アートニュース Fromミュージアムカフェ – 33 - 東京都庭園美術館で開催中!『ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし』のセンスに注目。

(2010.05.11)

近年、日本での展覧会も多く開かれ注目を浴びているロシア・アヴァンギャルド。その流れを代表する作家のひとりであるアレクサンドル・ロトチェンコとその妻でアーティストでもあるワルワーラ・ステパーノワ。ふたりが駆け抜けた20世紀初頭のロシアの息吹を感じることのできる展覧会が、東京都庭園美術館で開催中です。

アレクサンドル・ロトチェンコ「国立出版社レニングラード支部の広告ポスター」 プーシキン美術館蔵

今見てもとてもポップで斬新なこのポスター、この作者がアレクサンドル・ロトチェンコ(1891~1956)です。19世紀末から20世紀初頭にかけて興った、ロシアにおける芸術運動ロシア・アヴァンギャルドを代表するアーティストのひとりです。当時のロシアはソビエト連邦が誕生するなど政治的に大きな過渡期にありました。そのような時代の中で、ロトチェンコはビラやポスターといったプロパガンダ・アートの分野でも活躍した作家でした。

ロトチェンコのポスターや雑誌のデザインが生まれた背景には、まず制作に必要な要素を最小限に絞りこみ、その要素を元にデザインをするという、シンプルに還る手法がとられています。それはメッセージをより効果的に伝えることができ、現在の広告の原型ともいえるかもしれません。産業と密接したデザインは、現代のデザインの基盤となったともいえます。

アレクサンドル・ロトチェンコ『「これより良いおしゃぶりはない。年をとるまで吸いたくなる」 ゴム・トラストの広告ポスター』 文:ウラジーミル・マヤコフスキー 1923年厚紙の上の印画紙にグワッシュ プーシキン美術館蔵
©The State Pushkin Museum of Fine Arts, Moscow



現在の美術家、デザイナー、建築家、写真家などにも影響を与えている作家でもあり、この『レンギス(国立出版社レニングラード支部)あらゆる知についての書籍」国立出版社レニングラード支部の広告ポスター』をモチーフにした作品を後世の作家がオマージュとして制作した例もあるほどです。

ロトチェンコを紹介する上で欠かせない存在なのが、ワルワーラ・ステパーノワ(1894~1958)です。今回の展覧会のもうひとりの主役は、自身もロシア構成主義を代表する作家として活躍しました。また、美術学校で出会ったふたりは後に伴侶となり、創作活動においても良きパートナーとして関わっていきます。

ワルワーラ・ステパーノワ 『「構成者ロトチェンコ 線」アレクサンドル・ロトチェンコの風刺画』 1922年 作家自身によって台紙に貼り付けられたゼラチン・シルバー・プリント プーシキン美術館蔵
©The State Pushkin Museum of Fine Arts, Moscow

今展では、ふたりの作品をあわせて紹介します。ふたりの芸術の出発地点は立体未来派。フランスのキュビスムやイタリアの未来派の影響を受け、単純化されたモチーフと構図、色味を使った作品を作っていきます。それぞれに好みや系統が出ているので、対比しながら鑑賞するのもおもしろいかもしれません。絵画、グラフィック(ドローイング・版画)、空間構成、建築、デザイン、演劇、印刷物(本・ポスター)、写真という8つのジャンルで構成され、様々なジャンルを横断し、独創的なデザインを次々と生み出していった世紀のカップルの活躍をぜひ堪能してください。

 

『ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし』

期日:2010年4月24日(土)~6月20日(日)
会場:東京・東京都庭園美術館
料金:1100円(一般)ほか
第2・第4水休
10:00~18:00(入館は17:30まで)
問い合わせ:東京都庭園美術館 03-3443-0201 
http://www.teien-art-museum.ne.jp/