『Age(アージュ)』特別インタビュー! 原田知世さん ナチュラルな生き方の秘密

(2010.02.22)

デビュー以来、ずっと彼女は私にとって「知世ちゃん」だった。同じ九州の出身で年齢も近く、勝手に親近感を抱いていた。時を経ても、外見はいつまでも変わらぬまま、着実に自分の世界を築いていっているように見える。その秘密はなんだろう? と、向かい合って尋ねてみたくなった。
しばらく考えてから、ゆっくりと言葉を選びつつ話す。時折挟む「ふふふ」という笑い声がかわいらしい。そんな原田知世さんとの対話をお届けします。

Age[アージュ]
特別インタビュー

原田知世
ナチュラルな生き方の秘密

自分の心の声や感じたものを、
楽しみながら作品にしていきたい。

Age(アージュ) 原田さんは女優というだけではなく、ミュージシャンとしての活動も活発になさっています。ソロでも、「pupa(ピューパ)」というバンドとしても。ソロとバンド活動は、原田さんの中でどういう違いがありますか?

原田知世さん(以下原田) ソロは全部ゼロから立ち上げていかなければならないですから、大変さと同時に出来上がったときの喜びがあります。
バンドは高橋幸宏さんを始め、素晴らしいメンバーの中に囲まれて、どこか安心感がありますね。バンドの一部として、自分がどういうことをやればよりいい作品が作れるかということを常に考えています。全体像を見ると言うより、ひとつの絵を全員で作り上げていく感じですね。
バンドではそれぞれがアイディアを出し合いながら作り上げていくので、最終的にどういうものが出来上がるかわからない、というところも楽しいです。いろんな化学反応も起きますし。プロモーションも6人でやれば普段より緊張もしない。ふふ。楽しむ場所ですね。みなさんそれぞれソロで活動をやっている方ばかりなので、その時とはまったく違う楽しみの場として「pupa」があるのかなと思います。

Age ソロミュージシャンとして作品を作り上げていく時、大切にしていることについて教えてください。

原田 自分の心の声や、感じたものを作品にできればと思っています。でも1人では何もできないので、プロデューサー、私の場合、今、伊藤ゴローさんという強い味方がいるので助けていただきます。昨年10月にリリースした「eyja(エイヤ)」というアルバムでは、エドさん=私の夫がビジュアルを担当してくれました。いろんな人たちの力を借りながら自己実現している感じですね。
今、狙ってどうこうというのは難しいですよね。みんないろいろ考えるのだけど、それが当たるかどうかはわからない。売れるためにこうしよう、というのではなくて、やはり純粋に楽しんで、いいと思えるものを作ろうということでしょうか。

Age 自分の思ったものを形にしていくというのは、簡単そうに聞こえるけれど、けっこう大変ですよね。

原田 やはり産みの苦しみというのはありますね。今回は日本とアイスランドでレコーディングができたらなあと思って、アイスランドの好きなアーティスト、mumやヴァルゲイルさんにまず連絡を取るところから始まりました。でも、そう簡単につながるというわけではなくて、ツテを頼ってメールを出してもらい、曲を聴いてもらって…そうやって一歩ずつアイスランドに近づいていったんです。
現地に行ってからも、アーティストを探したり、プロモーションビデオの出演者を現地のスタッフの方に捜してもらったり、街でスカウトして出てもらったり。それも全部、誰かにお願いするんじゃなくて自分たちだけでやりました。本当に手作りなんですよ。みんなと言っても私と伊藤ゴローさん、マネージャー、エドさん、カメラマンのARICOさん、それからコーディネーターの方と6人だけ。衣装も自分たちで日本でコーディネートしたものを持っていき、現地のヘアメイクの人を紹介していただいて……大変でした。でも、できるものなんだな、って。
アイスランドには本当に好意的で優しい人が多かったんです。ほとんど知人がいない中で始めたのに、向こうで知り合った人たちに手助けしてもらってできたのが今回のアルバム。仕事なんだけど、ちょっと冒険をしながら作り上げたという感じがしています。思い出深いですね。

Age 今回、どうしてアイスランドでレコーディングをしようと思ったのですか?

原田 アイスランドのミュージシャンではビョークが一番有名ですが、他にも素晴らしいミュージシャンがたくさんいて、例えばシガー・ロス(アイスランド出身のポストロックバンド)やmum。そんなアイスランド出身のアーティストが作っている音楽に独特の空気感と透明感のようなものを感じました。その秘密ってなんだろう、アイスランドに行ったら何かあるんだろうか、という興味から始まったんです。

Age 気になるものを突き詰めていって実現する、という意志の強さを感じます。

原田 それにも波があって、すごく強くなれるときもあるしダメだと思うときもあるんです。自分でもどっちなの? と。
でも、たとえば誰かが力を貸してくれたらそれに応えようと思うし、だんだん絆ができていくのがおもしろい。自分で言い出したことなのでしっかりしなければ、とも思いますし。何かものを作るときには力が湧いてきますね。
普段はそういうことは全然なくて、できればほわーっと暮らしていたいんですけれど、作品作りとなると集中します。もう20何年間この仕事をやってきて、いろんな経験をしたので、ようやくそうなってきたのかもしれないですね。

Age 今回のアイスランド行きのような場では誰がリーダーシップを取るのですか?

