リブロ・トリニティ – 8 - 『極楽ハイブリッドカー運転術』島下泰久 著

(2009.08.12)
~著者+編集者+書店スタッフ、著者+書店販売員+読者……3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介するコーナーが「リブロ・トリニティ」です~

島下泰久 著

『極楽ハイブリッドカー運転術』

『極楽ハイブリッドカー運転術』
島下泰久 著(ニ玄社)
840円(税込み)


■ 著者より

島下 泰久(しました・やすひさ)

1972年神奈川県生まれ。専門誌契約スタッフを経て1996年よりフリーランスのモータージャーナリストに。走行性能だけでなく先進環境・安全技術、ブランド論、運転等々クルマを取り巻くあらゆる事象を守備範囲とした雑誌、webサイトなどへの執筆活動のほか、テレビ、ラジオへの出演、エコ&セーフティドライブをテーマにした講演も行なっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー2009-2010 選考委員。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。著書として他に「極楽ガソリンダイエット」(二玄社刊)がある。

『欲望という名のブログ』

新型プリウスもインサイトも徹底的にテスト。

近頃のハイブリッドカーブームを見渡してみてふと思うのは、ハイブリッドカーさえ買えばすべてバラ色、エコノミーでエコロジーで嗚呼素晴らしい! という雰囲気になってないか? ということです。

ハイブリッドカーだってクルマには変わりないのですから、その優れた性能を活かすも殺すもドライバー次第。ただハイブリッドカーを手に入れればエコなのではなく、それをいかに使いこなすか、その優れた燃費性能を引き出すかが、エコノミーのためにもエコロジーのためにも、とっても大事なことなんですね、本当は。

もうひとつ、そもそもクルマにとっての『エコ』って一体何だ? という話も改めて考えさせられるところです。ハイブリッドカーの話をする時、専門誌でも経済誌でも一般誌でも、とかく話題に上るのは「リッター何km走る」といったことばかり。ですが忘れてはいけないのは、クルマは1台だけで走っているのではないということです。たとえば自分の燃料を節約しようと周囲に迷惑なほどゆっくり走ったら、社会全体で見た場合それは逆効果。渋滞ができて加減速が増えて、つまりそれは反エコでしか無いのです。

つまりハイブリッドカーも、本当の意味でのエコドライブをしなければ意味は半減なのです。この「極楽ハイブリッドカー運転術」は、まさにそのことを考えたのが執筆のきっかけでした。

本の中では、新型プリウスもインサイトも、更には旧型プリウスも引っ張り出して、燃費計測をはじめとするテストを徹底的に行なっています。ですが、それは数字だけ追いかけて「やっぱりハイブリッドカーってすごい!」と言うためではありません。むしろ上に書いたような、ハイブリッドカーだって正しい運転をしないと意味が無いよ、ということを明らかにするためです。

スピードにもこだわりました。そう言うと誤解を招きそうですが、闇雲に飛ばす云々という話ではなく「ゆっくり走って燃費向上」という世間一般で言われているエコ運転のメソッドを、この本では否定しています。

目的地までできるだけ早く着きたい。それはクルマに乗る以上、当然の欲求ですし、それはクルマの価値の大きな部分を占めるもののはずです。だいいち、ゆっくり走ったら燃費がよかったというだけでは当たり前の話でしかありませんよね? 所要時間は変わらないのに燃費は向上。それこそが目指すべきエコドライブだと私は考えます。この本の中では、そのためのハイブリッドカーの運転方法を徹底的にレクチャーしています。

最新ハイブリッドカーに関心のある方、買おうか悩んでいる方、新型プリウスのオーダーを入れたけどまだしばらく納車待ちという方、インサイトをすでに買っていて打倒プリウスに燃えている方、旧型プリウスでまだまだ燃費をきわめるぜという方に、是非読んでいただけたらと思います。

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■書店スタッフより

ジュンク堂書店新宿店 実用書担当大溝 誠(おおみぞ・まこと)

