リブロ・トリニティ – 20 - 『おひとりさまの老後』iPhone版 上野 千鶴子著

(2010.09.07)
~著作翻訳者+編集者+書店スタッフ3人が一体となり、力を合わせて完成した本を紹介する「リブロ・トリニティ」です。今回は電子書籍を紹介します。著者+制作配信者+読者のトリニティです。~

上野千鶴子 著

『おひとりさまの老後』iPhone版 

『おひとりさまの老後』iPhone版(AppStoreで購入)


■著者より

上野 千鶴子(うえの・ちづこ)

社会学者
東京大学大学院教授

1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学大学院客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年東京大学大学院人文社会系研究科教授。

専門は女性学、ジェンダー研究。この分野のパイオニアであり、指導的な理論家のひとり。1994年『近代家族の成立と終焉』(岩波書店)でサントリー学芸賞を受賞。『上野千鶴子が文学を社会学する』(朝日新聞社)、『差異の政治学』『当事者主権』(中西正司と共著・岩波書店)、『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』(平凡社)、『老いる準備』(学陽書房)、『世代間連帯』(辻元清美と共著・岩波書店)『岩波シリーズ ケア:その思想と実践』(全6巻)など著書多数。2007年に出版された『おひとりさまの老後』(法研)は、75万部のベストセラーに。近年は高齢者の介護問題に関わっている。

『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』法研より出版。
『おひとりさまの老後』iPhone版は、TOSHO PRINTING CO., LTD.より発売、AppStoreにて販売中。

 

負け犬おひとりさまのつよーい味方に。電子書籍でお届けします。

『おひとりさまの老後』を書いて、負け犬おひとりさまのつよーい味方に、『男おひとりさま道』を書いて、ごはんの友ならぬ男の友となった上野です。

多くの読者の方から「ほっとした」「安心した」「癒された」という声を受けて、いまや癒し系街道を驀進中。

紙の本のときには、図書館で順番待ち149人などという話も聞きました。

電子書籍なら、お待たせしません。文字が自在に大きくできるのも年寄り向き。
これを読んで安心しておひとりさまになってください(笑)。

目下、新たに在宅ひとり死は可能か、というテーマで取材中。だいじょうぶ、と思えたら、また本を書きますね。

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■読者より

作家・映画監督・TVディレクター・脚本家山田 あかね(やまだ・あかね)

『ベイビーシャワー』(小学館)では40歳を目前にして子供を持つかどうか迷うシングルの女性を描き、『すべては海になる』(小学館)では、援助交際の体験がある書店員を描いた。『まじめなわたしの不まじめな愛情』(徳間書店)では、ヤク中の映画監督と同棲し、壊れていく女を書くなど、ギリギリの女たちをテーマにしている。自ら監督し、映画になった『すべては海になる』の解説を上野千鶴子さんにお願いした。

「ポスト援交世代のリアルを描き出すのにこの作品は成功した」と褒めてもらえて嬉しかった。女性の生き方がメインテーマなので、上野さんの著作の熱心なファンである。

山田あかねホームページ http://yaplog.jp/akane-y-dairy/

 

漠然とした不安を抱えて生きるひとみんなに届く言葉。

時々、上野千鶴子さんは誤解されているんじゃないかと思う。女性学、ジェンダー研究の先駆者として、「男女平等を振りかざす、おっかないひと」あるいは、「男なんていらない、女も強くなれ」と叫ぶ強い人として。

でも、それはちがう。上野さんの本質は「優しさ」だと思う。それもとことん深い優しさ、長続きする優しさだ。そのことが「おひとりさまの老後」を読むとよくわかる。

上野さんは若き日、女性の生き方、恋やセックスについて語ることで颯爽とデビューされた。その時々の流行に合わせて、女性の生き方を語る書き手は多いけれど、耳に心地良い言葉を並べただけで、女性のその先の人生までは考えていない。けれど上野さんの言葉は息が長い。老い、そして死という最後の時までを引き受け、不安におののく者に向かって語り続けるのだ。

世間は脅しに満ちている。「結婚しなければ不幸になる」「子供がいない人生なんて、本当の人生じゃない」「若いうちはいいけれど、年をとったらさびしいわよ」「孤独死はいやでしょ?」少しでも普通とちがう道を選ぼうとする者に揺さぶりをかけてくる。

