女性のための、元気になれる俳句75 選・如月美樹 鳥葬のなき世に群るる寒鴉 檜 紀代

(2010.01.25)
 

鳥葬とは、死体を野に置いて鳥の食べるにまかせるという葬法のこと。死体を大気にさらす風葬と組み合わせられており、今でもチベットとインドの一部で行われているとか。テレビで見た記憶があるが、意外にさらりとしているという印象を抱いた。死は決してじめじめしたものではなく、どこかへ還っていくことなのだ、それが自然の摂理なのだと感じた。
最近、都会ではカラスの数が増えているという。特に銀座は多いと聞いた。早朝集合の仕事で街を歩いていると、自在にカラスが滑空しているのを見る。彼らの目には賢い光が宿っている。掲句、寒鴉(かんがらす)が季語。冬のカラスのことである。彼らの群れる様を見て、鳥葬がない世だから退屈そうだととらえたのか。たしかに、カラスたちは、都市と人が死滅し、気楽に飛翔できる日を淡々と待っているのかもしれない。ものを言わぬまま。『花は根に』(1998)