ジュンク堂書店新宿店8Fで、実用書を担当。コミックから料理本までさまざまなジャンルの本が溢れる広いフロアで、大忙しの毎日。

自動車、スポーツなど、おもに男性向けの実用書を扱っている。

苦戦の自動車本の中で、エコカー関連本は好調。

正直なところ、自動車関連の書籍はこのところあまり調子がいいとは言えません。自動車好きが減ってしまったのか、全般的に動きはよくないようです。

そんな中で、売れる自動車本は二極化しているんですね。ひとつは、いわゆる歴史的名車などを扱った、豪華で作りのしっかりした自動車マニア向けの本。このジャンルは、高額なものでも売れるんです。2万5000円もする『タルガ・フローリオの神話』も、このあいだ1冊お買い上げがありました。

もうひとつは、やはりエコカー関連でしょうね。特にハイブリッドカー関連は、いい動きがあります。ムックの『プリウスのすべて』がダントツの売れ行きでしたが、ほかのムック・書籍もいい感じで売れています。

『極楽ハイブリッドカー運転術』は、去年出た『極楽ガソリンダイエット』の続編ですよね。あの本もタイムリーでしたが、今回もちょうどプリウスの発売に合わせたタイミングです。電話での問い合わせも結構ありますよ。ほかにもハイブリッド関連の書籍が何冊か出ていますので、並べて配置してあります。

最近は、女性向けのエコ・ロハス系の雑誌がよく読まれています。『極楽ハイブリッドカー運転術』は、そういった女性の方にもおススメできる自動車本だと思います。

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■編集者より

二玄社鈴木 真人(すずき・まなと)

1960年生まれ。名古屋出身。主婦と生活社で『週刊女性』『JUNON』などの編集に携わり、2000年に二玄社に入社。『NAVI』編集長を経て、現在は別冊単行本編集室室長。自動車関連書籍を中心に、幅広い分野の書籍・ムックを編集している。未来の自動車好きを育てるため、子供向けの「はじめて●はっけん のりものずかんシリーズ」を始めた。

ポルシェ乗りならではのエコドライブ本。

『NAVI』誌の編集を始めた頃、最初に担当したのがホンダの初代インサイトでした。軽量化のためのアルミボディ、空力を考えてリアホイールを隠したスタイリング、停車するたびに自動でアイドリングストップする機構など、「未来感」に溢れたクルマでした。発進のとき、スーッと空中に浮かぶように静かに動き出す感覚が新鮮だったことを覚えています。

当時は、ハイブリッドカーはまだまだ発展途上の技術で、1997年に先行して発売されたトヨタのプリウスを含めても、路上にはそれほど多くの仲間はいませんでした。燃費系を見ながら、リッター20キロ、25キロと記録を伸ばしていくのが楽しく、ちょっとした優越感に浸っていたものです。

2009年の今、新しいインサイトとプリウスの登場で、ハイブリッドカーが主役に躍り出た感があります。リッター20キロなんて、今ではたいした自慢にはなりません。環境問題への関心の高まりが、この数年で自動車の置かれる状況を劇的に変化させました。

エコカー、ハイブリッドカーがもてはやされるのはもちろんいいことなのですが、少し心配な点もあります。ハイブリッドカーに乗っていればエコ、と安易に考えてしまいがちなことです。『極楽ハイブリッドカー運転術』では、ハイブリッドカーの特性を見極めて、そのポテンシャルを十分に発揮するための乗り方を提案しています。そして、自分のクルマの燃費だけではなく、まわりの交通環境も視野に入れた運転が大切なことを説いています。

著者の島下泰久さんは、プライベートではポルシェをこよなく愛する血気盛んなモータージャーナリスト。一見すると、エコとかハイブリッドカーには縁遠いように見えます。でも、だからこそ、この本が書けたのでしょう。エコドライブというと、ひたすらゆっくり走る退屈な運転を思い浮かべてしまいます。でも、それでは長続きしません。ハイブリッドカーだからこその運転の楽しみを追求しているのが本書なのです。

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