そんな不安をひとつひとつ晴らしてくれるのがこの本だ。結婚してもひとりでも、子供がいてもいなくても、女性の多くがひとりで老後を迎えることを、統計学的に数字を示してみせる。それから、ひとりの老後を楽しく生きる女性たちの例を語り、ひとり=さびしいと考えることの短絡を絡まった糸をほぐすように、解きはなしてくれる。この本を開く前に感じていた、ひとりで老いること、死ぬことへの不安が、知らずに和らいでいるのだ。暖かい毛布でくるまれたような気持ちになる。
老後、どんと来い! って感じ。

今回、電子書籍になると聞いて、読者の幅が広がるのを嬉しく思う。なぜなら、この本は老いを身近に感じる人だけじゃなく、漠然とした不安を抱えて生きるひとみんなに届く言葉があるからだ。気軽にページを繰って、上野さんの優しい言葉にいのちをもらってほしい。

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■製作・配信担当より

図書印刷株式会社 企画・販売促進担当小寺 律(こでら・りつ)

図書印刷株式会社で、企画や販売促進を担当。学生時代に、塾講師や家庭教師をする友人に誘われて、なぜか塾の印刷室でテキストの印刷をしていた、根っからの印刷マン(?)。趣味は読書というと『リブロ・トリニティ』の読者の方に申し訳ない程度の積ん読読者なので、自転車と俳句ということにしておきます。

電子書籍の販売促進の一環でいわゆる「中の人」としてのツイートも業務のひとつ。
図書印刷のツイッター http://twitter.com/tosho_apps

 

電子書籍を売ったら、紙の本が売れなくなる、なんてことは思ってません。

上野千鶴子先生のお名前を意識したのは、遙洋子さんの『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を読んだ10年前くらいでしょうか。扇情的なタイトルに惹かれて買ったものの、至極まっとうな視点や方法について書かれており、上野千鶴子=フェミニズムの闘士(失礼)という見方が変わりました。

『おひとりさまの老後』も発売当初に紙の本で拝読。現実から目をそらさず、心の奥底をのぞき込むリアルな本、常識も制度もいったんすべてを疑って、そこから自由になることで、身軽にやさしく生きていけるという希望の本。我々オジサンには、厳しい言葉が投げかけられていてもどこか救いがあるのは、やさしいお人柄からかと。75万部のベストセラーもうなずけます。

出版社の法研様から『おひとりさまの老後』の電子書籍化のお話がありました。電子書籍といえば、コミックスやビジネス書、デジタルでバーチャルでサイバーな本が多い中、ベストセラーとは言っても、売れるだろうか。電子書籍市場は立ち上がったばかり、会社としても本格的体制を立ち上げたところ、不安もある中で、それでも「売りたい」と思わせたのは、上野先生のドライで突き放したような、それでも明るいやさしい文章を、できるだけ多くの方に読んでもらいたいという思いがありました。
文字サイズを変更できるのも、電子書籍の特徴。そろそろ老眼が不安(残念ですが、ほんとです)な私も安心です(笑)。

電子書籍を売ったら、紙の本が売れなくなる、なんてことは思ってません。紙の本を手に取る機会がなかった方が、この記事を見て、iPhoneで読んでいただけたらうれしいです。iPhoneをお持ちでない方にも、今後、iPadやPCや、いろんなスマートフォンや、Kindleなど、いろんな媒体で読めるように、がんばっていきたいです。
なにより、読みたい本がある、ということが、電子書籍の市場を広げていくと考えます。まずは、オジサンとしては、『男おひとりさま道』の電子書籍、ですね。

追記
『おひとりさまの老後』iPhone版の販売促進の機会をいただいて、普段裏方の「中の人」稼業の原則を曲げて、『WEBダカーポ』なんて晴れがましい場所に似つかわしくないスーツのオジサン、上野千鶴子先生と、山田あかね様のご寄稿とともに登場なんて、汗顔の至り。

今回の記事の実現には、ツイッターでのご縁からご相談したマガジンハウス『Age』編集長池田美樹様、無理なお願いを聞いていただいた上野千鶴子先生、ツイッター上でご著書を知り、拝読してファンになった縁から厚かましくお願いしてしまった山田あかね様、本当に、心から、ありがとうございまぁっす!

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