震災に遭いました。
倒れて来たタンスから、寝ていた子供を守って亡くなった友人。大きな家具の角が額に直撃して亡くなった知人。地震によって戸が開かなくなり、外へ逃げ出せずに火災に巻き込まれた友人のお父さん。多くの方が亡くなりました。
神戸では、津波の災害は免れたものの火災が発生し、二次災害が起こってしまいました。
3月11日は、夜になってからも震えが止まらずに少しの揺れでも感知してしまい、フラッシュバックを起こしてしまいました。(当時、東京在住の阪神淡路大震災に遭った人は、皆同じことを言っておりました。)
町の復興には、長い歳月を要し。心の復活には、一生かかる。と、阪神淡路大震災でも言われました。
でも必ず…
“町”は蘇り、“心”には活きるチカラが湧き出て来ます。
岩手県本吉郡南三陸町
志津川の向日葵。
2010年、志津川駅裏手の休耕地にまいた向日葵の種が、見事な花を咲かせた。向日葵畑の向こうに見えるのは、志津川中学校。向日葵は今年数輪だけ咲いている。
気仙沼出身の熊谷育美さんによる歌
『雲の遥か』とともに。
この写真集の総合プロデューサー瀬戸口さんへ、お話をうかがいました。
「南三陸町志津川の堤防決壊後、防災対策庁舎が押し寄せる津波にのみこまれていく写真を高台にある志津川小で撮り続けた写真館主佐藤信一さん。被災地の避難所・南三陸ホテル観洋を訪ねて、佐藤さんから被災前の向日葵の写真をお借りしました。
その佐藤さんに紹介された気仙沼の写真館主熊谷孝良さんとは、3度目にようやくお会いできました。話をしている時に熊谷さんの娘さんが歌手をされているという事を伺いました。
そして、「どんな曲か知りたいです。」と尋ねた時に、CDをかけてくれた曲が『雲の遥か』でした。
胸にしみる曲で、この曲が今回の写真集にはぴったりだと思い、レコード会社へ連絡をとり、一緒に東北のためにできることをお手伝いしたいと申し出ました。育美さんも震災日は、地元気仙沼で被災しましたが、助かった時…「ただ泣き笑うしかなかった」事を満月のライブで話されていたのが印象的でした。満月のライブへ2回伺いましたが、聞いている方々は涙があふれていました。
今回の写真展で来場者に聴いて頂き、写真集で「鎮魂と復活」を感じてほしいと思っています。
もっとみんなが、一瞬ではなく、継続して東北に向き合うという願いを写真集と曲に託しています。」
会場に流れる曲を聴きながら写真を撮っていましたが…その流れる曲にも“ぐっと”きてしまいます。
震災1日前にレコーディングが終了した熊谷育美さんの「雲の遥か」。
気仙沼をベースに活動を続けている熊谷育美さんの優しく心にしみる曲と歌詞が、まるで被災に遭われた方々と、亡くなられた方々を結んでくれるように聞こえました。
その歌詞の内容を少し…ご紹介致します。
「田んぼを見渡して故鄉と思い合わせた
電車に搖られながら窓越しに記憶を辿る」
という歌詞から始まり…
「もしも弱音を聴いたなら昔のように笑ってほしい
坂道をのぼって 雲の遙か あなたが見えた」
春を感じながら…
また、この桜を堪能しながら並木路を歩ける日が、一日でも早く訪れるのを心より祈り、そして待っています。
1500円(税別) 2011年9月11日発行
※この本の売り上げの一部を被災3県に寄付いたします。