土屋孝元のお洒落奇譚。暦の上では秋です、
お茶室にて久し振りにお茶の稽古。
(2013.10.26)
10月なので
侘びた趣向のお稽古。
今日の稽古は10月に入ったので侘びた趣向との事です。
お軸は須田剋太作、書・侘び寂びの「寂」の一文字、用紙は奈良の元興寺?から出た古い紙との事です。汚れや染みがあり、これがまた、いい景色を作っているのです。
軸装は阿曽さん、師匠の好みには関心させられます。古くても新しいとはこういうことかと……。
床の飾りには、2000年前のペルシャガラスによる蓮の飾り物、砂の中で銀に変化して光を裏から当てないとがラスには見えません。LEDの光が当たると、それはそれは綺麗な瑠璃色に光り、ガラスということがわかるのです。
阿曽さんはこれを飾るために台座を作り、金属の軸を通して蓮花のように仕立てています。
ちょうど枯れ蓮のように見える仕立てです、台座は黒柿で重さがあり安定して落ち着いて見えます、軸は金属の二重になった管を使い自在に曲げ伸ばしができ傾きを変えることができます。この時期には枯れ蓮を飾るという茶の季節感に合わせてです。
水指は南蛮渡りの雑器、
茶碗は古谷道生氏の粉引茶碗。
水指は「芋がら」「ルソン壷」ともよばれる戦国時代の南蛮渡りの雑器です、穀物類などを保存するための道具だったのでしょうか、村田珠光、千利休以降「侘び茶」が始まってから水指として重宝がられたとの事です。500年になるお道具です、薄茶器には夏目有彦作、薬壺(やっこ)型、根来塗りの朱赤の薄茶器で形といい、大きさといい、手に馴染むお道具で、センスの良さを感じます。
茶碗は先日も阿曽美術にて個展を開いた信楽の古谷和也さんの亡くなったお父様、古谷道生氏の独自の粉引茶碗です、秋のこの時期に似合う、まるで茶碗の中に秋草屏風があるような景色の茶碗です。この茶碗の沁みや滲みを景色と呼び、珍重する文化は日本独自のようで、他の国には例を見ないようですね。
香炉は明朝景徳鎮製の四角い形の香炉です、染付の文様が日本的でもあり、秋草の絵柄に秋を感じるものです。
生菓子は
師匠お手製の栗蒸し羊羹。
栗蒸し羊羹の色と信楽のビードロ釉の青緑がかった色の組み合わせがなんとも言えず、素敵です。
お菓子も甘さを抑えた羊羹で 栗の味を殺していません、薄茶の場合は、お稽古の亭主がお点前を始め、薄茶器から茶杓で茶碗にお茶を入れた時に食べ始めます。正客は次客に「お先に」と一声かけてから、お菓子皿を押し上げてから頂きます。
自分の席前にお菓子皿を置き、懐から懐紙を出して、栗蒸し羊羹を取り分けます、この時に取り分け用の箸がある場合は、箸をお使い 手前の羊羹から懐紙に取り、懐紙の左、または右の端でお箸の汚れをぬぐいます、それからお菓子皿を次客に回し、これで初めて食べ始めるのです、自分で持参した菓子切りで二口くらいに切り分けて食べます。亭主は正客が食べ終わるのを待っていて、ほどよい時間に薄茶を出します。
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正客はにじって取りに行き、次客との間に置き、「お先に」と一声かけてから自分の席前に置き、亭主へ「お点前頂戴いたします。」と声をかけてから頂きます。
三口くらいで飲み切り、最後は音を立てて吸い切ります、これがなかなか出来ないのですが、何のためかというと、お茶碗を拝見する時にお茶が残っていると裏の高台を拝見できないので、そのためです。もしも お茶が残っている時には懐紙で優しく拭き取っても構わないと聞きました。
拝見の時は茶碗を畳の縁外(裏千家)に置きます、自席での拝見を済ませたら、亭主へ茶碗を返します、この時も瓊じる(にじる)ように、亭主は自分の入れた茶碗を見てから、湯を注ぎ、湯を建水へ捨て、茶巾で清め、一連のお点前に戻ります。
次客もお菓子を頂き、薄茶を飲み終えてお茶碗が亭主へ戻り、湯を注ぎ一連のお点前に入り、汲んだ湯を建水に捨てた時に、正客は「どうぞ おしまいください。」と声をかけて、亭主は「おしまいにいたします。」と言っておしまいの動作に入ります。
一連のお点前は
流れるように美しい……。
最後の一滴が落ちるのを待ち、柄杓を構えて、釜蓋を閉め、水指蓋を閉めます。この時に正客は「薄茶器、茶杓の拝見をお願いします。」と請います。亭主は柄杓を建水に掛け、蓋置を建水横に置き、薄茶器を右手で取り左手の上に置き、お点前座の位置まで座ったまま位置を変え、薄茶器を袱紗にて清めます、薬壺型の場合、二引きにて清め、蓋を開け、口を清めて、手の上で位置を変え、正客に薄茶器の正面を向かせて拝見の位置の畳に置きます。
右膝頭を抑えながら元の位置に戻り、茶杓を取り右手で扱いながら茶杓の向きを上向きに変えお点前座の位置から先ほどの薄茶器横に置き合わせます。この時に薄茶器、茶杓の位置のバランスをとります。
亭主は柄杓をを持ち蓋置を持ち建水を持って建水帰りにて水屋へ戻ります。
正客、次客は拝見を済ませたら、亭主が置いた位置へ戻して、亭主を待ちます。
この後、亭主と正客の問答が始まります。
正客は、薄茶器の由来や塗り作者を聞き、茶杓の作者を尋ね、「もしも銘がございましたら、お教え頂ければと思います。」と亭主に請います。
亭主は茶杓の名前を答えて、礼をして水屋へ戻ります、茶道口にてにて薄茶器、茶杓を自分の横へ置き、亭主、正客、次客、一同礼をしてお点前の終了です。
一連のお点前は描写すると難しいように見えるのですが、流れるように美しいものです、
まだまだ先が長いかな……。