原田 いい大人なので、みんなが責任を持ってやっている感じだったかな。誰かひとりが引っ張るんじゃなくて。この地に日本人は私たちだけしかいないだろうから、がんばんなきゃ、って、お互いに。

Age 2月から2年ぶりのライブツアーが始まっていますね。仙台が終わったところだと思うのですが、2月26日の、山口のてしま旅館という場所が気になります。

原田 もともと交流のあったお料理旅館さんなんですが、そこで100名限定のライブをひらきます。何かやれたらいいねと以前から話をしていて、ようやく実現したわけなんです。第1部ではエドさんの久しぶりのライブペインティングもありますし、それに伊藤ゴローさんが即興で音楽をつける予定です。どうなるんだろう? って、楽しみ。他のライブとは曲目も違うし、メンバーも少なくなるので。本当にスペシャルな感じになりそう。
続いて大阪、沖縄、そして東京でもライブを行います。いろんな場所で、直接みなさんにお会いできるのが本当にうれしいです。

オフは映画や読書、ライブなど。
家から一歩も出ない日も。

Age 作品作りに集中する一方で、オフはどう過ごしていらっしゃいますか?

原田 お休みの日は友達と食事に出かけたり映画を見に行ったりします。家から一歩も出ない日もたまにはほしいので、前の日から食糧を買い込んでDVDを借りて、一歩も外に出ずに家にこもる時もありますし。姉(女優の原田貴和子さん)の家に行くと小学生の子ども達がいるので、疲れているときは彼らに会いに行って緩めてもらいます。
最近は、DVDでイタリア映画『ミラノの奇蹟』を見ました。10年くらい前にテレビで放送されているのを見て、すごくいい映画だと思っていたんですけど、タイトルを忘れてしまって、シーンだけを覚えていたんです。そうしたら、たまたま最近、その作品の話をしている方の話を聞いて思い出したので、Amazonで買いました。
キャベツ畑で見つけられた赤ちゃんがどんどん育って、いろんな奇蹟を起こしていくという完全なファンタジーなんですけれど。ふふ。
読書は、寝る前や移動中、旅先などで。最近は矢沢永吉さんの『アー・ユー・ハッピー?』です。去年の暮れに初めて矢沢さんのコンサートを見に行ったのですが、その前に本を読んでおこうと。
ライブも素晴らしかったです。見ることができてよかった、と心から思いました。すごいカリスマ性で、本物のスターってこういう人のことなんだ、と。男性のファンのみなさんがね、愛して、愛しているというのがすごく伝わってくる。これだけ同性の人達を惹きつけるなんて、すごい。音楽も素晴らしいんだけど、人間的な魅力がにじみ出ていらっしゃる。トークもとても面白いですし、すごく素敵な人だなあと思いました。

Age カリスマと言えばマイケル・ジャクソンを思い出すのですが、映画「THIS IS IT」はいかがでしたか?

原田 ライブを見たかったです。きっと見た事もないような素晴らしいものになっていたのだと思います。でも私は今まで完成されたものしか見ていなかったので、あの緊張感溢れるリハーサル風景から、彼のもうひとつの姿を見せてもらえた気がしましたし、感動しました。本当のプロフェッショナルですよね。あれだけの動きをしながら、常に細部まで気を配っている。いろんなところに目や耳がついているみたいでした。周りの全員が彼と仕事ができることを幸せに思っているというのが伝わってきましたし、すべてはいいものを作るために、という彼の思いに答えて全員が意識を集中させていました。

Age ご自身の仕事でも、マイケルのようにきちんと言うべきことを言っていると思いますか?

原田 ついつい言えないことが多くて、あとで反省するんです。でも、いいものを作るためには言わなくちゃいけないということがだんだんわかってきました。余計な遠慮をすることでクオリティが下がるんだったら、それはしちゃいけないことなんだと。私、14歳からこの仕事を始めているのですが、最初は全然そういうことがわからないままでした。周りは大人の人ばかりでしたからね。でも、だんだんいろんなことが見えてきた気がします。

Age 未だに私は原田さんに「知世ちゃん」と呼びかけてしまいそうですし、そういう方も多いと思うのですが、どうお感じになりますか?

