女性のための、元気になれる俳句49 選・如月美樹 汗臭き鈍の男の群に伍す 竹下しづの女

(2009.05.18)
 

「鈍」は「のろ」と読む。季語は「汗」。夏の季語である。「額に汗して働くグズな男どもに自分も伍して働いていくのだ」という決意。1920年(昭和15年)に発表されたことを考えると、いかに衝撃的な句であったかがわかる。「現代女流俳句の源流に、これだけ社会や仕事に自覚的であった俳人がいたことを忘れてはならないだろう」と、俳人の中村裕氏は述べている(日国フォーラム2005年2月14日)。
 時は変わって現代。とある会社の人事課の人が、「優秀な人から順に採用しようと思うと、みんな女性になっちゃうんだよねえ」とぼやいていたのを聞いたことがある。しづの女が今も存命だったら、伍すどころか、振り返りもせずにどんどん男たちを追い越していったに違いない。
 近年、女性が強くなったといわれるが、それはおそらく違う。女性は太古の昔から、強かりしものとして生まれてきたのだ。自らの中の強さを自在にコントロールできる生物、それが「女」なのである、と私は考えている。掲句初出『颯』(1920年)