原田 同世代の人からそう呼んでいただくとうれしいですよね。共に年を重ねてきているわけですから。もし私がその方と高校時代からの知り合いだったら、私も○○くんとか○○ちゃんと今でも呼ぶだろうし、そんな風に親しみをもって呼んでくださるのはすごくうれしいです。

Age ところで原田さん、お酒は飲まれますか?

原田 飲みますよ。好きです。食事の時に飲むことが多いので、合うものを選びます。何でも飲みますよ。でもビールが多いかな。まずはビールを飲みますね。ふふ。それから、今日はワインにしようか、焼酎にしてみようか、日本酒を少し飲もうかとか。楽しいですね。

Age 原田さんがお酒を召し上がるのがちょっと意外でした。食べ物はいかがですか? ベジタリアンというイメージもあったりします。

原田 これが絶対にダメ、というものは特に決めてないんです。もちろん体に悪いものは気をつけなくちゃいけないけれど、でもベジタリアンになろう、といったストイックなことは考えていないです。ハンバーガー? 時々食べますよ。
これから大切にしたいのは、
自分のペースにメリハリをつけた暮らし。

Age 原田さんも40代。同世代の女性たちに、これから私たち、どうやって生きていこうか、ということを一緒に考えていただけますか?

原田 (少し考えて)きっと、回答はないですよね。私の同世代の友達は、主婦で子どものいる人もいるし、独身で仕事をがんばっている人などいろいろなんですが、でもやっぱり無理をしすぎないことですよね。会話の中でも、無理はできないよね、体は大事だよね、と言うことがすごく増えてきています。 やはり健康な体に健康な魂が宿ると思います。たとえば20代の時だったら、徹夜をしても大丈夫だったじゃないですか。でもそれが積み重なってくると、いろんなところに出てくる。お肌にもよくないですし。息を抜くところはちゃんと抜こうね、と言い合っています。今は仕事をがんばる時、でも今は完全にオフ、と、自分のペースにメリハリをつけた暮らしが大事。私の場合、それがいい50代を迎えるために大事なことだと思っています。
子どもの頃には自分の40歳くらいまでの姿しかイメージがなかったけれど、今はもう実際はその先に来ているんですよね。だから、これから先のイメージを作らなければなりませんね。いい次の世代となるために。

Age 最後に。私はTwitterをやっていて、今日の質問の一部はTwitter上でフォロワーさんからいただいたものなんです。原田さんもTwitterをやっていらっしゃいますよね? 実は私、フォローさせていただいております。

原田 そうなんですね? うれしいです。今のところ公にしているわけではないのですが、ご存じの方はご存じみたいですね。Twitterを教えてくれたのは高橋幸宏さんです。昨年の12月、「pupa」のレコーディング中にスタジオでアカウントを取るところから教えていただきました。最初は使い方が全然わからなかったのですが、バンドのメンバーに教えてもらいながら少しずつつぶやき始めました。「pupa」のメンバーは全員、Twitterをやっているので、「今スタジオに着きます」ということを、携帯で連絡すればいいのについついTwitterに書いてしまいます。
「やさいのようせい/N.Y.SALAD The Movie」デジタル3D映画版のナレーションが終わったことをつぶやいたとき、たくさんの方から「いつも見ています」「楽しみです」とリプライをいただいて、とてもうれしかったです。

Age どのデバイスからつぶやいていらっしゃいますか?

原田 今のところPCだけです。だから、自宅かマネージャーのPCからのみなんです。でも、皆さん、iPhoneなどでどこからでもつぶやいていらっしゃるんですよね? iPhoneは、エドさんが持っているので時々触らせてもらっています。私はあまり頻繁ではないのですが、1日にどれくらいつぶやいていらっしゃいますか?

Age 私はけっこう頻繁です。面白いものを見つけたらiPhoneで写真を撮ってつぶやいたりもしますよ。

原田 そうなんですか。楽しそうですね。私もいつか、もっとつぶやきたくなるかな…。

何一つ、無理をしているところがない。まっすぐで、正直。つまり、彼女は“原田知世”その人なのだ。つねに自分自身と原田知世という存在がひとしく一致している。それが私たちに、とても気持ちのいいナチュラルさを感じさせるのに違いない。
私も原田さんのように、自然体で生きていくことができるだろうか? これから先の自分をそうイメージしてみるのは、大切なことかもしれない。
いい次の世代となるために。

はらだ・ともよ 1967年生まれ。長崎市出身。女優・シンガー。1983年、映画『時をかける少女』で主演デビュー。2007年、デビュー25周年アルバム『music & me』をリリース。同年、高橋幸宏氏の呼びかけによりバンド「pupa」を結成。2009年10月、2年ぶりのソロアルバム『eyja(エイヤ)』をリリース。2010年2月より”LIVE TOUR 2010 eyja”を開催中。http://haradatomoyo.com/

撮影・小松勇二 ヘア&メイク・遠藤ユキ(HEADS)インタビュー・文 池田美樹